Track 4

膝枕で耳かき (博多弁台本)

【遥】さて、リビングに戻ってきたわけやけど…これからすること、何か分かる? 膝枕もするっちゃけど、他にもあるっちゃんね 答え…分からん? 正解を言うと、膝枕をしながらこれを使うんよ そう…耳かき棒ばい 次の癒しコースは、膝枕と耳かきってわけ どげん? ばり豪華やろー お兄ちゃんの髪の毛を洗ったんも、実はこのためっちゃんね ほら、お風呂に入った後は、耳の皮膚が柔らかくなるやろ? 正確にはシャワーやったけど、効果は充分やと思うし… 今ならお兄ちゃんの耳、ちょうど良い感じに柔らかくなって、耳垢が取り易くなっと~て思うっちゃん …うちの考え、ちゃんと伝わっと~ぉ? …頷いとーってことは、分かったみたいやね じゃあ早速うちの膝枕で――え? 何で首を振ると? 大丈夫だって、耳かきはお母さんにもやっとーし、意外と巧いって褒められたこともあるとよ うち、お兄ちゃんの耳の中、気持ち良~くできるって思うな …え、そげな問題やなかって…じゃあどげな問題と? …うんうん、え? 恥ずかしいって、それだけ? お兄ちゃん今さらばい もう肩のマッサージもしたし、頭も洗ったやろ…あとは、髪の毛も乾かしちゃったし ここまで来たら、膝枕も一緒やん それに…お兄ちゃん、自分で耳かきとかしとるん? 最近忙しくて、しとらんっちゃない? お兄ちゃんの場合、忙しいんじゃなくて、面倒臭がってほったらかしにしてそうやけど なにせ、ミカンの皮も剥けんくらいやし やけんこの機会に、ちゃんと掃除するべきだと思うと 今なら、女の子の膝枕付き…どげん? 滅多になかよ? はい、決まりね 最初から素直になっとったら良いのに、ふふっ じゃあ、まずは右耳から掃除するけん、左耳をうちの太ももにくっ付けて そう…そのまま身体を横にして… 【遥】ん…どげん、うちの太もも…寝心地良か? 柔らかい…ってことは、良い感じなんやね ん…お兄ちゃんの頭を、よしよし ふふ、何かお兄ちゃん、子供みたい だって、耳かきを人にしてもらうんって、そげなお店か…子供の時くらいばいね 親戚の女の子の膝枕で耳かきって…自分から言い出しといてアレだけど、ちょっとヘンやね お兄ちゃん、身体は大きいのに、うちの太ももにちょこんって頭を載せとって…ふふっ 何か、あいらしか もっと頭をよしよしって撫でて、愛でてたいかも お兄ちゃん、良い子良い子~、毎日いっぱい頑張ってるし…たまには、こうしてうちが甘えさせちゃる ふふ、こうやってお兄ちゃんのこと可愛がってあげたいけど…今は、耳かきの時間やけん まずは右の耳から、掃除していくね ん…かりかり、かりかり かりかり…かりかり 耳かき棒の匙で、優しく掃除されると、気持ち良かろ 普段、耳の穴なんて触らんけん…ちょっとした刺激でも、身体が反応するんよ 耳かきって、やり過ぎるのも良くないっちゃけど…お兄ちゃんの場合はサボりすぎ こげん溜まってしもうて…まあ掃除する側としては、やり甲斐があるけん良いっちゃけど かりかり…かりかり かりかり…かりかり ん、はぁ…もうお兄ちゃん、あんまり太ももに、頬っぺたをすりすりすると危ないばい? え、絶対動いとるってぇ うちの太もも、そげん気持ち良かと? 柔らかくて、あったかかったり…すると? え…本当? そ、そうったい… 素直な反応されると…逆にこっちが照れるばい ん…そっかぁ…うちの膝枕、気に入ってくれたったいね お兄ちゃん、ありがと 今度は、奥の方も掃除していくばい ん、はぁ…奥のところも、かきかき…かきかき 奥から手前へ、んっ、しょ……んぅ…… 耳の深いところは、刺激に慣れとらんけん、こしょばいよね 耳の中がぞわぞわして、ちょっとだけもどかしくて… もっと強く掻いてほしかって思うっちゃけど…それはダーメ お風呂上がりで、皮膚が柔らかくなっとーけん…そぉっと優しく よしよしって頭を撫でるように…お兄ちゃんの敏感な耳の中を、なぞっていくんよ こうやって…よしよし、よしよし よしよーし、よしよーし……ってね 普段、お兄ちゃんの耳の中なんて撫でれんけん、けっこう新鮮ばい …あー、というよりも…初体験、かも 耳かきどころか、膝枕もしてあげたことなかったし… やけんこれが、初めて…だね ふふっ…うちの耳掃除、もっと…堪能していきぃ~ね んー? どうすればいいって…そんなの簡単ばい 面倒なこととか、不安なことは何も考えんで、身体からも…余計な力を抜いていくと お兄ちゃんは、近くから聞こえるうちの声と… 耳の深かいところを、かきかき…かきかき…って掃除する音だけを、意識してみぃ ほら、もっと呼吸を穏やかにして…目を閉じてしもうた方が、集中し易かね 目を閉じたら、前が真っ暗になってしまうけど…大丈夫 お兄ちゃんの頭を支える、うちの太ももの感触 お兄ちゃんが、柔らかいって褒めてくれた寝心地と、温もり それに…お兄ちゃんの側には、うちがおるばい 声…すぐ側で聴こえとろぉ やけん、大丈夫…真っ暗なところでも、それは怖いところやなくて 安心できる、優しい暗闇…眠くなってしまうような、ほっとできる場所 どげん…耳かきする音が、耳を撫でる感触が、身体の深いところへ沁み込んでいく かきかき…かきかき かきかき…かきかき 耳の奥がムズムズするだけじゃなくて、気持ち良か、って…思えてくる かきかき…かきかき お兄ちゃんの寝顔、あいらしかね… このまましとったら、眠ちゃうんかな…? うーん…けど、反対側の耳も綺麗にしたいけん、そろそろ…右耳はお終い お兄ちゃん、もっとして欲しいと? ふふ、すっかり素直になったばい 良かよ…でも、続きは左耳、ね お兄ちゃんの右耳、綺麗になったばい ただ…細かい耳垢が残っとーかもしれんけん、このふわふわしてる梵天を使ってぇ… こしょこしょ、こしょこしょこしょ~ ふふ、くすぐったくて、気持ち良よかろ 耳かき棒をくるくる回すと、柔らかな綿毛が、生きとーみたいに動いて… お兄ちゃんの耳の中を、万遍なくくすぐっちゃう――じゃなくて、綺麗にしてくれとよ こしょこしょ、こしょこしょ~ 別に遊んどーわけやなかって まあ、こうしとーと、くすぐっと~みたいで楽しいけん… お兄ちゃんだって、気持ち良くなっとーよねぇ ん…梵天を回して、耳の隅々まで…くるくる~… はい、もうお終いね と、見せかけて―― ふぅぅぅぅ…………っ これで、本当の仕上げもお終いっ 次は反対側…左耳を掃除するけん、頭の向きを変えるんよ 寝返りを打つ時みたいに、ごろんって…ちょうど、うちのおへそを見るように…そうそう 綺麗になった右耳が、太ももにくっ付いて…ん 【遥】あ…今度は、お兄ちゃんの顔が、良く見えるね さっきは反対やったけん、表情とか…あまり分からんかったけど 今は、お兄ちゃんの顔、はっきり見えるばい うちの耳かきが気持ち良くて、夢心地になっとー…お兄ちゃんの顔 言っておくけど、手で隠したり…我慢したりするのはいかんよ 別のこと考えたりしたら、耳かきに集中できんし やけんお兄ちゃんは、うちの前では素直になって、左の耳も…気持ち良くなること 約束…やけんね かりかり…かりかり かりかり…かりかり まだ浅いところなのに、身体がぴくって反応しとるね もう、うちの耳かきに慣れとーって、思っとった? 甘かねぇ~お兄ちゃん 確かに、さっきまで掃除しとった右の耳は、刺激に慣れてきたかもしれんよ けど、左耳はこれが初めて いくら右耳が慣れとっても、関係ないと 特にお兄ちゃんは、耳が弱いみたいやけん、効果抜群ってわけ 普通に耳垢を掻き出しとーだけでも気持ちが良いし… こうやって…耳かきの匙を遊ばせて、色んなところを軽く撫でてみても…ね 身体が反応するったい …耳って、不思議やね うちはあんまり詳しくないけど、耳って、たくさんのツボがあるんやって そのツボは、身体に繋がっとって…ぎゅぅって押すだけで、頭痛が治ったり…心が落ち着いたりするんよ 耳かきも、それと同じとよ 溜まった耳垢を取り除いて、中を綺麗にするっていう目的もあるけど それと同じくらい…人によっては、それ以上に大きな意味を持っとーのが、癒し…とよ 指だと触れん、敏感な耳の奥を刺激する…カリカリ、っていう単調な音 それが、鼓膜に近いところで、何度も何度も…繰り返し鳴ると かりかり…かりかり かりかり…かりかり 身体の内側へ沁み込んでいくように、でも…心臓の音みたいに、優しい響きで その音と、皮膚をなぞられる感覚が、癒しに繋がると 単調な音って、例えば…雨粒(あまつぶ)の音とか、川が流れる音… そげな音を聴いとーと、心が落ち着いて…リラックス、してくるやろ それと一緒たい 感触とか、刺激だけじゃなくて…音でも、癒されることがあるっちゃん 耳かきは、その両方を…同時に味わうことができるんよ… かりかり…かりかり… かりかり…かりかり… 今度は、奥の方も綺麗にしていけくけんね… 目を閉じたまま、感じてみて…… ん…しょ……んぅ、…はぁ……んん…… どう…リッラクス、できた? そっか…安心しすぎて、少し眠くなってきちゃったんやね …うちの話、本当やったやろ? ただ耳をなぞっとーだけで…心が落ち着いてくる けど…どうして耳かきの音を聴いとーと、リラックスするんやろうって思わん? というか、音で安心するっていうんも、不思議たいね… うちが思うんは、さっきも言った…心臓の音 これが、関係しとーって思うっちゃん 何でって…ほら、生まれる前って、お母さんのお腹の中で、ずぅっと心臓の音を聴いとるやろ 一定の間隔で、どくん、どくんって… 上手くは言えんっちゃけど、その頃ってお母さんに守られとって…ばり安心できるって思うったい それに、ずぅっと聴いと~けん、全身に馴染んどるし きっと、子守歌みたいなもん、やったんかな …その名残があって…身体が、安心できる音を憶えてて やけん、単調な音でリラックスできるんかなぁって…うちは思ったと ええと…今の話をお兄ちゃんにしたのは、つまり…その うちに、甘えてほしかったけん…なんよ いつも頑張ってて、疲れと~ って思ったけん 今この時だけは、お母さんってわけやないけど…そげな風に、甘えてほしかって ダメ…かな? え、良いと? ありがとね…お兄ちゃん うちには、いっぱい甘えてくれていいけんね …よしよし、よしよし お兄ちゃん、今までたくさん頑張ったね けど…今はもう、頑張らんで良いいけんね うちに身体を預けて、心の方も…甘えてね うち…身体はあんまり大きくないけど…というか、小柄なほうやけど ハートは、おっきいつもりやけん… お兄ちゃんのこと、受け止めちゃるけん …かきかき、かきかき かきかき…かきかき この…耳かきの音が、心音の代わり お兄ちゃんの大きな身体を包み込んで、癒してあげるの… … 一人で溜め込まんで、辛くなった時は、いつでもうちを頼ってね うちは、どげなことがあっても、お兄ちゃんの味方やけん ……大好き、やけん 不安がなくなって、疲れが消えちゃっても… ずぅっと、側におるばい ふふ、お兄ちゃんの寝顔、あいらしか うちの耳かきで、安心…してくれたんやね じゃあ、最後の仕上げに… …ふぅ、お兄ちゃん耳、どっちも綺麗になったばい ……あ、もう一つだけ、することあったね ん……ふぅぅぅぅっ はい、耳かきはこれでお終い んー? うちに、もっと甘えたいと? 仕方なかねー…ならこのまま、もうちょっとだけ、うちの太ももを、枕代わりにしとって 良かよ ん…ふふっ、お兄ちゃん、くすぐったい…ん、はぁ…