毒舌妹の罵倒耳かき○
兄さん、今お暇ですよね?
お忙しいはずはないと思いますけど、一応礼儀として確認します。
勉強している様子もありませんし、
恋人と出掛けるなどといった用事があるわけがありませんし。
何ですか?
もし休日の昼間から居間でぐうたら寝そべっている以外に用事があったのでしたら謝罪しますが。
有りませんよね。知ってました。
母さんが怒っていました。
昨晩、自分が話しかけたのに耳をほじって無視したと。
・・・まあ、母さんの話はいつも母さんにしか解らない単語が多くて困りますけど・・・
ボク達はまだまだ養ってもらっている立場なのですから、ちゃんと聞く態度を見せるべきです。
それでですね・・・母さん曰く、兄さんは耳が気になって人の話が聞けないようだから徹底的に掃除をしてくれないか、と。
はぁ・・・母さんも酷いです。
なぜボクが兄さんに耳かきなどしてあげなければならないのですか?
はぁ・・・しかし、既に前金でお小遣いを受け取ってしまった以上、やらないわけにもいきません。
さっさと横になってください。
・・・ひざまくら?何故そんなことをしなければならないのですか?
足が痺れそうなのでお断りします。
可愛い妹ならするべき・・・はあ、ではボクは可愛くなくていいです。
結構な汚れ具合ですね・・・。
これ、本当に耳痒くて話聞くのが嫌なんじゃないですか?
・・・いくらクラスの美化委員やっているボクでも、この汚さは躊躇せずにいられません。
けれど一度やると言ったからには・・・っしょっと。
何って・・・薬局で買った粘着式の綿棒です。
汚れをくっつけて取ることのできるそうです、便利ですよね。
耳かき棒は使いません。
人に耳かきをするのなんて初めてですから、安全で確実な方法を取るのは当たり前でしょう?
失敗して怪我でもさせて兄さんに貸しを作るのなんて絶対に嫌ですから。
・・・残念そうな顔をしないでください。何を要求するつもりだったんですか。
ほら、無駄話はここまでにして始めますよ・・・。
・・・ん、んぅ・・・え?
無言で耳かきされていると怖い?
集中して手早く終わらせようという配慮だったのですが。
それで、具体的に何を喋れと言うのですか?
・・・ボクの配慮を無碍にして喋れと要求したのですから、当然兄さんから話題を提供してくれますよね。
「えっと」や「その」では会話になりません。
やはり無言でやらせていただきます。
んっく・・・ん、ふぅ・・・はあ、やっぱり何か言ってくれと?
耳かきの感想?
そうですね・・・粘着綿棒にしたのは正解でした。
効率良く汚れが取れて失敗もなくて・・・細かく見ないでもできるので気分も楽ですし。
・・・ボクがどうして「顔を近づけて吐息のかかる位置で兄さんの穴をのぞき込まなければならない」んですか。
絶対に全力で拒否します。
そんな不満そうな声を出さないでください。
っていうか、顔を動かさないでください。
リクエスト通りに喋りながらしているんですから大人しくしていろ、です。
兄さんの要求を通したんだからボクの要求も押し通します。
あ・・・この奥のも取らなきゃいけないのか・・・。
ん、んぅ・・・はぁ、これはくっつけて取るには大きすぎますね。
仕方がない・・・普通の綿棒を使いますか。
擦る力加減が解らないので、多少強く当たっても大丈夫なようにしておきます。
何って・・・ローションで綿棒を濡らしているんです。
湿らせて柔らかくしておいた方が安心ですからね。
鈍さに定評のある兄さんでも耳の中の皮膚は繊細でしょうし、面倒くさいことは先に回避しておくに限ります。
奥の大きいのを取りますからね・・・微動だにしないようにお願いします。
ん・・・ふぅ、く・・・んんっ・・・もうすこし・・・
はぁ・・・ん、んぅ・・・くりくり・・・ふっ、ぅ・・・
・・・ん、はぁ・・・取れました。
見てください、これ。
酷いと思いませんか?
こんな巨大な老廃物を妹に処理させて・・・恥を知ってくださいね。
兄さんの辞書には載っていないでしょうが。
ああ、載っていたんですか。それは知りませんでした。無知を謝罪します、すみません(棒)
生まれてずっと兄さんの妹でいることを強いられているボクですが、見たことがなかったもので。
このまま仕上げをしますので泣かないでください。
微妙な振動で髪が揺れてやりづらいです。
・・・え?黙っていい?
何を言っているんですか、遠慮なさらないでください。
「兄さん」の「リクエスト」ですからね。
きっちりと話しながら掃除します。
ん、んっ・・・五月蠅いです。自分が喋れと言ったのだから責任持って聞いてください。
ボクはこれを速やかに確実に終わらせて、月曜日の授業の予習をしたいのです。
耳の縁も・・・うわ、なんですかこれ。放置したマーガリンの様な・・・ぶっちゃけて言います。汚いです。
傷つかないでください。
端的に事実を述べただけですから。
これはベタベタまみれでもう使えませんね。
綿棒新しくしなきゃ・・・。
っしょっと・・・ん、ふぅ・・・耳の裏も・・・ん、くりくり・・・。
ええ、きちんとやりますよ。
スピードだけを重視して雑に掃除しても、母さんからの評価を下げるだけで何の得にもなりません。
・・・ふぅ、ん・・・はぁ・・・くりくり・・・んんっ・・・まあ、兄さんに言っても解ってもらえるかどうか怪しい所ですが・・・ん、ん・・・ふは、ぁ・・・。
聞いていますか?だらしない顔をなさっていますが。
まあいいです、騒がれるよりマシですから・・・ん・・・ん、ふぅ、は・・・んんっ・・・。
・・・これで終わりですね。
反対側もやりますから向きを変えてください。
え、じゃないです。十秒以内でさっさとしてください。
10、9、8・・・。
やる気になればできるじゃないですか。
うわっ・・・こっちの耳も相当な汚れ方ですね・・・。
この後に及んでどうしてボクがと弱音を吐きたくなりますが・・・仕方有りません。
病院に行かなきゃならなくなるまで放置して身内の恥を他人様に晒すよりはマシです。
兄さんのことですから看護士さんやお医者さんに失礼をするに決まっています。
・・・特にそれが若い女性だった場合、想像するだけで頭痛が・・・。
信用されたいなら妹にひざまくらを要求したりどさくさまぎれにスカートの中を見ようとしないでください。
ちなみにボク、この下にスパッツはいています。
泣かないでください、面倒くさい兄さんですね。
さっさと耳を掃除してしまわなければ・・・。
はぁ・・・ちょっと入口の辺りを触っただけで綿棒に白い汚れがびっしりです・・・。
何ですか、この人として有り得ない汚れ方は。
・・・え?もう少し優しくしてくれと?
何か可愛いことを言えなどと・・・兄さん、無理難題を妹に押しつけるのはやめてください。
虚言はやめてください。
・・・ボクが兄さんに「お兄ちゃん大好きー」などと甘えた事実はありません。
ああはいはい・・・わかりました。
全く・・・耳掃除だけと聞いていたのに現場でこの様な無茶を要求されるなんて・・・。
ぺたぺた・・・ぺたぺた・・・ぺったんぺったん。
兄さんが頼んできたんじゃないですか、可愛いことを言えと。
ですから、可愛らしく擬音語のみで話しています。
ぺったんぺたぺた・・・ぺた、ぺたり。
ぺたぺた・・・ぺたぺた・・・ぺたり、ぺったんたん。
ぺたたー?ぺったんぺったん。
ぺた・・・ぺたぺたり、ぺたぺた・・・ぺたたん。
ふぅ、粗方取れましたね。
・・・可愛くない妹が一生懸命可愛く喋ったというのに、まだ不満なのですか?
そうじゃなくて?
じゃあどうだというのですか・・・。
ここまで業務外で求められることが多いとは・・・弁護士呼んでください。
お兄ちゃん悲しいよじゃありません。悲しいのはボクです。
・・・こっちも奥に大きいのがあるじゃないですか。
綿棒濡らして取りますから、間違っても動かないでくださいね。
責任持ちたくありませんので。
ボクは面倒を被るのが一番嫌なんです。
余計な時間を費やしたくないのです。
兄さんにとっても、耳掃除で怪我をしたって何の得にもならないでしょう?
なら大人しくしていてくださいね。
慎重に・・・かつ的確に素早く・・・んっ・・・
面倒だからと焦って失敗するのはおバカさんなのです。
効率のいいやり方をするのが実際は一番面倒なくできるんですよ・・・ん、もうちょっと・・・。
それ以前に・・・兄さんが耳を汚くしていなければ、
または母さんの話をちゃんと聞いていれば良かったんでしょうけどね。
まあ、過ぎたことを話しても現在の手間が無くなるわけではありませんが。
こっちにも・・・んんっ・・・ふぅ、ん・・・・・・
くりくり・・・んぅ・・・はぁ・・・取れました。
酷い老廃物だと思いませんか?
こんなものをボク一人が見せつけられるのも癪なので・・・兄さん、この使用済み綿棒持っていてください。
ついでに目に焼き付けておくがいいです。
ん・・・んぅ・・・はぁ、ふ・・・
喋りながらやる要領も解ってきました・・・。
え?今は無理していませんよ。
兄さんが今まで無理をさせてくれたおかげで
この食卓で忘れ去られた目玉焼きの黄身のような耳の縁に堆積した垢を取りながらでも喋れます。
ところで兄さん、食卓の自分の席くらい自分で綺麗にしたらどうなんですか?
母さんがいくつになってもだらしないと怒っていましたよ。
・・・黙ってくれて大丈夫です?
それは最初に聞きたかったです、本当に残念でなりません。
まあ、折角なので黙らせてもらいましょう。
耳の裏も・・・んっ・・・くりくり、んぅ・・・
ふぅ・・・ん、ん・・・はぁ・・・。
・・・できました、けど・・・兄さん寝てます?
はあ・・・人が働いているというのに眠ってしまうなんて本当にいい度胸をしていますね、この人は。
ぎゃーぎゃー騒がれるよりはマシでしたけど・・・。
あ、母さんお帰りなさい。
兄さんの耳掃除、きちんとやっておきました。
・・・追加報酬ですか、ありがとうございます。
あのですね、これからもこのバイト、やらせて欲しいのです。
はい、任せてください。
兄さんの耳掃除はきっちりボクがやりますから。