0.プロローグ
私の名前は、“ソフィー”です。
褐色の肌に、白銀の髪を持つ、“ダークエルフ”と呼ばれる種族です。
とはいえ、外見以外は、普通のエルフとそう大きくは変わりません。エルフと同じように、森に住んで、長生きで、弓の扱いが上手です。
だけど、この見た目のせいで、“悪いエルフ”というイメージがついてしまっていて……
人間からも、そしてエルフからも、蔑まれて虐げられていました。
その証拠に……私はつい先日まで、奴隷商人のもとで暮らす、奴隷でした。
そんな日々に嫌気がさし、私はとうとう商人のもとから逃げ出しました。
そして、逃げだした先で……私が“ご主人”と呼ぶ、一人の男性と出会いました。
彼は、私に屋根のある部屋と、温かなベッドと、綺麗な服と、仕事と……
……それから、愛情をくれました。
さて。
念のため、注釈が必要でしょう。
このお話は、虐げられていた私が、ハッピーエンドを迎えたあとの話です。
私の大好きなご主人との、日々の記録です。
物語は既に終わっているのですから――辛いことも、悲しいことも、何一つ起こりません。
そんなじめじめした後日談なんて、誰も聞きたくなんてないでしょう?
つまるところ、このお話は……
ご主人との幸せが、ずーっと続いていくのだという、ただの自慢話なのです。