Track 4

左耳の耳かき

(右・通常) ええと、それでは家主さん。 反対を向いてもらっていいですか? (SE:寝返り・右耳が上から左耳が上) (右から左・通常) ひゃう!? (左・通常) あ、ご、ごめんなさい。 変な声を出しちゃって。 そ、その、くすぐったくて。 ええ? 幽霊だって、くすぐったいですよ~。。 確かに私は幽霊ですが、女の子なんですよ。 家主さん、分かってますか? え? 可愛い幽霊の女の子って・・・。 や、やだ、何言ってるんですか。 可愛いだなんて、そ、そんな分かり切ったこと。 あ~、そっか。 家主さんったら、私のこと、からかってるんでしょ。 んもう、金縛りにしちゃいますからね。 えい。 (SE:金縛りの音) ふぅ~。 もう~~。 私、そういうこと言われ慣れてないから、本当に困るんです。 だからもう言わないで下さいね。 絶対ですよ。 もし、またそういうことを言ったら・・・。 (左・接近) 末代まで呪いますよ。 (左・通常) うふ、分かってくれましたか? じゃあ、金縛りを解いて上げます。 えい。 (SE:金縛りが解ける音) それでは左耳の耳かきを始めますね。 じっとしてて下さ~い。 (耳かき開始) ん、ん。 いかがですか、私の耳かき。 先ほどの、右の耳かきで大分慣れましたから、さっきよりも上手にできてますよね。 (耳かき中) もし私が生きていたら、このお部屋で、こうやってカレシさんの耳かきをしたのでしょうか。 何だか不思議な気持ちです。 とはいえ、生前はカレシはいなかったですし、生きていてもカレシはできなかったかもしれませんから、こうして家主さんに耳かきを体験させてもらえて、ラッキーだったかもしれません。 ぶっちゃけ家主さんはイケメンじゃないし、私の好みのタイプでは全然ないのですが、こうしているとまんざらでもないような。 私、結構雰囲気に流されるタイプなのかもしれません。 死後10年にして、新たな自分の発見です。 (耳かき中) ん? 家主さん、どうされましたか? 何か言いたそうな気がしましたが。 ああ、私が死んだ理由ですか。 う~ん、それが覚えてないんですよ。 気がついたら、私は天井にふわふわ浮いていて、自分が寝ているを見下ろしていたんです。 よく分からないですけど、多分、寝てる間に病気か何かで死んだのだと思います。 一人暮らしって怖いですね。 家主さんも気をつけて下さいね。 迂闊に死んじゃうと、 (左・接近・怖い感じで) 私みたいに地縛霊になっちゃいますよ。 (耳かき中) うふふ。 耳かきって楽しいですね。 最初は緊張でドキドキしてたんですけど、慣れてくると楽しいです。 家主さんは、じっとしてないといけないから退屈ですよね。 そんなことないですか? そう言ってもらえると、嬉しいです。 えへへ。 家主さんは優しいんですね。 きっと素敵なカノジョができると思いますよ。 自信を持って下さい。 もし、家主さんを振るような女の子がいたら、その子は見る目がないんですよ。 そういう子は、あとで私が呪っておきますから。 うふ。 (耳かき中) もうちょっとで終わりそうです。 もう少しだけ、じっとしてて下さいね。 (耳かき中) ・・・んっと。 はい。 では、梵天で細かい耳垢を掻き出します。 (左・接近) もう少しですからね。 (SE:梵天の音) (左・通常) うふふ。 気持ちいいですか? (SE:梵天の音) (左・通常) ごそごそ。 (SE:梵天の音) (左・接近) 家主さん。 1度、ふ~~ってしますね。 ふ~~~。 ふ~~~。 ん~~。 (左・通常) もう少し、梵天しますね。 (SE:梵天の音) これが終わったら、お別れですね。 ちょっと・・・、寂しいです。 (SE:梵天の音) うん。 (左・接近) ふ~~しますよ。 ふ~~~。 ふ~~~。 ふ~~~。 ふ~~~。 (左・接近から通常) はい、 (左・通常) おしまいです。 上を向いて下さい。 (SE:寝返り・左耳が上から顔が上向き) (正位置・通常) えへ。 最期だから、いっぱいふ~しちゃいました。 気持ち良かったですか? あは、良かった~。