左耳の耳かき
(右・通常)
ええと、それでは家主さん。
反対を向いてもらっていいですか?
(SE:寝返り・右耳が上から左耳が上)
(右から左・通常)
ひゃう!?
(左・通常)
あ、ご、ごめんなさい。
変な声を出しちゃって。
そ、その、くすぐったくて。
ええ?
幽霊だって、くすぐったいですよ~。。
確かに私は幽霊ですが、女の子なんですよ。
家主さん、分かってますか?
え?
可愛い幽霊の女の子って・・・。
や、やだ、何言ってるんですか。
可愛いだなんて、そ、そんな分かり切ったこと。
あ~、そっか。
家主さんったら、私のこと、からかってるんでしょ。
んもう、金縛りにしちゃいますからね。
えい。
(SE:金縛りの音)
ふぅ~。
もう~~。
私、そういうこと言われ慣れてないから、本当に困るんです。
だからもう言わないで下さいね。
絶対ですよ。
もし、またそういうことを言ったら・・・。
(左・接近)
末代まで呪いますよ。
(左・通常)
うふ、分かってくれましたか?
じゃあ、金縛りを解いて上げます。
えい。
(SE:金縛りが解ける音)
それでは左耳の耳かきを始めますね。
じっとしてて下さ~い。
(耳かき開始)
ん、ん。
いかがですか、私の耳かき。
先ほどの、右の耳かきで大分慣れましたから、さっきよりも上手にできてますよね。
(耳かき中)
もし私が生きていたら、このお部屋で、こうやってカレシさんの耳かきをしたのでしょうか。
何だか不思議な気持ちです。
とはいえ、生前はカレシはいなかったですし、生きていてもカレシはできなかったかもしれませんから、こうして家主さんに耳かきを体験させてもらえて、ラッキーだったかもしれません。
ぶっちゃけ家主さんはイケメンじゃないし、私の好みのタイプでは全然ないのですが、こうしているとまんざらでもないような。
私、結構雰囲気に流されるタイプなのかもしれません。
死後10年にして、新たな自分の発見です。
(耳かき中)
ん?
家主さん、どうされましたか?
何か言いたそうな気がしましたが。
ああ、私が死んだ理由ですか。
う~ん、それが覚えてないんですよ。
気がついたら、私は天井にふわふわ浮いていて、自分が寝ているを見下ろしていたんです。
よく分からないですけど、多分、寝てる間に病気か何かで死んだのだと思います。
一人暮らしって怖いですね。
家主さんも気をつけて下さいね。
迂闊に死んじゃうと、
(左・接近・怖い感じで)
私みたいに地縛霊になっちゃいますよ。
(耳かき中)
うふふ。
耳かきって楽しいですね。
最初は緊張でドキドキしてたんですけど、慣れてくると楽しいです。
家主さんは、じっとしてないといけないから退屈ですよね。
そんなことないですか?
そう言ってもらえると、嬉しいです。
えへへ。
家主さんは優しいんですね。
きっと素敵なカノジョができると思いますよ。
自信を持って下さい。
もし、家主さんを振るような女の子がいたら、その子は見る目がないんですよ。
そういう子は、あとで私が呪っておきますから。
うふ。
(耳かき中)
もうちょっとで終わりそうです。
もう少しだけ、じっとしてて下さいね。
(耳かき中)
・・・んっと。
はい。
では、梵天で細かい耳垢を掻き出します。
(左・接近)
もう少しですからね。
(SE:梵天の音)
(左・通常)
うふふ。
気持ちいいですか?
(SE:梵天の音)
(左・通常)
ごそごそ。
(SE:梵天の音)
(左・接近)
家主さん。
1度、ふ~~ってしますね。
ふ~~~。
ふ~~~。
ん~~。
(左・通常)
もう少し、梵天しますね。
(SE:梵天の音)
これが終わったら、お別れですね。
ちょっと・・・、寂しいです。
(SE:梵天の音)
うん。
(左・接近)
ふ~~しますよ。
ふ~~~。
ふ~~~。
ふ~~~。
ふ~~~。
(左・接近から通常)
はい、
(左・通常)
おしまいです。
上を向いて下さい。
(SE:寝返り・左耳が上から顔が上向き)
(正位置・通常)
えへ。
最期だから、いっぱいふ~しちゃいました。
気持ち良かったですか?
あは、良かった~。