第9話
―自室・深夜―
コンコン
妹524「兄さん? にーさーん。ちょっと、お話したいことがあるの。入っていい?」
兄 「んー」
がちゃ
妹525「……ありがと。……、兄さん」
だき
兄 「おっと」
妹526「……。やっぱり。避けない。振りほどきもしない。なにが“甘えるなー”よ」
兄 「いや、突然だったから、多少はね?」
妹527「突然だったから? じゃあ振りほどいたらどうなのよ。抵抗すら見せずに甘受するなんて、他の人だったら勘違いするわ」
兄 「は」
妹528「……、もういいわ(離れる)。大体解ったから、兄さんの気持ち」
兄 「お、おう……?」
妹529「次、こっち。こっちきて。……ん。ほら入って入って。今日は一緒に寝るの」
兄 「おい、もう寝るのは」
妹530「一緒に寝るのは駄目? じゃあずっとそうやって言ってれば? 私は絶対にひかないから。どうせ先に折れるのは兄さんのほう。甘受しまくりのにーさん?」
兄 「いや、今日という今日は」
妹531「……しつこい。さっさとベッドに入る。ほら(ぐい)、ほーっら(ぐいー)」
兄 「う、うわ~」
妹532「ふぅ……。ほらもっと奥。私の入るスペースがない」
兄 「はいはい」
妹533「うん、ありがと」
ごそごぞ
妹534「ん……、はぁ。やっぱり、いつも通りの兄さんね。結局本質は何も変わってないわ。
私の力程度でベッドにねじ伏せられるし、そこから慌てて立ち上がることもせず、私の言う通りスペースを開けてくれる。兄さんは総じて、受け。攻めじゃなく、受け」
兄 「はあ」
妹535「……私が甘えてるのも原因かも知れないけど、兄さんのその甘やかし体質も問題なのよ。優しすぎる、とはちょっと違うかしら」
妹536「ねえ。それって、私にだけ? それとも、みんなに対してもそう? もし誰にでもそんな態度取ってるなら、兄さん……。
レイプされそうになっても、抵抗と呼べる抵抗すらできずに犯されちゃうわよ。女にも、男にも。兄さんを犯そうとする人は数多に存在する」
兄 「いやいや。ありえないから」
妹537「有り得ない? ……どうかしらね。この世には色んな趣味趣向を持った人がいるから、確率は0ではないわ」
兄 「まあ、そうかもしれんが」
妹538「……電気、消して」
兄 「ん。おう」
妹539「ん……。今日は月明かりが綺麗ね。電気がなくても、兄さんの顔……結構見える」
兄 「そうだな」
妹540「私の顔も、見える? くすっ、どんな顔してる?」
兄 「どんなって言われても、まぁいつも通りだな」
妹541「……いつも通り? そう。兄さんの顔は……うん。いつも通り。かっこいい」
兄 「へ」
妹542「――ねえ、兄さん。その、最後にはなんでも受け入れちゃう性格……私に、だけ? 誰にでもそうなの?」
兄 「あ、いや、え」
妹543「……私にだけに、して。他の誰かに、そんな態度取っちゃ駄目。そんな危ないことしたら……だめ。兄さんの貞操が危ない」
兄 「いや、いやいや」
妹544「ふふっ。そんなことする奴なんていないって? ……そんなことない。兄さんをレイプしようと思う人がいないなんて、兄さん自己評価低すぎ」
妹545「だって、今からレイプされるんだから」
兄 「……は」
妹546「ふふっ、冗談だと思ってる? 兄さんは、どこまで行ったら、冗談だとは思わなくなるのかしら」
兄 「っ、くるなっ」
妹547「……嫌なの? どうして? 兄さん、私のこと……嫌い?」
兄 「嫌いじゃ、ないが」
妹548「ふふっ、知ってる。……兄さんは、私のこと……好きなんでしょ? 愛してる。そうでしょ?」
兄 「いや、そこまでじゃ」
妹549「否定したってだーめ。兄さんが言ったんじゃない。私がここで寝てるときに、耳元で……。囁いてたでしょ?」
兄 「知らな」
妹550「私を好きだって。愛してるって。そう言ってた」
兄 「そ、それは、寝言――」
妹551「寝言じゃないわ」
兄 「へ」
妹552「ふふっ。一回だけだったら、私もまだ気付かなかったかもしれない。けど、兄さんは何度も言ったでしょ? 寝言のように、好きだー、愛してるーって。流石に私も気付いたわ」
兄 「何にだ……?」
妹553「兄さんの寝言。あれ、起きた状態で言ってたんでしょ?」
兄 「……なんのことだ」
妹554「とぼけたって無駄。あんなに何度も言ったんだもの、もうごまかしは利かないわ」
兄 「……」
妹555「寝言ってね、脳が起きてるときに発する言葉なの。夢を見てるときに言う言葉。……夢ってね、寝始めてから、一時間は経過しないと見ないものなのよ」
妹556「兄さんが寝言いってたのって、私とおやすみなさーい言ってから、何分後だっけ? 正味5分程度よ」
妹557「……、あれって、私に聞かせるためのものだったんでしょ? だから、まだ私が起きてる間……。早いタイミングで言ったの。違う?」
兄 「あー……」
妹558「……目を逸らさないで。こっちを見て。……ねぇ、あれって……遠まわしな兄さんの告白ってことでしょ?
直接言うのは恥ずかしいから、寝言ってことにして伝えようとしたんでしょ?」
兄 「ち、違う!」
妹559「え、違うの? 恥ずかしがらなくてもいいのに」
兄 「まず人の話を聞こうよ」
兄 「あれは、お前が気持ち悪がって添い寝をしたがらなくなるようにだな」
妹560「……気持ち悪がらせるため? 添い寝をしたがらなくなるように……。くすっ。そう。ふーん、そうなんだ」
妹561「でも、どっちでもいいや。兄さんの言い訳も意図も、もうどうでもいい。私の気持ちに変わりはない。大事なのは、兄さんのほう。兄さんの気持ち」
兄 「気持ち?」
妹562「確かめても……いい?」
兄 「は。いや、うえっ」
妹563「……顔が近い? そりゃそうよ。今から何をされるのか、解らないわけじゃないんでしょ?」
兄 「お前、ほんとにっ」
妹564「私は本気。兄さんも覚悟決めて。それが兄さんの気持ちになるから……」
兄 「わけわかんねえっ」
妹565「あ、逃げるんだ。いいよ。逃げて逃げて? 兄さんも薄々気付いてるはず。逃げ続けることができないこと」
兄 「っ」
妹566「ほら。背中が壁に付いちゃった。もう後退りで逃げることはできないわね。どうする? 立ち上がってでも逃げる? それとも、私を突き飛ばす?
力でねじ伏せれば、私だって抵抗できないけど」
兄 「やめろ」
妹567「やめろじゃ解んないよ。口だけじゃなくて、行動でも示さないと。……ほら、逃げないの? 逃げないなら、近づいちゃうね」
兄 「だめだって、こんなこと」
妹568「……私ね、我が儘なの。求められたら、突っぱねて。突っぱねられると、求めて。
……突然、兄さんが“私のことを好き”って言ったとき、嬉しかったけど、どうすることもできなかった。
応えることができなかった……というより、応えなくてもいいかなって思った。応えたいとき、応えればいいかなって」
妹569「そしたら、いきなり兄さんが私を遠ざけようとするでしょ? ずるい……。そんなことされたら、不安で、不安で……。もう、こっちから兄さんを求めるしかなくなる」
妹570「……。いいよね? 兄さん……」
兄 「……だめ、だ……」
妹571「ほら……嫌なら逃げないと。じゃないと、触っちゃうよ……? もう……ふれちゃう……から」
妹572「……。ん……っ」
妹573「ぁ……ふれちゃった……、どーするの……? ファーストキス、妹が奪っちゃった……。ぁ……ファースト、きす……よね?」
兄 「そりゃ……」
妹574「……そか。安心した……。じゃ、続き……」
兄 「いや、もう」
妹575「ん……うるさい、ん……ちゅ、ちゅー」
妹576「ちゅ、ちゅう、ちゅっちゅっ、ちゅぅー、ちゅ。ん……、くひあけへ(口開けて)……んんぅ、ちゅっ、ちゅる、ちゅ、ちゅぅー、ちゅる。
ん、ちゅ、ちゅぅ、ぁ……む、ん……ちゅるるー」
妹577「んぁ、はぁ……はぁ……。ふふっ、どうしたの兄さん。とろけた顔してる。息も荒い。ちゃんと鼻で呼吸してた? じゃないと、苦しいだけよ。ん……」
兄 「ま、まて……」
妹578「んー? ふふっ、力のこもってない抵抗ね。形だけの抵抗じゃ無意味、私がちょっと強引にいけば……、ちゅっ」
妹579「簡単に兄さんの唇なんて奪えちゃう。ん、ちゅう、ちゅっちゅっ、ちゅぅー、ちゅ。んぁ、ん……ちゅう、ちゅる、ちゅるる、ちゅるっ、ちゅっちゅー」
妹580「ん、ぷぁ……。どうしたの? タンマ? ふふっ。もう“やめろ”って言わないのねー。わかった。キスは休憩ね。代わりに耳をいただきまーす。あーむ」
妹581「ちゅ、ちゅぴ、ちゅう、ちゅー、ちゅる、ちゅ、ちゅう、ちうちう、えう、えるえる、ちゅー、ちゅっ、ちゅう、ちゅー。んぁ……ぺろぺろ」
妹582「はむ、んむんむ、はむ、はむはむ、ん~……ちゅるるるっ。んぁ」
妹583「首を舐めてあげる……。ちゅ、ちゅう、ちゅっ。える、える、ちゅっちゅー、ぺろぺろ。ぁ……、ちゅぴ、ちゅ、ちゅうっ、……ちゅうっ、ちゅー」
妹584「ちゅ、ちゅ。ん、んー? 体がぴくぴくしてるわよ、兄さん。舐められるの、感じる? ちゅ、ちゅう。ふふっ、そうなんだ。……もっとして欲しい?」
妹585「んーん。答えなくてもしちゃうから……。ぺろぺろ、ちゅ、ちゅー、ん、ちゅ、ぁ……、える、ん……、ちゅる、ちゅ、ちゅー。んぁ……」
妹586「どこ触って欲しい? 触って欲しいところがあったらいってね。兄さんがして欲しいことをしたいから」
妹587「……好きにしろ? ん、兄さんってば照れ屋さんなんだから。……ちゅぅー、ん、ぁ……。じゃ、Tシャツ……まくるね?」
ごそごそ
妹588「お腹とか……どう? くすぐったい? ん……相変わらず貧相な体。あっ、ごめんなさい。貶したわけじゃないの。いつも通りの兄さんで安心しただけ」
兄 「いや、別に怒ってない」
妹589「あ、うん。怒ってないなら、いい……。こっち、脇腹のほう。どう……? くすぐったい?」
兄 「そりゃ……」
妹590「でも、こうやって優しく撫でて……、声を堪えて……。私には、兄さんが気持ちいいのを我慢してるようにしか見えないわ。
……ねえ。本当は、くすぐったいのが……気持ちいいんでしょ?」
妹591「ちゅ、ちゅう、ちゅ。ねえ、首だって……ちゅー、ちゅる、っ、ぁ……。くすぐったいんでしょ? でも、それが気持ちいいんでしょ? 違う?」
兄 「ち、ちが」
妹592「……違わないわ。だって、兄さんの……硬くなってるじゃない。気持ち良くて、興奮したからじゃないの?」
妹593「ん……。兄さん、さっきから体の反応と違うことばかり言ってる。どうして素直にならないの……? 恥ずかしい、から?」
兄 「……」
妹594「否定はしない。やっぱり恥ずかしいのね。もう……、妹に何を恥ずかしがってるの? 別に、全部曝け出したっていいのよ。だから……ほら、脱いで?」