第8話
―自室・夜―
妹500「むー……おかしい。兄さんが私を突っぱねるなんて……。大好きな妹より友達を取るとは思わなかった」
妹501「……好きな、はず……よね。あんなに、夜な夜な念仏のように“好きだー愛してるー”って言ってたのは兄さんのほうだもの」
妹502「過信、かしら。……はは、過信ってなによ。兄さんの、何を信じてるっていうの……?」
妹503「兄さんが私のことを好きだったら、何だっていうのよ……。あぁーもやもやする……」
コンコン
兄 「おーい」
妹504「あ、はーい。兄さーん?」
がちゃ
妹505「ん、やっぱり兄さんだ。帰ってたの?」
兄 「まーな」
妹506「そう。……友達と、楽しかった?」
兄 「まぁ適度に」
妹507「ふぅぅーーん。そりゃよかったわね」棒読み
兄 「(めんどくせえ)」
妹508「あ、今めんどくさい女だって思ったでしょ。露骨に顔変えた」
兄 「いーから下降りてこい。ドーナツ買ってるから」
妹509「ドーナツ買ってるから降りて来いって、またドーナツ買って来たの? もー、どこかに行くたびにご機嫌取りのようにドーナツ買って来るのやめなさいよ。
誰も欲しいなんて言ってないんだから、お金の無駄遣いでしょ」
兄 「なら食べないのか?」
妹510「なら食べないのか、って……。それとこれとは別。買って来たものは仕方ないから食べるしかないじゃない」
兄 「じゃあ早く行かないとオカンが全部食っちまうな」
妹511「――っ! またお母さん抜け駆け……! 全部食べてたら許さないっ……。兄さんどいて、お母さんを止める」
兄 「はいよ」」
妹512「……」思案顔
妹513「(ご機嫌取りのように御土産を買ってくるいつもの兄さん。……いつもの、兄さんなら……)」
妹514「ねえ。今日、一緒に遊んだ友達って……男友達? 男、……だけ?」伺うように
兄 「そうだが」
妹515「あ……、ふふっ。そう。兄さんも相変わらずね。もしかして、ゲイ?」(くすくす
兄 「ちげーわ」
妹516「冗談よ。いつもの兄さんで安心したわ。今度は私のほうを優先してくれる?」
兄 「それとこれとは別」
妹517「……それとこれとは別。なんで? あれ、私、なにか悪いことしたかな」
兄 「いい加減甘えるのも卒業な。ちょいちょい甘やかしすぎた気がする」
妹518「甘えすぎ……? そろそろ卒業しろ……。なにそれ……訳解んない」
妹519「なんで、なんで今更そんなこと言うの? おかしい……おかしいよ」
兄 「おかしくない。普通だろ」
妹520「……もういい。ドーナツ食べてくるから」
兄 「あー」
妹521「ばか」
たたた
妹522「……、また、おかしなこと言い出した。一人で寝ろとか言い出したかと思ったら、今度は甘えるな? 訳解んない」
妹523「兄さんの気持ちが……解らない。こんな兄さん……知らない。誰なのよ……、もぅ……」