優しい雨のこもりうた
一つ一粒 雨が降る
ハタハタ落ちて 草の陰
二つ二人で 軒の宿
くるくる回そう 赤い花
三つ水面に 風も立ち
またねとかけた おさげ髪
四つ良い子や 誰そ彼
ひらひら遊ぼう 赤い花
五つ何処(いずこ)や 寝屋の
肥松耳に 雨が落つ
六つ向かいの 子スズメの
他も早うと はわを鳴こう
七つ何度の から傘を
さしてやお宿に 背を向けて
八つやむべの 小田よりも
色で付いた つめどころ
九つコンコン 見つかって
濡れた裾廻で べそをかく
遠出とうとう 父様と
お手手を繋いで 「さ、帰ろう」
「さ、帰ろう」
そろそろ、か
坊っちゃん
雨止んじゃう
ん、んふふ
寝てしもうたかな
寝たふりやったら、この次を会う時にお仕置きやけんね
ふふ
坊っちゃんは寂しんぼやけん、ちっちゃい頃はよう寝たふりをしおったね
んふ
坊っちゃん
坊っちゃんはもう大きやけん、強うならんといかんよ
んふ、うそ
雨降りの時くらい弱くてもええんよ
坊っちゃん
ほんなら、もうさよならやね
体が消えちゃう
坊っちゃん
またね
また雨が降って、坊っちゃんがあたしのこと覚えとってくれたらまた会える
寂しがっちゃういかんよ
あたしのこともう思い出さん時はそれは坊っちゃんにとってもう大事なことがちゃんと出来たときやけん
それはちっとも寂しいことじゃないんよ
あたしに悪いでもないんよ
あたしはそれが一番嬉しい
また会えて嬉しいし、もう会えなくても嬉しいんよ
坊っちゃんがにこにこ笑っとってくれたらね
もう、お天道さんはほんに意地悪ね
じゃ、いつでも待っとるよ
また ここで
また・・・