Track 1

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見知らぬ少女と人工呼吸と…

【雨未】 ねぇ……起きて……おきて、ください…… ……ぁ……やっと、目、覚ましてくれた…… よかった……もう、起きてくれないかと…… ……おぼえて、ませんか……? あなたは湖で溺れ、生死の境を、さまよった…… 私が、引き上げました…… 溺れて意識をなくした貴方を……ここまで、連れてきました 私の名前は、『雨未』……雨と……未完成の未で、雨未…… ここは、今は誰も住んでいない、無人のお屋敷……その縁側…… あなたが今、寝転がっている場所…… 引き上げた状態、そのままだから……たくさん、濡れちゃってる……あの、寒い、ですか……? ごめんなさい……ガス、通ってないみたいで…… あったかいお風呂、ご用意、できないみたいです…… 布団とか、服とかも探したんですが…… なにも、ありませんでした……誰も、住んでいないみたいです…… あ……すごくたくさん、水、飲んじゃってたみたいなので…… 今はまだ、動かないほうがいいと、思います…… しばらく、雨がやむ気配もないですし……もうちょっと、休んでいましょう 静かです……雨の音しか、聞こえない…… あとは、あなたの、吐息…… あめ……しとしとと、降り続いて…… 空気が澄んで、音も……なんか、安心します…… ん………身体、震えてる………さむい、ですか……? え、と………どうしよう、かな……… ん……寄り添えば……少しは、あたたかく、なる……? 体温……わけて、あげますね…… ん、ビショビショ……ごめんなさい……着替えとか、なくて…… ……あったかい、ですか……? わたしでも……あったかく、なれてますか……? ぎゅって、しててあげる、から…… がんばって、ください……せっかく、助かったんだから…… 本当は……私が助けを呼びにいければ、いいんだけど…… たぶん、できない……それに……いまは、そばにいたい、から…… ん……鼓動、伝わってくる…… 手から……わたしの心臓にも、届きそうな、くらいに…… あんしん、する……どうして……? 初めて会った……たぶん、そのはず、なのに…… 心音が、重なりあうだけで、なんか…… 夢を見てるような気に、なります…… なぜ……? わからない………不思議……… さっきね……あなたをここに運んだとき、息、してなくて…… 人工呼吸っていうの、して、みました…… そうしたら……息を、吹き返してくれて…… すごく、うれしかった……命を、与えたみたいで…… ん……くちびる、みてる……? もしかして……もう一回、してほしい、ですか……? ん、と……ちょっと、はずかしい…… あなたの意識がなかったから、できたこと、だし…… ……そっか……吐息を送り込んだら、温かいんですね…… ん……だったら……して、あげます…… そのまま、じっと、してて………んっ………ぅ……… ふ~~~~~………っ………ふ~~~~~~~~………っ ん………ふ~~~~~~………っ………ふ~~~~~………っ ぅ、ん……っ……これで、おわり…… ……ぅ……まだ、してほしい、の……? あの……結構ね……その……やっぱり、はずかしい、から…… ぅぅ……っ……じゃぁ、もういっかい、だけ………んっ……… ふ~~~~~~………っ………ふ~~~~~~~………っ……… ん……ふ、ぅ……っ……あ……なんか……呼吸、ととのった……? 起きてる間にしても、意味……あるんだ…… ん……ちょっとだけ、安心、した…… 顔色も少し、よくなってきた、みたい…… でも、油断はだめ、だから……まだ、安静にしてて……

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