Track 3

右耳の耳かき

(正位置・通常) それでは耳かきを始めますね。 まずは右耳から始めましょうか。 家主さん、すみませんが、右耳が上になるようにお願いします。 (SE:寝返り・右耳が上) (右・通常) はい、ありがとうございます。 (ぎこちない喋り方) そ、それでは・耳かき・始めます。 え? き、緊張とかしてないし。 だ、大丈夫です。 地縛ってる間、ずっと耳かきのイメトレしてましたから! 完璧です! 家主さんは安心して私に任せてて下さい。 それでは。 行きます。 (耳かき開始) (SE:耳かき音) (右・通常) 大丈夫ですかー。 痛くないですよねー。 (耳かき中) ふう。 思ってたより、人の耳の穴って小さいんですね。 難しいです。 いえ、お気遣いなく。 成仏するためにも、最後までしっかりやらさせてもらいますから。 (耳かき中) (右・接近) す~は~、す~は~、す~は~、す~は~。 (右・通常) え? また息遣いが怖いですか? うう、仕方ないじゃないですか。 今、緊張してるんです。 あんまりごちゃごちゃ言わないで下さい。 また金縛りにしちゃいますよ。 (耳かき中) (右・通常) ん? 今度は何ですか? 私の膝枕がひんやりしてる・・・? そうですね、幽霊ですから。 なぜだかは分からないんですけど、昔から幽霊は冷たいみたいです。 夏はいいですよね。 天然クーラーみたいでしょ? うふふ。 あ、そう言えば、貞子さんが言ってました。 心霊スポットに行くと、ひんやりするのって、そういうことなんだよって。 貞子さんは大先輩なので、色々と教えて頂きたいんですけど、あの方はお忙しいので。 ほら、呪った相手にイタ電とか、10日後きっかりにお迎えに行くとか。 そういうので大変みたいです。 (手を止めて) (右・接近) ここだけの話しですよ。 以前、スケジュール帳を見せてもらったことあるんですけど、呪いの予定でびっしりでした。 (耳かき再開) (右・通常) すごいですよねえ、貞子さん。 私なんて、耳かきのイメトレしたり、アイドルの歌の振り付けを覚えたりとか、たまに家主さんの持ち物をこっそり隠したりとか。 その程度で、恥ずかしいです。 あ、気が付いてなかったですか? この前、メガネが無い!って言ってたでしょ? あれ私の仕業です。 ん、でも、ちゃんとすぐに返したじゃないですか、机の横に。 だって、暇だったんです。 地縛霊ってどこにも行けないから、言ってみたら強制ニートですよ? いたずらの1つや2つ、許して欲しいです。 (耳かき中) あ、家主さん。 動かないで下さいね。 今、微妙なところなんです。 危ないですから。 あんまり動くようだと、また金縛りしちゃいますよ。 (耳かき中) う~ん。 耳かきって思ってたよりも難しいですね。 もっと簡単なものだと思ってました。 あの、家主さん、痛かったりしませんか? 大丈夫ですか? あは、良かった。 もうちょっとで終わりますからね。 (耳かき中) うん・・・っと。 大体、キレイになりました。 それでは細かい耳垢は、ふわふわした梵天というもので取り除きます。 家主さん、もうちょっとですから、じっとしてて下さいね。 (SE:梵天の音) うふふ。 梵天、好きですか? ふわふわで耳の中をゴソゴソされるのって気持ちいいですよね。 (SE:梵天の音) ん~~。 (右・接近しながら) どれどれ。 (右・接近) ふ~~~。 ふ~~~。 んん、もうちょっとかしら。 (SE:梵天の音) (右・通常) ごそごそ~っと。 はい。 では、もう1度、ふーふーします。 (右・接近) ふ~~~。 ふ~~~。 (右・通常) ん? どうしましたか? え? 息が冷たくて、ゾクゾクする? 幽霊だから仕方ないですよ。 それぐらい我慢して下さい。 (右・接近) ふ~~~。 ふ~~~。 ふ~~~。 (右・通常) はい。 こちらのお耳は終わりです。 いかがでしたか、私の耳かき。 気持ち良かったですか? あは。 良かった~。 下手クソって言われたらどうしようかと、ちょっと不安だったんです。 それじゃあ、反対のお耳も耳かきさせてもらえますよね? あは、ありがとうございます。 幽ちゃん、頑張りますね!