1・自己紹介
勇者カルテガの息子が旅に出てから数年。
世界は勇者の冒険譚に酔いしれている。
けれど、勇者と共に旅に出られなかったオレたちにはあまり関係のない話だ。
一番最初に声を掛けられなかった戦士のオレや、魔法使いのじいさん、武道家のオッサンなんかは、マリアハン周辺の雑魚のモンスターと戦って街を守っていりゃあいい。そう思っていた。
ところがある時、勇者は戻ってくるなり、商人を一人どこかへ連れて行った。何事かと思っていたら、今度はオレに声を掛けてきた。
話を聞くと、旅を続ける資金面を工面する仲間が必要らしい。
しかし、オレの稼ぎじゃ、そんな高額な武器なんて購入できるわけがない。断ろうとすると、勇者は心配することはないって笑った。
オレが闘技場に出ればいいんだって。
聞いたことがある。コマリアという街には闘技場があり、モンスター同士を闘って賭の対象にするって噂。
勇者はオレに、そこに出てくれって言ってきた。つまり、オレがモンスターと闘って、オレに掛けていた勇者が一気に旅の資金を稼ぐって寸法だ。
ああ、なるほど。それならオレも勇者に協力が出来る。
オレは闘技場に出ることにした。