触れたもの、君の心
後片付けが済み、彼女があなたを見て微笑む。
「……よし、っと。これで完璧かな」
「おちんちんも綺麗になったし、パンツもちゃんとはいた」
「ちゃんとわたしの家に来た時と同じ格好。わたしの部屋も……匂い以外は問題無し、と」
「まあ……まだ一日なんて経ってないけどコレでわたしは満足かな」
「ばいばい。もう、帰っていいよ」
「んっ? どうかした? 目を瞑ったままでも……何か言おうとしてるのは分かるよ」
「……ふむふむ。まだ一緒に居たい、って? 約束だから……って?」
「…………そう、だね。約束……したんだよね」
「――うん。でも、いいの。わたしがもういいって言ってるんだから、それでいいの。おしまいなの」
「休みの日なんだからさ、早く帰ってゆっくりしなよ。ね?」
彼女はあなたの背中を押し、扉まで連れて行く。
「今日は、本当に……ありがとう」
「好きな人と結ばれるといいね……。わたしは、応援してるから」
「大丈夫だよ、あなたなら。わたしが……好きになった人だもん」
(『わたしが〜』から涙を堪えながら話すようにお願いします)
「ほら早く出ていきなって。あなたとは……これで……さよならなんだから」
「あ、こら……今目を開けようとしたでしょ…………だめだよ。約束、でしょ」
「お願いだよ…………目は、開けちゃだめ。あなたは目を閉じたまま、わたしと……別れるの」
「早く出てってよ、早く……お願いだから…………」
「だめ……だめなんだよお…………目は開けないで、って……言ってるだろお…………」
あなたは目を開け、振り返り彼女を見つめる。
「――っ! なんで見るのかな……。目を開けちゃだめって…………言ったじゃんか……」
「ばか……ばかばかばかばかばか…………ばか! この変態! 駄目人間! ばか! ばか…………」
「やだよ、もう……泣くに決まってるよ…………あなたのことが……今でも好きなんだから…………」
「今日だけで忘れるわけないじゃん……好きなんだよ…………ごまかせるわけないよ…………」
(泣きながら力なく話すようにお願いします)
「そのまま行ってくれたらよかったのに……。そしたら……わたしだけでよかったのに…………」
「あなたが優しいこと、わたしは知ってるんだから…………だから……分かるんだよ……」
「わたしが泣いたら……わたしが傷付いてるのを知ったら…………あなたはわたしを見捨てられなくなる、って」
「そんなズルみたいなこと…………わたしはしたくなかった……」
「そんなことしてまであなたを引き留めたくなかった…………なのに……なのに…………」
あなたは無言のまま、涙を浮かべて話す彼女を抱きしめる。
「なっ――だめだよ……抱きしめるなんて、そんな…………」
「もう、忘れられなくなっちゃうよ……あなたの好きな人に…………嫉妬しちゃうよ……」
「……離してよ、だめ……あなたは、好きな人と――――」
あなたは彼女を抱きしめたまま、そっと口付けを交わす。
「――っ?! んっ…………。っな、なんで…………」
「キスなんてされたら、また……期待しちゃうのに…………」
「それとも……その――また、期待してもいいの……かな」
「…………何か言ってよ」
「……っ…………今、ぎゅっ、て……また抱きしめてくれた?」
「やっぱり…………わたしのことが――好き?」
「まだわたし……あなたの彼女でいても――いい?」
あなたは彼女と、ゆっくりと唇を重ねる。
「んむっ……んっ、ん…………っ」
「…………んっ、………………はあっ、…………っふう」
「あなたが恋人で、よかった」
「――あなたを好きになって、本当に……よかった」