Track 8

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恋人のように抱きつかれながら…

【雪那】 ふ、ぅ……っ、たくさん動いたから、ちょっと、疲れちゃった…… 貴方の横に寝転がって、抱きついちゃうね…♪ ん……っ……ふふっ、またお耳さん近い…っ♪ 舐めちゃおっかなぁ~……ん、冗談だよ ……魔法、解けて、きちゃったね…… 身体、冷たくなってきてるもの…… 不思議だった……いつもは、触れればたちまち、相手を凍りつかせてしまうのに…… 貴方を、少しの間でも救いたいって強く願ったら……しばらく、力を抑え込めた…… でも、ちょっと気を抜くと、すぐにダメみたい…… そして、貴方自身の持つ生命力も、もう…… ……ね……もしまだ、時間が許されるなら…… 少しだけ貴方の耳元で、小話をさせて…… 私は、自分がどこから来たのかも知らない…… 親というものが、存在するのかも知らない…… 気づいたら、この雪山でひとり…ぽつんと、立っていた…… 私の歩く場所には、必ず大雪が降って…… 人間たちや動物たち……あらゆる生命を、困らせた…… 私は逃げるように、この小屋の中に逃げ込んだ…… すると、外の吹雪は勢いを弱め……みんな喜んでいた…… その代わり、この避難小屋が、死の世界になった…… そして、私が唯一存在を許される場所にもなった…… 一人で、寂しく……時間という概念のないこの狭い世界で、誰にも迷惑をかけずに、ひっそりと…… でもそんなある日、この避難小屋に、一組のカップルが舞い込んできた…… 彼らは私を見て驚き、そして……火をくべることすらできないこの小屋と、その原因である私を呪った…… 男のほうは、貴方と同じような症状に陥っていて…… 女のほうは、懸命に彼を正常な状態に戻そうと頑張った…… けれど、私がここにいる限り…… あらゆる生命は火を灯し続けることを許されず、彼に確実な死が近づいてくる…… 女は男の服をはだけ、自身も服を脱ぎ捨てて…… 折り重なって、私の目の前で愛撫をし始めた…… 美しかった……まるで、自分の命を相手に分け与えるように…… 彼に熱を与えて繋ぎ止めながら、彼女は弱っていって…… お互いの死への距離感を縮め、最期はほぼ同時に、息を引き取っていった…… 私は彼らのために、ここを出て行くべきだったのかもしれない…… けれど、私がここを出れば、もっと多くの命に迷惑がかかる…… 冷たさは、ただそれだけで、あらゆる生命の敵…… 温かさは、ただそれだけで、あらゆる生命の源…… 私は……温かさを持ち寄って、一緒に死んでいった彼らを、心の底から羨ましいと思った…… ふふっ、ごめんなさい……今日貴方にしたことは、その女の子の見よう見真似…… 貴方の反応が楽しくて、オリジナルのがたくさんあったけど…… それに、彼は最後まで勃起することはなかったから…… オチンチンへの愛撫は本当に、なにをしていいのかわからなくて…… どうして、貴方を愛してあげることができたのか…… たぶん、喜んでほしかったから……こんな私でもそれができるって、知りたかったから…… そう考えて、貴方の反応を見ながら、愛撫して…… たくさんの反応を返してくれて、射精してくれて…… 人間に、なれた気がした…… まるであのカップルみたいに……ううん、それ以上に愛し合えたと、思うから…… でも、それはただの願望…… 私は雪女……人間がそう呼ぶ、特別な力を持った存在…… なのに……彼らを見て……今日、貴方に触れて…… 人間が、温かい触れあいが……今は愛おしくて、恋しくて、仕方がない…… でも、貴方がここにきてくれて、よかった…… この気持ちを、はっきりと知ることができたから…… ……助けてあげられなくて、ごめんなさい…… ここに死の世界を創ってしまって、ごめんなさい…… 貴方が逝った後も……ずっと、ずっと忘れない……忘れないから…… 忌まわしきこの力で……腐らないように、貴方の肉体を維持しつづけて…… ずっと、寄り添ってる……ずっと、傍にいるから…… 温かみはなくなっても……エッチができなくなっても…… 今日知った、貴方自身のあったかさを、ずっと……ずっと覚えてるから…… 死後の世界があるのなら…… 私もちゃんと、生物のように死に至ることが、あるのなら…… そのときは、そっちの世界で、また…… だから、今はおやすみなさい……私の大好きな、名前も知らない、貴方……                                    END

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