Track 14

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後日談

―教室・昼― 【やつこ】 「……みっちゃんに、ご報告することがあります」 【みっちゃん】 「んぁぇ?」 【やつこ】 「んっ、ん゛ん゛っ。……お、お陰様で……、彼氏がで  きましたっ!」 【みっちゃん】 「なにっ!!?!」 【やつこ】 「あ、あはは。色々、その節は……、お手数お掛けしま  した……」 【みっちゃん】 「そっかそっか。……へぇ、あんたがねぇ。仲良くやっ  てんの?」 【やつこ】 「ん。そだね。仲良くー……っていうのはもちろんなん  だけど……」 【みっちゃん】 「うん? なにか問題がお有りで?」 【やつこ】 「んーん……、問題というか、悩みというか……。恋人  同士になったはいいんだけど、友達だったときと、な  んの変化もないんだよね……」 【みっちゃん】 「けっ。そりゃそうだろ」 【やつこ】 「あ、あれ。みっちゃんがいじけちゃった」 【みっちゃん】 「そもそもあの関係で“幼馴染ですぅ~”と言ってんの  がおかしいって話よ。ふざけんじゃねーっっっ  っ!!!!!」 【やつこ】 「ひっ! は、はいぃっ! そ、そうなんですね。元々  が恋人同士みたいな関係……うぅ、そうだったのかな  ……」 【みっちゃん】 「死ねよ、マジで。腹上死でもしろよ」 【やつこ】 「うわあ……駄目だこの人。妬みで手に負えない状態に  なってる」 【みっちゃん】 「……どうせ今日も、放課後に落ち合っていちゃいちゃ  するんでしょ?」 【やつこ】 「ん? ……ぅんん。いちゃいちゃするかはともかく、  放課後は家までずっと一緒だよ?」 【みっちゃん】 「家“まで”?」 【やつこ】 「え、っと。……うん、そう。家まで……」 【みっちゃん】 「家、“でも”、の間違いでしょ」 【やつこ】 「あっ、そっか。家“でも”一緒、か」 【みっちゃん】 「っざけんなああああああああ!!!!!!!」 【やつこ】 「ひぃっ!! みみみっちゃんが、妬みをこじらせてお  かしくなっちゃったぁっ!!」 【みっちゃん】 「クソがああああああああああ!!!!!!!」 … …… … 【やつこ】 「――ということが、今日あってね」 【男】 「ふぅーん」 ―幼宅・夕方― 【男】 「もうあの女郎には、この話題は出すな。いいな?」 【やつこ】 「あ、うん。わかった。……みっちゃんには、この話題  はNGっぽいし、もうワトソン君のことは話さないほ  うがよさそうだね」 【男】 「そうしろ」 【やつこ】 「ちぇーっ。せっかく、みっちゃんと話す話題が、一つ  増えたと思ったのになぁ……。あっ、ラストの一個、  貰ってもい?」 【男】 「おう」 【やつこ】 「んふっ、ありがとー。あむんむんむ」 【男】 「……ほんっと、お前も食いモノ好きだねぇ」 【やつこ】 「んむんむ……。ん? ……む。私がお菓子好きになっ  たのは、君のせいだよ? 小学校のころは、毎日まい  にちー、お菓子くれてたよねー?」 【男】 「あれは……その、なんつーか。な」 【やつこ】 「“余ったから、やるよ”、とか言ってね? 新品のお菓  子くれるの。ふふっ、それでね、私が食べ出すと、じ  ーってこっちを見てくるの」 【やつこ】 「“一緒に食べる?”って訊いたら、“じゃあ、貰おう”  って君が言うの。食べたいなら素直に言えばいいのに  ね」くすくす 【男】 「やめてっ! もうそれ以上はやめてっ!」 【やつこ】 「あ、でも……中学校に上がってからは、そんなことな  くなったね」 【やつこ】 「私、帰宅部だったから、帰りの時間も合わなくなっち  ゃって。やっぱり、どうしても部活してると、暇があ  まりないみたいだったし」 【男】 「……」 【やつこ】 「その頃かな。私がお菓子作りに目覚めたのは」 【男】 「目覚め……?」 【やつこ】 「お菓子が貰えないなら、自分で作るしかないでしょ?  食べたい欲求は常にあったからね」 【やつこ】 「でも、既製品のお菓子を見ると……、君と一緒に食べ  たくなって。だから、手作りにこだわったんだー」 【やつこ】 「レパートリーを増やして、沢山のお菓子を作ったけど  ……。段々、虚しくなってきちゃって。なんのために  お菓子作ってるんだろうってさー」 【やつこ】 「……そりゃあ、食べたいためだったんだけど……。違  うの。自分で作ったを自分で食べても、結局駄目  なの」 【やつこ】 「……逃げでしかなかったんだよね、お菓子作りって。  君と一緒に食べられない現実からの、逃げでしか……」 【やつこ】 「そんなとき、君がふっと部活をやめて、また私と一緒  に帰ってくれて、遊んでくれて……。私さ、嬉しかっ  た」 【やつこ】 「君が部活で色々あって、結果辞めちゃったことを無視  して、喜んじゃった。いま思えば、すごく自分勝手だ  ったなって思うよ」 【やつこ】 「……けど、帰ってきてくれたって思った。優しい、私  の幼馴染が……、やっと、帰ってきてくれたって」 【男】 「……」 【やつこ】 「駄目な幼馴染だよね。我が儘すぎるよね。……あーも  う、ほんとあのときは……ごめんなさい……」 【男】 「いや……」 【男】 「……。ふっ、ははは……」 【やつこ】 「……むっ。なんで笑ってるの。真剣な話なのにーっ」 【男】 「いや、すまん。……謝ることじゃない。むしろ俺は感  謝してる」 【やつこ】 「へ? 私に……感謝?」 【男】 「そうだ。……あの持ち前の能天気さで、……小さい頃  を思い出させるような、お前の姿に、俺は悩みなんて  すーっと忘れちまったよ」 【やつこ】 「……そっか。君もあのとき……、昔を思い出してたん  だね……。いつも一緒にいた、小さい頃の思い出……」 【男】 「あぁ。俺は実感したよ。……“あぁ、帰ってきたんだ  な”って」 【やつこ】 「へへっ、そっか。君も、帰ってきたって思ってくれて  たんだ」 【やつこ】 「……じゃあ、私からも、言わなきゃだね」 【男】 「うん?」 【やつこ】 「――“おかえりなさい”っ!」 【男】 「あ……」 【男】 「……そうだな」 【男】 「あぁ……。――“ただいま”」 彼女たちは、関係が恋人となっても過ごす毎日に変化はなく―― 肩を並べて登校して、寄り道して買ったものを食べ比べて、休日には外に出かけ、部屋でいちゃいちゃして―― ときどき、えっちなことをして―― それでも、彼女が“お嫁さん”になるまでは、お互いの貞操は守り合い―― 数年後に迎えた“初夜”にて、約束を果たすのであった―― はっぴーえんど

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