プロローグ
【ロアーヌ】
そこは地獄だった…
僕と同じような年齢の子がたくさんいて…
僕と同じように、たくさんの黒い鉄の棒に囲まれて、自由を奪われていた…
ひとり、またひとりと減っていって…
誰もがお母さんを、お父さんを呼ぶけれど、助けにきてくれなくて…
僕ももうすぐあぁやって、知らない人につれていかれるんだと悟って…そっと目を閉じた…
≪牢の扉が開けられる≫
無機質な音…甲高くて耳障りで…救いでもなんでもない、最悪の音…
それが一番近くで聞こえたことにビクッとして、それでも僕は、目を閉じ続けた…
お母さんとお父さん以外に、僕をここから連れ出す権利はないという意思表示…
他の子みたいに強引に連れ出されても、絶対に泣いてやるもんかと決心して…
でもその人は、近くにいるけれど、僕には触れなくて…
なんだかお母さんと同じ匂いがした気がして……ふいに、目を開けてしまった……
【シルヴィア】
さぁ……私と一緒に行きましょう……
【ロアーヌ】
包み込むような笑顔に、柔らかな雰囲気……
一瞬、お母さんの面影がダブっては消えて……
泣きそうになって、こらえて……
手を振り払いたくて、でもできなくて……
迷って、まよって……そして僕は、目の前に差し出された優しそうな女性の手に、自分の手を重ねた……