モーショボーの挨拶
《ぱちぱち……》
【中に入ると、そこは丸く角の無い布で覆われた部屋が広がっていた。
木材で作られた素朴な家具や、動物の皮や色鮮やかな刺繍によって仕立てられた道具が広がる、独特の空間がそこにあった。】
ちゅんちゅん……ぴちゅんっと!
……はーぁ、暇ねぇ。
なんで私がこんな娼館なんかにいないといけないのかしら?
そりゃあ、このご時世私が表に出て行っちゃ怪談所か猟奇殺人になっちゃうのは分かるけどさぁ。
ふん、別に怖くなんかないし…………人とか全然来ないし?
ちゅんっ、ちゅんっ!! あー、やーだなぁ!! ひーーーーまーーーーっ!!
って、あ……あら?
あれ、え……お客さん? えっ、い、何時から……?
ひゃ、ひゃあっ!? こ……こほんっ!
《とんっ、とてとて》
うふふ……ようこそ、おいで下さいました。
私はモー・ショボー……愛を知らず死んだ乙女の思いが産んだ悪魔で御座います。
今宵一晩、私の体であなたの精がお互いの凍えた魂のかがり火になれば幸いです。
どうぞ、ご寵愛の程を宜しくお願い致します……ふふふ♪
……お、お客様?
そんな呆れたような目で見られると困ってしまいます……うふふふ。
……あーーーーーもーーーーっ! はいはい、分かりました!
変な演技はやめます、やーめーまーすっ!!
《ばさり》
何よ……急に入って来るから、練習したっていうのに無駄になったじゃない……ちぇっ。
はぁ……まぁ、いいわ。
改めて、ようこそお客様?
案内はモルペウスに聞いてるわよね?
ここは私の部屋、モンゴルの悪魔、モーショボーがお相手させて頂くわ。
私達の……モーショボーの伝承はご存知?
知ってるのであれば、まず一言(ひとこと)……悪魔と一口に言っても、私達は人の思い描いた数だけ存在するわ。
同じ悪魔でも、種族の気質が全てじゃなくて人と同じように個性というものが自然と生まれる。
……だから、安心して貰っていいわ。
私は……ここのルール、人を決して傷つけないという約束を受け入れている存在だから。
でも、私もモーショボーだからね。
ちょっと……頭を舌で舐めたくなっちゃう時はあるかもしれないけれど、そこは許して頂戴な?
ふふふ♪
《すっ、きゅっ》
……さて、ベッドに行きましょう?
あなたに精を出して貰わないと、私も困っちゃうしね。
……えっと、私が初めてなのは、モルペウスに聞いてるかしら?
その、初めてで拙い(つたない)って思われるのは悔しい言わせて貰うけど、……モーショボーは男を誑かす悪魔ですから?
経験はなくても、ちゃんとやり方はわかるから侮らないで頂戴な!
あぁ……それと。
初めてを相手してくれるあなただから、特別に教えてあげるけど。
ねぇ、モー・ショボーは乙女の悪魔なの……だから、みーんな処女なのよ?
……あなたがその気にさせてくれるなら、私の処女……あげちゃうんだから♪
ふふ、……ふふふふ♪