10 回想…破滅への序曲
復讐は成らず 第10話
登場人物
・巫 律子(昔)
・巫 律子(現在)
・主人公(昔)
あらすじ:
幕間 主人公とお姉ちゃんの過去のエピソード挿入が語られる。
なぜ彼らが退魔士となったのか?
そして弟の気遣い。
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(実家にて。姉が、もぬけのからとなった弟の部屋で、一人回想している。)
(幼き日の主人公と姉の会話の回想)
主人公:
おねえちゃん…、おねえちゃーん…。
ね…、ぼく、おばあちゃんたちの話、聞いちゃったんだけど…。
おねえちゃん。退魔師…っていうのになるって…、本当…?
律子(昔):
うん…、そう。
家族の、一族の仇を、取りたいから。
私も…やってみることにしたの…。
主人公:
でも、みんな、言ってた。
すごい、危険で、大変なんだって。
それに、退魔師になるってことは、神様に身を捧げることなんだって。
もう、結婚、できなくなるんだって…。
お嫁さんにも、いけなくなっちゃうんだよ?
それでも…、ほんとに、大丈夫なの…?
律子(昔):
うん…。
私たちの神様にね…力を借りないといけないから。
それは…仕方のないことなの。
ちょっと、寂しい気はするけど…ね。
主人公:
でも、でも…、
ぼく、お姉ちゃんのこと大好きだから…、
け、結婚、したかったから…。
べ、別の方法…、ないの…?
律子(昔):
ふふっ…♪ ありがと…♪
なで、なで。私も大好き…。
でもね、もともと姉弟じゃ、結婚しちゃいけないことになってるんだよ?
それに、これは、一族で女に生まれた者の、定めなの。
それがちょっと、早まっただけ…。
主人公:
むー…、そう、なんだ…。
じゃあ…、じゃあ…、ぼくも、退魔師になる!
男は、退魔師に向いてないって、おばあちゃんは言ってたけど…
ぼく、一生懸命、がんばるから…。
ねっ? そうすれば、おねえちゃんも、さみしく、ないでしょ…?
そうだ、それがいいよ…!
律子(昔):(少し、驚いた様子で)
ちょっ、ちょっと、なにを言ってるの…?
あなた、それがどれだけ危ないことか、わかってるの?
そもそもね…、いい? よーく、お姉ちゃんの話、聞いてね…、
……
(回想終わり)
(★風がビュービュー吹く音。都会の喧噪。ビルの上に立つ律子)
律子(現在):
あの子は根がとっても優しいから…。
厳しい戦いに疲れて、心が壊れはじめているのかもしれない…。
はやく、この地の因縁を終わらせなければ。
あの子にも、ふつうの暮らしをさせられるように…。
…。
でも、ホントに、どこ行ったんだろう…。
心に呼びかけても、反応が、まるでない…。
無視されてるだけなら、まだいいけど…。
もし、あいつ等に出会ってたとしたら…。
…!
今、海の方で…、今、あの子の反応があったような…。
それに、妖魔のものも…? まさか…!
そっちにいるの…? 無事なのっ…1?
ねぇ…、返事をしてっ…!!
お願いだから…。
ねぇっ…!!
(第10話 おわり)