1プロローグ
この世界の街には、必ず教会があります。
それは魔王軍に蹂躙される世界にあって、人々を守る心のより所。
そんな教会に従事するのが私たち僧侶の仕事。見習いである私も、僧侶の仕事に誇りを持っています。
ですが、私には少々問題があります。それは、神の奇跡である回復呪文の修得が滞っていること。
解毒のキアゾナ、麻痺解除のキアスナはどうにか覚えました。
けれど、中級の回復呪文のホアル、ベホアルまではマスターしたのですが、最上級呪文ベホアが修得できずにいます。
さらに神の奇跡、死者蘇生の呪文、ザオリガ。
街に点在する教会に勤める為には、どうしても、このザオリガを修めなければいけません。
旅の僧侶なら、モンスターを倒してレベルを上げて修得できるでしょうが、残念ながら魔王軍の攻勢が著しい昨今、それも難しい情勢です。
しかし、私たち僧侶には、別の方法があります。
それは聖なる儀式を受け、神に身を捧げることで、魔法を修得する方法です。
私は今夜、ベホアとザオリガを修得するために、この儀式に挑みます。
神父様と二人きりの教会の地下室。とても静かで、なんだか緊張してしまいます。
石畳が敷き詰められ、何十本の蝋燭の火が薄暗い部屋の中を照らして、祭壇の十字架を浮かび上がらせて、とても神秘的です。
神父様は穏やかな笑みを見ていると、少しだけ緊張がほぐれます。
私は大丈夫です。
この儀式を修めれば、私も一人前の僧侶になれるのですから。頑張らなくては。
神父様、よろしくお願いします。