人魚の願い
【シャイナ】
うぅ……く……っ……ぁ………はぁ、ぁ………っ
ぅ………あ、うぅん、なんでも、ない……っ……なんでも、ない、から………
ちょっと、ね………あし、痛くって………でも、ね……へいき………
……え? いや、だいじょうぶだよ……だいじょうぶなの………
おとなしくしてれば、おさまる、から……うぅぅ……っ
あっ? み、みなくていいよ、みなくて――あっ………
………えっ………と…………あぁ……………
みられ、ちゃったね………えへへ…………
………あの………えっと、ね……………
ごめんね………ふつうの足じゃ、なくて………
うろこ………もどってきてるの………
まだ、だいじょうぶみたい、だけど……だんだん……にんげんの足じゃ……なくなってきてる………
わたし………あそこで、倒れてたんだよね………?
昨日歩いた、浜辺………流されてきたみたい………波に、ながされて………
………わたし………にんぎょ、なんだ………
にんげんで言うところのね………人魚………
でも………ふつうのとは、ちょっとちがう………
だから……ひとりぼっちだった………だから………ここに、いるの………
………聞いて、くれるの………? きもちわるく、ない………?
ふつうと違うけど………だいじょうぶ………?
……うぅん、いじわるな質問……だったね………
あなたは、そんなの気にしない……だから………一緒にいれた
じゃあ………話す………まず、言葉………
これはね………海の中にいたころに、学んだ………
にんげんのね……思考を読み取れるの………水を、介して………
それは、わたしだけじゃなくて………にんぎょ全体の、はなし………
でもわたしは………とくに、その力がつよい………
にんげんの血が、濃いから………だから……少しだけ、しゃべれる………おかしくない?
ふふ………あなたは本当に、気にしないね………
お風呂で、一緒に浸かって………水を、伝って……思いを、知った
じぶんを助けてくれた人が、どういうひとなのか………
なにを考え、どう感じ………わたしを……どうしたいのか………
とくに、なにもなかった………なにもないことに、安心した………
ただ倒れてたから、助けてくれただけ………すごく……まっすぐだった………
わたしが読み取った中で、いちばん………そして思ったの
あし………にんげんのに、なってて………その意味を
わたしは………どちらかにならなければならないって、思ってた
他の人魚は………にんげんの思考を読み取って………奥に引っ込む
戦争とか、うらぎりとか………おかね?
奪い合って、騙しあって………汚い………みんなそう思ってる
にんげんは、たくさんは泳げないから……船を作って……うみの上を、自由に行き来して………
そのうち……海のうえで、戦うようになって………沈んで………
たくさんのにんげんと、いっしょに………たくさんの想いと、いっしょに………
沈んでくる………かなしみと、くるしみと………こどくと………
それは、わたしたちに染みこんで………中で、ぐるぐる、ぐるぐるして………
でも、助けてあげられない………そんざいを知られれば………大変なことに、なるから
だから、どんどん潜っていく………海の、深いところへ………
思考の伝わらないところまで………ふかく、ふかく………にんぎょで、あろうとする
でも、わたしは………にんげんの血が、濃いから………
理解、しようとして………でもやっぱり、汚くて………
でも……でもね………時々………愛っていうものに、触れるの………
男性と女性だったり………かぞく、だったり………
沈んできた船の中にもね………あったの
愛するひとへの、後悔と………かんしゃ
そういうの……にんぎょには、ない………にんげんには、ある………
そこを見ようともしないで、見下して………ひたすら……怖がってる………
なにか………違う気がする
わかるけど………でも………わるいところばかり、見すぎ
だからわたしは……こっち側を選んだの………
下りていくんじゃなくて………上へ……うえへと………
だんだん、強くなってくる………いい感情も、わるい感情も………
でも、ガマンして………のぼっていったら………いつのまにか、ここにいた
あし……にんげんのに、なってて………びっくりして………
にんげんの男性とちかくで接するのも、はじめてで………
とまどって………とにかく、思考を読み取りたかった………
ほんとは、ヘン……なんだよね………?
いきなりその………いっしょに、お風呂とか………
わかってたけど………不安で、ふあんで………
でも………いっしょに入ってみたら………逆に、安心した………
ここち、よくて………そしたら……おちんちんが、その………おっきく、なってきて………
読み取った思考のなかにあるのと、一緒だ……ってなって………
愛しあうっていうのと、同じだ……ってなって………
なんだか、うれしくって………ずっと………あこがれてた、から………
それから……にんげんの足になれたのも、うれしくて………
いっしょに、味わいたくて………そしたら………ヘンなこと、しちゃってた
ごめんね………そういう趣味じゃないって、わかってたん、だけど………
はんのう、よくて………だんだん、クセになってきて………
どんどん、たのしくなっていって………でも……………
時間ぎれ、なのかな…………いまさら、元にもどっても………居場所、ない…………
それになんか………いたい…………すごく………いたいの………どうして………?
はんぶんの存在だったのに………にんげんになろうとしたのが、まちがいだったの………?
どっちかになろうとしたのが、いけなかったの………?
どうして………にんげんの足に、なれたの………なんのために?
たぶんね………あなたに、出会うためだったと……そう、おもうの………
わたし、あなたと………セックス、してみたい………
にんげんの……いちばんの、愛情表現………だめかな? こんな、足じゃ………
まだ………まだ大丈夫だと、おもうの………たぶん………
だから………抱いて欲しい………あなたに………つよく………
たとえもどってしまっても………海に、かえらないといけなくなっても………
あなたのぬくもりで……寂しく、ならないように………