エピローグ 魔王プエル、監禁室その2
【エピローグ】*魔王城、地下監禁室にて
[魔王プエル]:
久しぶりだねぇ? 勇者くん。
久しぶりすぎて、僕のこと可愛く見えてくるだろう?
《勇者 ……っ》
また怖い顔をする。ふふっ。
冗談はさておき…。
あれからキミ達は本当によく働いてくれたよ。
『アルラウネの蔦(つた)』のことは、ローラの目を通して見えていたけど、放っておいた。
キミがどうするか知りたかったしねぇ?
《勇者 ……》
ともあれ、仕事はきっちり果たしてくれたんだ。それ以上は望まないよ?
それにしても、貯めに貯めた不死のエレメントが500本…。
これで5千年分の命はストックできたってわけだ。
ふふっ。
《勇者 ……》
今度はキミと交わした約束を、僕が果たすとしよう。
キミをもとの姿のまま、人大陸(ひとたいりく)へ転送する。
僕のことやここで経験した記憶は一部なくなるけど、戦いの記憶は残っているはずさ。
《勇者 ……》
手も足も出ず敗北した記憶がね…。ふふふっ。
キミは語り部となって、十二魔王(じゅうにまおう)の恐ろしさを伝えるんだ。
もしキミが語りたくなくても、そんなことはやつらの知ったことじゃあない。
拷問しようが幽閉しようが、無理矢理にでも口を開(ひら)かせようとするはずさ。
人間って、そういうもんだろ?
欲望に忠実な僕たち魔族は、わかりやすい「悪もの」で、清廉潔白を気取っている大元老院(だいげんろういん)のほうは、わかりにくい「大悪党」だ。
ふふっ。まぁやっていることは、同じなんだけどね?
あっはは、あはははっ。
《勇者 ……》
さて、お別れの時がきたね?
最後に一つだけ言っておくけど、あの子は連れて行けない。
実験材料にされることは目に見えてる。可哀想だろ?
だからキミだけだ。キミを人族(ひとぞく)のもとへ帰す。
《勇者 ……》
ふふっ。どうしたんだい? 人(ひと)は変なことで悩むよねぇ?
《少し間をおく》
なら、選択肢は二つある。
《勇者 ……》
一つはキミだけがもどる。
もう一つは、ローラとともにキミも残る。
その場合は人間としてではなく、魔族として生きてもらうよ?
《勇者 呪術を使ってか……》
ネクロマンシーかい?
一度キミを殺して復活させるなんてことはしないよ。
そんなことをしたら、ただのアンデッドになってしまうからね。
体内に一定濃度以上の魔素(まそ)を注入していけば、キミは人魔(じんま)として生まれ変わる。
退行魔法(たいこうまほう)なんてつかわない、文字通りの「生まれ変わり」ってわけさ。ふふっ。
それとそうだね、半年に1度くらいは…「不死のエレメント」を採取させてもらうよ?
それが条件だけど、どうする?
キミが選ぶんだ。 「行く」か、「残る」か。
《勇者 ○×△□…》
そう、意外だねぇ。
じゃあ、はじめるよ?
《ラストBGM 闇に還る時》
おわり