01
兄よ……ひとつ聞きたいのだが、午後から何か予定はあるだろうか。
特にはない? そうか、ならばひとつ報告しておきたいことがあるのだが……少し時間をもらってもいいだろうか。
ありがとう、では昼食の片付けが済んだら……手伝ってくれる? そうか、さすがは私の好きな兄だな。
そういう優しさは愛するに値するぞ。
ならば、この皿を持って行ってくれ……。
あぁ、その皿に付いた油は先にいらない紙で拭ってくれ。
母は毎日そのようにしている。
油を無理に流すと排水溝が詰まったりするそうだし、なによりも汚水は減らした方がいいしな。
ふふ、これでも毎日母の手伝いをしているのだ。
片付けは元より、今日くらいの昼食ならもう私1人でも作れるぞ……美味しかった? そうか、口に合ったのなら何よりだ……さて、と。
ありがとう。やはり兄に手伝ってもらうと早いな。
では、お茶でも淹れよう……ソファに座って待っていてくれ。
いやいい、私がやる。話を聞いてもらう分、それくらいはさせて欲しい。
紅茶で良かったかな……そうか、口に合うといいが。
では、飲んでくれ……それでだな。
昨日の夕方のことなのだが、そうそう、友人に呼び出されて出かけた時のことだ……うむ。
すぐに帰って来たのにはワケがある。
私を呼び出したのは女子だったのだが、用事があったのはその友人の男子でな。
いや、知らない男子だった。隣のクラスと言っていたな……うむ。
単刀直入に言うと、交際を迫られたワケだ。
え、早い? 何が早いのだ? 落ち着け兄よ、お茶がこぼれてしまうぞ。
それでどうしたのかって……もちろん丁重にお断りした。
私は、兄が好きだから他の男子とは交際できません、とな。
あれだろう? 交際というのは男女が愛を囁き合うことを言うのだろう? 私が兄以外の男子に好意を持つはずがなかろう。
え、そう言ったのかって? 兄が好きだからと? 言ったと言ったではないか……うむ、それでな? よくよく考えると、そういうことはあまり言わない方が良かったのではないかと。
一晩考えてみたのだが、とりあえず報告はしておいた方がいいかと思って……私はきっと、余計なことを言ってしまったのだろう、それでもし、少しでも兄に迷惑がかかるとしたら……。
迷惑ではない? そ、そうか。あぁいや、慰めてくれているのだろう、分かっている。
兄は優しいからな……本当に? いや……迷惑かける方じゃなくて、好きと言ったことの方が?
なんだ、まさか疑っているのか? 毎日毎日、好きだと言ってた筈だが? 父と母も毎日言い合っているではないか。
まったく同じ意味で好きだと……今日だってもう5回は言ったぞ?
それは兄妹としての好き……兄妹としてというのはなんだ? 家族として兄を愛していることなど当たり前のことだろう。
私が言いたいのは、それ以上に男子としての兄が好きだと……。
そうだ。何度でも言えるぞ。私は兄が好きだ。
兄以外の男子にこの言葉を囁く気にはならん。
兄妹だから、家族だからということ以上に、異性として、兄を心から愛しているぞ♪