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その後の冒険者達

《ぴぴぴ、ざわざわ……》 そっち、2匹行ったわよ! 逃がさないで!! 《だっだっだっ、ばうわう!!》 《だんっきゃいんっ!?》 【少女の声に応え、あなたは盾でモンスターの行先を体を使って塞ぎ、フォレストウルフ……森に住む狼のモンスターの足を止める。 がつんっと大きな反動と共に、ウルフの悲鳴が上がり、どさりと倒れる音が聞こえてくる】 《ぐるるぅぅ、がうっ!!》 【もう一方のウルフが威嚇の声をあげ、倒れたウルフが起き上がる時間を稼ごうと身を低く屈めた姿勢をとる。 いつでも飛びかかれる体勢だ……あなたは足に再び力を籠め、盾と剣をぐっと構えなおした】 ナイス! 倒れた方は任せて! 私がやるから、あなたはそっちを! 《たったった》 【近づいてくる足音から、倒れたウルフが起き上がるまでに十分間に合うと判断し、あなたはまだ元気なウルフに集中する。 あれから約半年、背中を預け合いながら互いやってきたのだ、お互いの出来る事はよく分かっている。 その彼女が任せてと言ったのなら大丈夫だろう。 そういった信用も、信頼も、冒険者としてお互いに信じあえる日々を積み重ねてきた自信が、あなたにはあった】 《ぐるぅ……がう!! だっ!》 【少女の接近に気付き、慌てたようにフォレストウルフがあなたに襲い掛かる。 もう一匹が倒されたのを見ていたからか、右に左にと飛び跳ねて、噛みつく隙を伺うように簡単には襲ってきてくれない。 それならばと、あなたはわざと盾を持つ手から力をふっと抜き、姿勢を崩してみせる】 《るぐぅ……ばうっ!! だっ!】 【瞬間、狼が大きく跳んであなたを襲う。 やはり体が緩む隙を狙っていたのようで、白くぎらめく牙の群れはあなたの喉元目がけて一直線に跳びかかってきた。 ……あなたの、狙い通りに!】 《がぅっ!? がっ……きゃうんっ!!?? ざしゅっ、ぶしゅっ!》 【飛びかかってきた瞬間を見定め、あなたは再び足に力を込めて盾を突き出した。 意表を突かれたウルフは、驚きの叫びと共に地面に叩きつけられる。 そこにすかさず剣を繰り出し、喉元目掛けて逆に剣を突き立てた】 《がぅ、がぁ……っ、どさっ》 【喉を突かれ暴れていたが、暫くして静かになり目から光が抜けていく。 安堵の溜息をつきそうになるが、まだもう一匹いるのだ。大丈夫だとは思いつつも、軽い心配と共にあなたが彼女を振り返ると……】 《ばふっ、きゃうううんっ!? きゃん、ぎゃぁう!?》 ふんっ、どうよ! 特性の薬草粉末袋(やくそうふんまつぶくろ)の匂いは! 特別にっがいの用意してあげたから、効くで……っしょ!! 《ごんっ!! ぎゃぅおんんっ!!??》 【宣言通り、彼女もしっかり仕上げに掛かっていたようだ。 鼻が利く相手だからと、先日用意していた自作の匂い袋が、期待通りの効果を出してくれたらしい。 鼻を潰され、悲鳴をあげているウルフに少女がメイスを振り下ろすと、泣き声は段々と静かになっていった】 ふー……よしっ、こんなものね! これで6匹目、撒き餌もなくなっちゃったしこれくらいにしておきましょうか? 毛皮は仕立てに使うらしいから、痛む前に帰りましょう? 【彼女の言葉にあなたが頷く。 この半年で体力や力ではあなたの方が強くなってきたものの、こうした相手に合わせた対策や気配りは追いつけないままであった。 適材適所なのだと思いつつも、まだまだ適わないなという思いが、少しだけあなたに苦笑を漏らさせた】 ん? なーに笑ってるのよ! 何か変な事でも……あれ? ひょっとして私、血とか顔に飛んでる?! ぅー……っ! は、恥ずかしいからそういう事はすぐに言ってよ! 【勘違いしたようで、彼女は不満そうに頬を膨らませてから顔を拭う。 内容は物騒だが、彼女の乙女心が垣間見えるようで、それが何とも言えず微笑ましい】 【……あの後、彼女は長かった髪を切って肩口までで切り揃えた。 あるいは、それは彼女なりの過去との決別だったのかもしれないが……あなたは詳しい心境については聞かない事にしていた。 ただ何処か吹っ切れたように冒険者として振舞う彼女は、以前の儚さよりも彼女の素の快活さが増したように感じて、こちらの方が彼女には似合っていると密かに嬉しく思うのであった。 木漏れ日に輝く彼女の銀の髪を眩しく見つめながら、リィン、とあなたは彼女の名前を呼んだ。 途端、彼女の頬に朱色が混ざる。】  と……突然、名前を呼んで何よ? 未だに、名前を呼ばれるのは何か慣れないわね。 特に貴方に呼ばれると……ぅーっ、何だか恥ずかしくなるのよね。 まだ笑ってるし……もうっ、私で遊んでないでとっとと帰るわよ! こんな危ない所でふざけてたら危険だし、毛皮が痛む前に帰る必要があるんだからねっ!! 【あなたが反応を楽しんでいると、少しだけ恥ずかしそうにあなたを叱り、リィンは帰り支度を進めていく。 こうして小さな事にも素直な感情を見せるようになってくれた事が嬉しくて仕方ないのだが、あまりやりすぎると機嫌を損ねてしまう。 あなたは彼女に頷き返すと、一緒にウルフ達の死骸を持って帰る準備を整え始めた。】 【リィン……本名はリリーレインという名前だった少女。 あれから半年、”しろねこ”と呼ばれていた彼女と、あなたは冒険者として……相棒として、恋人として……冒険を続けていた。】

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