幽ちゃんのお願い
(右・通常)
もし・・・。
(左・通常)
もし・・・。
(右・通常)
起きて・・・。
(左・通常)
起きて下さい。
(右・通常)
ねえ、目を開けて・・・。
(左・通常)
もし・・・。
起きてくれないと・・・。
(右・接近)
金縛りにしちゃうんだから~!
(SE:固まる音)
(正位置・通常)
あ~、やっと起きてくれた。
良かった。
(右・通常)
あ、私の声だけじゃなく、姿も見えてるみたいですね。
(正位置・通常)
やっぱり思った通り。
家主さんとは、波長が合いそうな気がしてたんですよね。
(左・通常)
え?
家主さんって、アナタのことですよ。
だってアナタ、ここのお部屋の住人さんですよね。
じゃあ、家主さんじゃないですか。
(正位置・通常)
あ、申し遅れました。
自己紹介させて頂きますね。
(アイドル風に)
はい!
10年前からこのお部屋に取り憑いている、丑三つ時(うしみつどき)だけに会える地縛系幽霊。
呪って、金縛りって、驚かせちゃうぞ。
幽霊の幽ちゃん(ゆうちゃん)です!
(右・通常)
・・・あれ?
どうしました・・・?
テレビでアイドルの自己紹介を見て研究したんですけど・・・、変でしたか?
(正位置・通常)
あ、そっか。
金縛りのままでしたね。
それじゃあ、金縛りを解きますけど、逃げたりしないで下さいね。
あと、大声もダメですよ。
(左・耳元・小声で)
ご近所の迷惑ですから。
(正位置・通常)
では、金縛り・解除♪
(SE:金縛りが解ける音)
(正位置・通常)
うふ。
改めて、こんばんはです。
幽ちゃんです。
ん?
どうしましたか?
イヤですよ~、そんなに緊張しないで下さい。
そりゃあ私は、幽霊界の中では美少女の方ですけど、貞子さんや伽倻子さんみたいに有名じゃないし、怖くないし。
まあ、ちょっと可愛いかなってぐらいで、ホント。
(左・通常)
いや、だから、ホント、そんなに緊張されると困っちゃいます。
リラックスして下さい。
何しろ、家主さんとは
(左・接近)
同棲してる仲ですから。
(正位置・通常)
だって、そうじゃないですか。
家主さんが気が付いてなかっただけで、ずっと私達、このお部屋で一緒だったんですよ。
ええ、もちろんです。
当然、家主さんのあんなことや、こんなことをしてる姿も見てました。
(右・通常)
その、男の人って・・・、す、すごい・・・んですね・・・。
ここのお部屋、ずっと女性の家主さんばかりだったので、男性はアナタが初めてなんです。
だから、その・・・、初めて・・・見ちゃいました・・・。
だ、だから、あれですよ。
男性の・・・、その・・・、は・・・。
(右・接近)
・・・鼻毛を剃るとこ。
(正位置・通常)
ああ、恥ずかしいっ。
男性って、あんなことしてるんですね。
鼻毛を剃る時の、おマヌケなお顔と言ったら、もう。
私、あんなの見たくなかったです。
え?
用事ですか?
それはもちろん。
(左・接近)
呪うんですよ。
(正位置・通常)
うふ、うっそでーす。
私にはそんな力は無いです。
せいぜい金縛りとかラップ音を出すぐらいしか。
あ、そうそう、ラップ音は得意なんですよ。
最近はラップ音でビートを刻むのにハマってて、この前、家主さんのスマホに入っている音ゲーで高得点出しちゃいました。
えへ。
(右・通常)
そうですよ。
あの高得点、私です。
家主さんは、寝ぼけてプレイした時に出したのかな~って思ってたみたいですけど。
すごいでしょ、私。
(正位置・通常)
あ、話しがそれちゃいましたね。
用事というのはですね。
私、地縛霊なんですけど、そろそろ成仏しようかな~って思ってて。
それで、家主さんに成仏するお手伝いをして欲しいんです。
うふ、簡単ですよ。
耳かきさせて下さい。
(左・通常)
実は私、生前好きな人がいて、その人に耳かきして上げたかったんです。
でも、それを叶える前に私は死んでしまって。
(正位置・通常)
私、どうしても耳かきしたいんです。
分かってますよ?
家主さんは好きな人とは別人だってこと。
ホント、全っ然別人です。。
私が好きだった人は、もっとカッコ良くて、イケメンで、イケボで、最高に素敵な人でした。
ぶっちゃけ、家主さんとは月とスッポンです。
でも私、死んでからもう10年以上も経ってしまっているので、この際わがまま言ってる場合じゃないかなって。
だから、お願いします!
家主さんのお耳を耳かきさせて下さい!
(右に移動しながら・通常)
耳かきさせてくれないと~・・・。
(右・耳元)
毎晩、金縛りにして、眠らせないですよ~~。
(正位置・通常)
え?
いいんですか?
ありがとうございます。
(左・通常)
家主さんって、優しいんですね。