Track 2

お紺の洗濯屋さん

:環境音 FI 蝉しぐれ ;SE  ;ブザー音→バスドア閉まる↓ ;バス走行音FO→アスファルト歩く足音数秒→激しい雷(*) ;;*の激雷は、Tr0でお紺が屋内で聞いたものと同じ ;環境音 蝉しぐれFO 豪雨FI ;SE 豪雨の中を走る足音→一瞬立ち止まる→ ;短い距離を駆けて→ :SE 激しいノック ;(間・数秒) ;SE 激しいノック ;9(扉越し)  「はい……どなたでしょう? 旅のお方でしょうか?」 :SE ドア開(横開きの木戸) ;9 「あぁ……ひどく降られてしまったのですね。 いきなりの夕立ですものね」 「おあがりください。どうぞ、中に。 困ったときはお互いさまです。ご遠慮なさらず」 ;SE ドア閉め(環境音ボリュームダウン) ;10 「少しだけお待ちになってね? すぐに、湯上がり手ぬぐいをお持ちしますから」 ;SE タンス引き出し→引き出し閉じる :1 「おまたせしました。お拭きしましょう。 ね? 旅の方。 頭をすこぉし、どうか、下げてくださいな」 「いえいえ、ご遠慮は不要です。 ここはもとより、“洗濯屋”。 お迎えすることも、お洗濯も、 お紺の――わたしのお仕事ですから」 「さ、どうぞ? ね? すこぉしだけ頭を下げて」 「――ありがとうございます。 それでは、お拭きいたしますね?」 「ん……<SE タオルで頭をふく>……ん…… (呼吸音)……こんなに濡れて…………(呼吸音)」 「……んっ……(呼吸音)……。 うん。後ろ頭もお拭きしましょう。 ね? 旅の方――きゃっ!?」 「あ……いえ、少し驚いただけ…… 大きなくしゃみ。 お体、冷えてしまったんですね」 「このままですと、お風邪をひいてしまいます。 お着替えの方が先ですね。 ああ、気の効かない洗濯狐ですみません」 「すぐに浴衣をお持ちしましょう。 乾いた浴衣をお貸ししますから―― ですから、その間に、ね?」 ;SE タオル渡す。ぽふっ 「どうぞ、この湯あがりてぬぐいで、 うしろあたまとお体の、雨をおぬぐいくださいな」 ;SE タオルで体をふく :16(マイクと逆向き) ;SE 引き出し開け 「浴衣、浴衣――ん……」 :16マイク向き 「ね! 旅の方、お好きな色って――きゃあっ!」 :16マイク逆向き 「い、いえ――お紺こそ、失礼いたしました。 急に、振り返ってしまったりして…………はうっ」 ;ぼそっと。静岡弁(ああ、恥ずかしいの意) 「ああ、てーさいのわりーことぉ――えっ!?」 「いえいえ、お紺は、別に、なんにも。 なんにもいってございませんよ? おほほほほ」 「それより! えと、あのっ、お体――あ、よかった。 でしたら、ね? こちら、浴衣」 ;8 マイク逆向き 「どうぞ、遠慮なくお着替えください。 お紺と同じお名前の――うふふっ、紺色の浴衣です」 「濡れてしまったものは、残らずお預かりさせてください。 囲炉裏に火を起こして、干して乾かしてしまいましょう」 ;環境音。焚き木、パチ、パチ。→フェードでボリューム絞る ;9逆向き ;濡れた服を絞る 「ん……」 ;SE 水滴落ちる 「ん――んっ……ふっ――」 ;SE 水滴 「うんっ」 ;SE 洗濯物を振って伸ばす。パンっ! 「ふぅ……こんなものでしょうか? 絞っても絞っても、冷たい水が次から次に…… これでは旅の方、すっかり冷えてしまいましたよね」 「ここに干せば――よいしょ―― 二、三刻(とき)もせず乾きましょう。 ああ、いけない。 すっかり旅の方をおまたせしてしまいました」 ;9(正常) 「いかがですか、お着替え――あら」 「あ…………」 「ああ、いえ、よくお似合いで…… とてもお似合いで、つい―― その、少し懐かしくなってしまって」 「その浴衣。お紺の父様(ととさま)のものだったんです。 それで、つい―― けれど……少し、ふしぎです」 「……旅のお方と、父様と。 お顔、少しも似てませんのに――あ」 「いやだ、お髪(ぐし)―― 旅の方の髪の毛、まだ濡れたままではないですか」 ;1 「いますぐにお拭き――ああ、いえ。 せっかくです、ね? 旅の方」 「ここはお紺に、 こころとからだを、こぉんとおあずけくださいませんか?」 「え? あら、いやだ。 『ぽぉん』だなんて、縁起でもない。 『こぉん』ですよ? 『こぉん』」 「だって――うふふっ、お紺は、洗濯狐ですから!」 ;環境音 焚き火F.O.