Track 9

ブーリュ:夜闇市

《からから……ぎぃぃぃ、ぱたんっ》 ルーナ 「行商人さん……? 昼間のリベンジをさせてくれるっていう話だったけれど、この建物で本当に夜のバザールが行われるの……? 品物を入れてる袋も、随分小さいみたいだけど……」  昼間の結果に納得が行かないと不貞腐れていたルーナに。 ――納得いかないなら昼間とは全然違うけど、夜の部もあるぞ? 売り方も楽しみ方も違うから、どうしてもっていうなら案内するが。  と声を掛けた所、勢い込んで行くと言われてしまい、彼女を大人だけが入れる夜の市……ブーリュの町に作られた市民会館などにも使われる総合広間へと案内する事になった、あなた。 入り口で、入場料を支払い入ろうとした所を、ルーナの身長を訝しがられたが。南の方のドワーフと人とのハーフなのだと誤魔化し、無事中に入ることが出来た。 ルーナ 「あ、でも薄っすら暗いけど。 よく見ると、品物を並べたり、値段の書いてある立て札とか用意されてる方もいらっしゃるのね! ……よーし、私も負けないよう頑張るわっ!」  エルフという種族は、精霊の意思を伝え、精霊の力を借り、その力で精霊石を作り人々の生活を支え、各町を持ち回りながら滞在している事が多い。 元来は森を住みかとし。その地で精霊と語らい、植物を育て、狩りをしながら生きる事を好む事が多い種族である。そのため薄暗くなりがちな森の中を見通す夜目に長けている者も多く、彼女もその一人のようだ。 闇の精霊に愛されてるダークエルフとはいえ、この辺りは普通のエルフとの差は存在しないらしい。 月明かりが僅かに窓から差し込む程度の明るさの室内では、あなたには薄っすら程度にしか見えないが。彼女にはそれなりにはっきりと視界が見えているのだろう。 ルーナ 「ん……昼間のと違って、女の方が多い? ……それにドワーフに、獣人の方……種族も昼間より豊富というか。 あと、妙に薄着というか、エッチな格好をされてる方がいるような……?」  ルーナは不思議そうに首を傾げる。 あなたがそ知らぬ顔をして窓を見上げると、月は高く上り始め、部屋を照らす明かりの量は段々と強くなってきている。 そして空気に混ざっていた埃などが、月明かりにぼんやりと照らされ流れに舞って宙に煌く。 この大人たちの秘密の空間を一種の幻想的な場所のように彩っていた。  あなたが周りを見渡すと、薄明かりに男も女もそわそわしたような顔付きでお互いの顔を覗き合っている。 そろそろ頃合なのだろう、あなたは急いで場所を確保すると、素早くある特定の場合にのみ使う幾つかの小瓶や薬草の類を並べて、注意事項を書いた立て板を立てかけた。 そして、ルーナを手招きしあなたの腰の上に座らせたのだ。 ルーナ 「あぅっ……行商人さん?なんで私を足の間に座らせるの? ちょっと、この格好でお客さんの相手をするのは恥ずかしいのだけれど……」  言いながらも、チラチラ辺りを伺いながらそっとその軽い体をあなたに預けてくるルーナ。 あなたは恥ずかしがりながらも、言えば素直に聞いてくれる少女を愛でるように、そっと彼女の頭に顎を乗せるようにして擦り付けた。 戸惑うようにあなたを見返してきたルーナに一つ微笑みを返し、あなたは彼女の耳元に口を寄せ小さく囁く。 ――そろそろ時間だ、周りをよーく見ててご覧。 と。 ルーナ 「はぇ?何か催しでもあるのかしら? こんな所に皆で固まって、一体どんな……、……っ!? わ、わわわわっっ!!??」 《んー……あ、素敵そう、もっと奥……。ふふ、私はお安くないけどいいのかしら?》  明るくなった月明かりの下では、あなたの目でもこの空間で何が行われているのかは一目で分かる。 元々パートナーと一緒に室内に入っていたものは、店を広げている商人から飲み薬などを買いお互いに飲み合わせながら、服を脱ぎ体を重ね始め。 ルーナが気にしていた下着同然のような格好の女性達は、用意してある立て札を持ちながら、男性達の間を歩いていく。 そして、一枚一枚とただでさえ薄かった布を脱ぎ捨て、呼び止められるとその男性にしなだれ掛かり金のやり取りをし、体を預けているのだ。 ルーナ 「なな、なななな、なんなの、これぇ!? わ、わ、わわわわわっっ!?あっちでも、こっちでも、皆気持ち良さそうに、入れて、入れられて。 わー、わーっ!?そんな人の前で、ダメよ、そんなっ!? わぁぁ!?あのドワーフさんのすごい大きい、なんであれ入るの!? あっちの獣人さんのは、なんかゴツゴツしてる……えぇ、痛くないの?!なんだか気持ち良さそうにして……ふわぁぁぁぁぁっ!!??」  あなたの顎の下で、ルーナがジタバタと興奮したように暴れる。 彼女が認識していた、行為は人に見せるものではなく、当事者達だけで密やかに行われるものであるという考えが、真っ向から揺さぶられているのかもしれない。 状況的には、叩くような水音、艶のある甘い声、一方所か四方八方からそれ等に襲われている状況だ。 彼女にとっては突然の変化に、興奮とも混乱ともつかない様子で、褐色の肌を朱色に染め、目尻には小さく涙まで浮かべながら、ルーナはあなたを見上げてきた。 ルーナ 「ぎょ、行商人さん、これって……その、皆こういう目的のために集まったの? 私、てっきりお昼のと同じように色々物を売るためだと思っていたのだけれど!?」  批難するような口調で、それでもチラチラと好奇心に襲われるのか、辺りを見ながらルーナが小声で尋ねてくる。 あなたはその様子に苦笑しながらも、その考えで間違っていないとルーナの問いに頷いて見せた。 ルーナ 「う、嘘よっ!行商人さんのエッチ!! だ、だって誰も物の売り買いなんてしてないじゃないっ!」  騙されたとばかりに頬を膨らませる少女が逃げ出さないよう、そっと後ろから抱きつく力を強めながら、あやすようにあなたは答える。 ――いいや、嘘じゃない。これはブーリュのもう一つの伝統。 違法ではないが、昼間では大っぴらに売れない物を売るための大人たちの市。通称、夜闇市(よやみいち)だ。 ここでは、所謂(いわゆる)夜の遊戯に使う道具や薬剤。あとは、体自慢の女や男達が自分の体を一夜の恋人として売ってたりする訳だ。 だから、別に皆が皆スルためだけに集まってる訳じゃない。その証拠に、物を売ってるだけの人もいるだろう? ルーナ 「えっ、そんな事!? ……あ、本当だわ。あの、水薬を束で並べてる方は、にこやかに笑ってるけど薬を売ってるだけで女性の人は近くにいないし。 あっちのグラマラスな女の人は、男の人に座って何だかご満悦という感じ……はわぁ」  あなたの答えに、ルーナの目が一層くらくらと回り始めたのか。 熱にでも冒されているかのように頭を押さえ、イヤイヤと頭を横に振る。 ……けれど、好奇心の強さには抗えないようで。合間合間に漏れ聞こえてくる周りの声に合わせ、ちらちらと覗き見をやめられないようだ。 あなたはその様子にほくそ笑みながら、腰の上で彼女の動きに合わせて小刻みに動き続けている小さくて軽い、その癖しっかりと蜜を蓄えている褐色の果実に手を伸ばした。 《くちゅり……ぐちゅ》 ルーナ 「ひゃぅっ!?ぎょ、行商人さんっ?! ん、んぅっ突然そんな……あっ、んんぅっ!?」  軽く指で撫でただけで、彼女の好奇心旺盛な女性としての部分が、すでにしっとりと濡れているのがよく分かった。 あなたがそのまま指で小さく引っかくように、クロッチ越しに撫でているとじんわりと湿り気が広がっていく。 ルーナ 「はぁ、ぁあ、だめ……だめよ、行商人さん……っ。 こんな、人がいる場所で……あぁっ、皆に、見られてしまうわ……っ」  周りに当てられて既に十分興奮していているようで。 彼女の奥から流れてくる蜜は、段々と量を増し、すぐに彼女をの場所を隠している小さな布切れでは吸い切れないと。 露(つゆ)に濡れる夜のような肌を、一層艶かしく濡らしていく。  指で一擦りする毎に、肌を滑る蜜が増していく。それなのに踏ん切りがつかないルーナのために、あなたは再び彼女の耳元に口を近づけた。 そして、小さく……けれど彼女の好奇心を刺激するように、しっかりと。 ――さっきも言った通り、ここでは体を使ったパフォーマンスも商売の内なんだよ。 大丈夫、ここの事は外で話さない決まりになっている。 自分はルーナしか相手しないし、ルーナにも体を売らせるつもりもない……けど、お客さんを引き止めるための魅力的な案内として、君の姿を見せてあげたらいっぱい売れるかもなぁ。 勿論、耳とかは見られないように気をつけるし……ね?  ……そう、免罪符の代わりとばかりに、彼女に言葉を滴らせるあなた。 ルーナ 「んっ、ぁあんっ! ……み、皆内緒にしてくれるの?それに、行商人さんも他の方の相手をしなくて、私も行商人さんだけ……。 ……いっぱい売れたら、行商人さんも助かるの? あぅ……あぁんっ……んぅ♪ごくり……」  滴った言葉は、彼女の耳から脳へとゆっくりと染み渡っていくようであった。 それまで、人前ではダメという礼節が彼女の持ち前の好奇心を抑えていたが……こうして、行為をするための理由を作ってあげれば……どうか? あなたが彼女の答えを待っている間にも、彼女の顔色はどんどんと赤く染まり、目元が涙ではなく……期待と興奮の熱に、蕩けて潤い始める。 ルーナ 「……これも、商売の……行商人さんの……手助けになるのよ、ね?」  最後の確認とばかりに、あなたを振り返ったルーナの顔は、とろんっとした瞳に、熱く濡れた吐息と……すでに準備が整っているという具合。 あなたは火照る少女ににっこりと頷き、念のためもう一度しっかり注意喚起の立て板を他の客に見え易い位置に整え、曰く。 ――薬草、他水薬各種用意アリ。少女は非売品につき手出し厳禁、ただし見学は無料。 である。