05
私は生理が終わるのが待ち遠しかった。
経血さえなければ、無事にセックスできるはずだから……けれど改めてセックスのことを学ぶと、初体験では破瓜という出血があるらしいと知る。
電車の中でセックスするとして、痴漢さんのオチンチンを血まみれにするわけにはいかない。
裸になるわけではないのだから、彼のズボンやパンツ、私のパンツにも血がついてしまうだろう。
私は意を決して、自ら処女膜を破ることにした。
破瓜のための道具は最終的に魚肉ソーセージかズッキーニの二択となり、細さと柔らかさで魚肉ソーセージ……ギョニソを選んだ。
ズッキーニの方が痴漢さんのペニスっぽかったけど、最初から大きすぎるのは怖い。
まずはクリトリスオナニーでたっぷりと女性器を濡らしてから、ギョニソにコンドームを被せ……そして。
思い切って挿入してみた。
ピリッとした鋭い痛みがあった。
指先をカミソリで切ってしまったような感覚。
でもそれは、ギョニソを出し入れすることで少しずつ収まっていった。
血は、出た。
破瓜の血。
処女の証。
でもこれはセックスじゃないから、精神的にまだ私は処女だと思っている。
そもそも、膣にギョニソを挿入してもさほど気持ち良くはなかった。
これがセックスの感覚なのだろうか。
やはりペニスを入れてみなければ本当のセックスにはならない。
痛みと血が収まったところで、私はギョニソを捨てた。
さすがに、膣に入れたモノを食べる気にはならなかった……。
ともあれ、これで準備万端整った……そう思っていたのに、あの日以来、痴漢さんはなかなか現れてくれなかった。
もしかすると、生理の日の素股で満足してしまったのだろうか?
期待していただけに、失望が重くのしかかる。
数日の間オナニーさえできず悶々としていた私だったけど……その日、ようやく痴漢さんは現れてくれた。
背後から抱き締めてくれる腕に安堵する。
痴漢に対して安心してしまう私自身が滑稽で、ふっと笑いがこみ上げた。
どうかしたの?
そう尋ねてくる痴漢さんに、私は首を振って応える。
そして、生理が終わったことを告げた。
痴漢とこんな風に会話するのもおかしな話だ。
私は、彼の人間性には何の期待もしていない。
容姿や素性もどうでもいい。
ただ、性の快楽を教えてくれたことにだけ感謝し、そのお礼をさせてあげるだけ。
セックスというお礼を……痴漢さんの股間に手を伸ばし、ズボンの中のペニスをまさぐる。
彼はすぐにそれを取り出し、私の手コキを望む。
けれど私は、勃起したペニスをお尻にあてがった。
お尻の谷間で挟むようにする。
腰を前後させて、股間でペニスを擦り……自ら下着のお尻の側をズリ下げた。
肛門付近に当たる熱い肉棒に、私は小さく喘ぎを漏らす。
痴漢さんも息を呑んだ。
いいの?
そう訊く痴漢さん。
私は振り返らず、彼の手の甲を軽く抓る。
ここまでしている女に、わざわざそんなことを訊くものではない。
情緒のない人だ……痴漢なんてしてるのだから、当たり前か。
痴漢さんは興奮を抑えきれない様子でペニスを私に擦り付ける。
期待していたからか、女性器はすぐに潤って挿入の手助けをしてくれる。
彼は経験者だろうか、それとも童貞?
それも、どちらでも構わない。
どうせすぐ、経験者になる。
もちろん、私も。
そして、その時は来た。
痴漢さんの大きなオチンチンが、私の中にめり込んでくる。
やはりギョニソより大きい。
でも十分に濡れていた膣は、彼のペニスをすんなりと受け入れてくれた。
ニュルリッと異物が入って来る感覚に、思わず呻きそうになる。
私はいつも通り口を押さえ、喘ぎ一つ漏れないようにする。
ズブズブとオマンコにめり込んでくるオチンチン。
その熱さ、硬さ、長さ、太さ。
私は痛みよりもまず、セックスの官能に心を躍らせた。
ついに処女を奪われた。
大人の女になったのだ。
ペニスはやはり、細くて柔らかいギョニソとはまるで違う。
ゴツゴツとした感触と、何よりも熱い。
指ともまったく違う快感だった。
膣内をまさぐられるこそばゆさ、押し込まれる苦しさ。
それらに伴う大きな快感。
絶頂に近い痺れが全身を駆け巡り、体がビクンビクンと勝手に跳ねる。
なんて気持ちいいのだろう。
乳首を摘ままれるとか、クリトリスを撫でられるとか、
そんな快感は、セックスとは比べるべくもない。
付き合ってすぐセックスにハマる恋人たちが多いことに、ようやく頷ける。
これを覚えてしまったら、他の楽しさや喜びでは刺激が弱い。
痴漢さんも私の膣を喜んでくれているようで、入れ始めてすぐに出し入れを始めた。
ゆっくりと押し込み、ゆっくりと引き抜く。
お腹の中をくすぐられる強い快感が私を昂ぶらせていく。
あまり派手な動きをすると痴漢行為がバレてしまうからだろうか。
彼の動きはとてものろい。
けど、十分な快楽があるので構わなかった。
何度か出し入れをされて、ふと気付く……このまま、
痴漢さんの精子を注がれるのか。
妊娠してしまうだろうか。
見知らぬ男性の、しかも痴漢の赤ちゃんを孕んでしまう?
けれど、膣内射精されたからと言って、必ず妊娠するわけではない。
それにこの快楽の末の妊娠であれば仕方ないだろう。
楽あれば苦あり、というものかもしれない。
私は口を押さえるのも忘れ、ふふっと艶めいた吐息を漏らした……そしてつい、駄目、とも。
何に対しての駄目だったのか、もう覚えてはいない。
けどその言葉は、近くにいた年配の女性に届いたようだった。
すぐさま耳をつんざくような金切り声が聞こえ、膣内から快楽の素が抜けたのがわかる。
私は女性に抱き締められており、先ほどまで私を抱き締めていた痴漢さんは、数人の男性に押さえ込まれていた。
少しの間何があったのかわからなかったけど、もう大丈夫よ、という声で我に返る。
痴漢さんは、痴漢の罪で捕まっていた。
私は痴漢の被害者になって、哀れみの目を向けられていた。
やたらと親切なおばさんが次の駅で降りて、彼を警察に突き出す。
警察に捕らえられた彼がどこに連れて行かれるのか、私は知らない。
私にできることはただ、毅然と彼の背中を見つめて……その人、痴漢です……そう、はっきり言うことだけだった。