隷属
真っ暗になった意識に、ご主人様の声が響き渡る。
「ふふ、気持ちよかった?貴方、気に入ったわ。
だから、今から暗示という名の首輪を付けてあげる。
貴方はこれからも、普段は今まで通りに過ごすの…
でも、私の部屋に入って匂いを嗅ぐと頭の中にもやがかかって、
私がご主人様であるという事をぼんやりと思い出す。
そしたらいっぱい命令して躾け直して、
貴方をすぐに従順な私のワンちゃんに戻してあげるから。
貴方はもう、この歪んだ快楽を絶対に忘れられないの。分かった?
ほら、今の暗示を貴方の心の奥底に、しっかりと刻み込んでおきなさい」
心の一番奥にご主人様の言葉がすーっと入り込み、鎖となって繋がれる。
それはまさに、目に見えない首輪そのものだった。
「じゃあ、そろそろ目を覚ましましょうか。
ふふ、お部屋は全部片付けておきましたから、大丈夫ですよ。
ここで起こった事は忘れて、すっきりと目覚めましょう。
5つ数えて手を叩くと、貴方はこの部屋で起きた出来事を忘れて、目を覚まします。
いーち 身体の疲れが、自然と抜けていく
にーい 少しずつ、力が入るようになってくる
さーん 頭の中も、青空のようにすっきりとして
しーい いつもより爽快な気分で、目覚める事ができますよ
ごー それでは、おはようございます(ぱんっ)」
ふっ と、目が開く。
ソファの上で、また眠ってしまっていたようだ。思わずぐーっと、伸びをする。
「おはようございます、お疲れの所、お付き合い下さりありがとうございました。
ふふ、是非またお話しましょうね。私、とても楽しかったですよ。」
夢を見ていたような気がするが、あまりよく覚えていない。
けれど、彼女ととても幸せな時間を過ごしていた気もする。
彼女に少し申し訳なく思いながら、部屋を後にする。
外はもう、日が落ち始めている。
鼻から空気を吸い、口から大きく息を吐き、すっきりした気分で
隣の部屋、自分の家へ戻る。
誰にも見える事のない、首輪を付けられたまま。