1-B. 来訪者(短縮版)
(ピンポーン)
晴れた日の休日、昼下がり。
集合住宅の一室である、我が家のインターホンが鳴る。
扉を開けると、隣の部屋の人妻、佐渡さんが微笑んでいた。
「ふふ、こんにちは。よろしければ、これから私の部屋に『遊び』に来ません?」
その優しい笑顔に、思わず身体がぞくぞくっと震え、
そのまま、はい、と声が出てしまう。
もう彼女の言葉に逆らう事はできない。
これまでに何度も、彼女の部屋で『遊び』を繰り返している。
その度に暗示が深く、深く刻まれていく。
彼女に付けられた暗示という名の首輪は、決して外れない。
彼女の部屋の玄関をくぐる。
胸いっぱいに優しいお香の香りが広がり、
少し遅れて鼻に甘い刺激を与えてくる匂いの存在を感じる。
その匂いで頭にもやがかかっていくような感覚を覚え、
心の奥にしまっていた感情がぞくぞくと呼び覚まされる。
「ふふふ、どうしました?大丈夫ですよ、今からゆっくり思い出していきましょうね。
ほら、こちらへ…貴方の大好きな、ふかふかのソファへどうぞ」