Track 5

3話目

[駅を出て、手をつないで開場前まで来たふたり] (人混みに気圧されてなかなか前に進めない少女) 【左側・近距離】 うおぉ……なんだか思ってたよりもかなり会場でかいんだが…… 何が小規模だよ……さっきも聞いたが、それで更新したイメージよりもさらに大きい…… ということは、本番はもっとってことか……これはキャラメイクからやり直すしかないな…… (「大丈夫だから」と少女の手を引っ張る主人公) 【後方・近距離】 お、おい……そんなに腕を引っ張るなよ…… 【正面・近距離】 わかってる。敵前逃亡などしないから、そんなに急かさないでくれ…… 少しバリアが分厚すぎてなかなか前に進めないだけだ。ゆっくりなら……ちゃんと前に進めるから……な? (主「じゃあゆっくり行こうか」) ああ、私の歩幅に合わせて歩いてくれると助かるよ。 [会場の中、初めて見る景色にテンション高めの少女] 【正面右・中距離】 おわぁ……なんだここは…… ネットで、会場の上から撮った写真なんかは見ることあるが、この視点では初めてだな…… だが……うむ……悪くはない…… というかこの会場内、少なくとも私が知ってる作品の二次創作的なのはないようだが、そういうイベントなのか? (主「まあね」) なるほど……同人とは二次創作がメインという印象があったが、意外とそうでもないんだな…… なあ、お前は今日……何か目当てのものがあったりするのか? (主「いいや、特には」) そうか……それなら、いろいろ見て回ろうか。 (主「元気出てきたね」) ふふふ……まあな。人混みは嫌いだが、こういう空気感は嫌いじゃないよ。 なんだか宝探しみたいな気持ちにならないか? もしかしたら知ってる作家が出展してるかもしれないし、私好みの作品に出会えるかもしれない…… むぅ……だったら色々と下調べ、しておくべきだったな…… さっきのさっきまでは今すぐにでも帰りたいという気持ちでいっぱいだったが、これを目の前にすると考えは変わってしまうな。 【正面・近距離】 やはり百聞は一見にしかずということか……人生というのは本当に面白いよ。 ありがとな……今日も新しい世界に連れ出してくれて。 お前と一緒にいろんなものを見て、いろんなことに触れて……私はどんどん成長してるな。 私がポケットに入るモンスターなら、お前はそのトレーナーと言ったところか。 (主「ちっちゃくて可愛いしね」) いや、別に体格の話はしてないんだが……まあいいか。 お前のポケットに入るようなサイズ感で良かったなとは……思うこと、あるしな。 ふふ……そんな話は置いといて、さっさと回らないと時間がなくなってしまうぞ。 人気のサークルはすぐに「完売」するんだろう?だったら、私たちも急がねば…… (主人公の手を握ったままじっと動かない少女) (主「行くんじゃないの?」) ん、ああ、いや……私が先に動いたら手を離されるんじゃないかと、少し怖くなっただけだよ。 (主「そんなことはしないよ」) ん……わかってるんだが、一先ずはお前について行くのが得策かなと思ってだな。 慣れてないから歩き方もわからないし、どこかに罠が潜んでるかもしれないしな。 (主「じゃあ、ちゃんとついてきてね」) ああ、先導、よろしく頼むよ。 [しばらく歩き回っていろんなものを見たり買ったりした後] 【正面右・近距離】 ふふ……なんだか思ったよりも買い物してしまったな…… (ふたりが買ったものを抱えてる主人公を見ながら) 荷物、重くないか? (主「大丈夫だよ」) そうか?自分のぶんくらい自分で持ってもいいんだが……まあ、持ちたいと言うなら仕方ないな……ふふ…… (貼ってあるポスターを見て気になるサークルができた少女) ……あ、あのサークル、少し気になるな……あの、あそこの……ピンクのポスターの、二人座ってるとこ…… ちょっと見に行ってもいいか? (主「もちろん」) ふふ。よし、では善は急げだな。 [男女2名が座ってるサークルへ(このみちゃんシリーズのふたり)] 【正面・近距離】 あ、やっぱり……この絵、ネットで見たことある…… 尻尾の生えた女の子とのラブコメ漫画で、結構好きなんだよな…… こっちの猫の漫画は……絵柄ちょっと違うけど、同じ人が描いてるんだろうか…… いや、もしくはこのブースに座ってる二人、作家と売り子に見せかけてどちらもが作家という可能性も……うーん…… まあいいか。とりあえず買っておこう……いいか? (主「じゃあ自分で言ってみて」) んむっ……なんだよ、人を子供みたいに…… そのくらいできるさ……見てろよ? (サークルブース前に行く少女) 【正面・遠距離】(知らない人と話すので人見知りモード前回の引きこもりちゃん) あの……す、すみません……! (サークルの人「はい、ありがとう、ございます!」) えっと……新刊1冊ずつ……ください……! (サークルの人「はい……2冊でちょうど1000円、です!」) あ、じゃあこれで……(1000円渡す) (サークルの人「ちょうどですね……では、どうぞ」) (本を受け取る少女) ん……あ、あの……えと……頑張って、ください…… (サークルの人「あ、ありがとうございます……!」) (そそくさと戻ってくる少女) 【正面・近距離】 ふぅ……やはり知らない人間と話すのは緊張するな…… だが、今のやりとり、まあまあじゃなかったか? (主「小慣れてる感じあったよ」) ふふ……今日のお前の様子を真似てみたんだよ。 知らないサークルならとりあえず新刊1冊づつって言っておけばいいんだよな? (主「ふふふ」) んむ……何がおかしいんだよ。 (主「すっかり楽しんでるね」) ああ……まあな。 たったの数時間だったが、ここの作法はなんとなく理解したつもりだよ。 あんまり無駄遣いをさせては悪いかなとも思ったが、こういう出費を無駄だというと、お前に怒られてしまいそうだし。 迷ったら買うの精神……ここで逃したら次に目にする機会なんてどこにあるのかわかったもんじゃないし、大事だよな。 今日は少し遠慮なしでいかせてもらったよ。 (主「その代わり晩御飯は家で食べるよ」) ふふふ……別に外食をしたくて出かけたわけじゃないし、その程度なんともないさ。 さすがに「晩御飯抜き」とか言われると応えるが……家でお前の料理が食べられるんなら、私にとってはかけらも痛くないさ。 ん……ところで、ちょうどここで一周した感じか? (主「そうだね」) そうか…… 本当は見逃したものがないかもう一周……と言えたらいいのだが、私の体力の方が限界のようだ…… (主「おんぶする?」) あ、いや……さすがにこんな公衆の面前でおんぶは……目立つし恥ずかしいし…… ちゃんと手を引いて歩いてくれたら、今はそれで十分だよ。