開店の挨拶
《ひゅぅぅぅ……てくてくてく……ぎぃぃぃっ》
おや…これは珍しい。
ほほ、よくいらっしゃいましたな?
霧の中……迷われませんでしたかな、お客人?
ハハハ、突然の事で戸惑っておられますかな?
ここはお客人の夢と人の世の表に出れぬ、影の中で息を潜める者とが一時の交(マジ)わりを交(カ)わす場所。
人の願いによって生まれた、人にあらざる空想の存在達……悪魔と呼ばれる者が集う場所で御座います。
誰が呼んだが、デビルプロセル……悪魔娼館などと、呼ばれております。
とは言え、ここはお客人には快楽という楽しみを。
悪魔にはお客人の精を分けて頂く場、互いの利益となるよう制約を結んでおります。
決して、お客人を害するもの事は御座いませんのでご安心ください。
私どもの館であるこの夢に迷い込まれた方は、彼ら悪魔との波長が良く……現実に疲れていらっしゃる方が多い。
もしあなた様もそうであれば、僅かばかりの精の代わりに、一時(ヒトトキ)に憩いの場となれば幸いで御座います。
……あぁ、失礼致しました。
まだ、自己紹介をさせて頂いておりませんでしたな。
私はこの館の主をしております、モルペウスと申します。
今日おりますのは、あなた様と同じく初めてこの館に足を踏み入れた悪魔。
モー・ショボーというモンゴルの悪魔の娘で御座います。
生前に愛を知らずに死んだ乙女の魂が死後になり代わるという伝承を持っておりましてな、本来は人を害す気質なのですが……どうやら、彼女は例外のようでしてなこの館に迎え入れました。
そうお客人の精を貰い受ける事を、選んだ娘で御座います。
彼女に興味があるようであれば……どうぞ、奥の扉に手をお掛けて下さい。
悪魔のいる部屋へと、繋がるようになっております。
ここは人と悪魔のためにある館……お互いにとって損の無い場を提供出来れば、館の主としては幸いで御座います。
まぁ相性に関しては、……実際の所は肌を重ねてみねばやはり分かりませんがな?
ほほほっ……!
……では、お客人。 ごゆるりと……お楽しみを。
《……ぎぃぃぃぃっ、バタン》