Track 5

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添い寝は添い寝

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 05.添い寝は添い寝 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ //【7】横に寝ています。腕枕。 //ムードある静かな会話です。 【瑠奈々】 「ワイシャツのまま寝ちゃって、良かったの?」 【瑠奈々】 「えっとね……実は知ってるのよ。  女性が男物のワイシャツを着ているのが好きな人がいるって」 【瑠奈々】 「さりげなくそういう流れにするから、  それなりにチャンスはあるのかな、なんて……」 【瑠奈々】 「……そんなふうに思ったの」 【瑠奈々】 「ふふっ、図星」 【瑠奈々】 「おんぶされて、腕枕されて、お泊りして……」 【瑠奈々】 「なんか、私でもまだいけるって思えてくる」 【瑠奈々】 「全然いける? 本当に?」 【瑠奈々】 「嬉しいこと言ってくれるのね」 【瑠奈々】 「素直に言ったの?  じゃあ、私も……」 【瑠奈々】 「……好きよ」 【瑠奈々】 「ふふっ、ニヤニヤしてる。  そういう顔、見たことないから新鮮」 【瑠奈々】 「そのまま返すって、当たり前でしょう?」 【瑠奈々】 「冷静に考えてみて欲しいわ。  私が会社でこんな姿見せると思う?」 【瑠奈々】 「……貴方だけよ。  こんな私でいられるの」 【瑠奈々】 「……なんか、おかしいわね」 【瑠奈々】 「だって、数時間前までは、  ただの上司と部下よ?」 【瑠奈々】 「それがこうやって、添い寝してる」 【瑠奈々】 「あらためて、不思議に感じてるの」 【瑠奈々】 「そして、幸せに感じてるの……」 【瑠奈々】 「……それにしても貴方、  手、出さないのね」 【瑠奈々】 「下心なしで助けに来てくれたのよね。  ええ、わかってる」 【瑠奈々】 「私も正直、それはさすがに怖いところがあるの」 【瑠奈々】 「あー……安心して?」 【瑠奈々】 「ま・だ・よ?  私」 【瑠奈々】 「恋は始まったばかりなの。  焦ることはないでしょ?」 【瑠奈々】 「いっぺんにこなしたら、もったいないの」 【瑠奈々】 「ね、わかるでしょ?」 【瑠奈々】 「それとも、こうしているだけじゃ物足りない?」 【瑠奈々】 「ふふっ、満足させられているのね、私」 【瑠奈々】 「静かなのね、ここ」 【瑠奈々】 「ええ、貴方の鼓動が聞こえるくらい」 【瑠奈々】 「けれど……あまりドキドキしてないのね」 【瑠奈々】 「どっちかっていうとまったり?  そうね。穏やかな時間だわ」 【瑠奈々】 「……ねぇ」 【瑠奈々】 「瑠奈々って呼んでみて」 【瑠奈々】 「なんでって、呼んで欲しいからよ」 【瑠奈々】 「それとも呼びづらい?  地味にキラキラネームよね、私の名前」 【瑠奈々】 「るな、でも、なな、でもいいのに」 【瑠奈々】 「ほら、呼んでみて」 【瑠奈々】 「ふふっ。  な・あ・に?」 【瑠奈々】 「うそうそ。  呼んでっていったの、私よね」 【瑠奈々】 「えっ、今のよかったの?  ……じゃあ今日はもう言わないでおくわ」 【瑠奈々】 「だって、何回もすると飽きられるもの」 【瑠奈々】 「あ……それは嫌。  腕枕はお泊りのたびにしてもらいたいわ」 【瑠奈々】 「飽きるわけないでしょ?  こんな素敵なこと」 【瑠奈々】 「映画とか観ているとね、  そんなにいいもの~? とか思ってたの」 【瑠奈々】 「くすっ、私が間違っていたわ。  ああ、世間知らずだった、のほうが正しいかしら」 【瑠奈々】 「だって、こんなに心が満たされるんだもの」 【瑠奈々】 「なんか素っ気ないわね。  腕枕するのは嫌なの?」 【瑠奈々】 「そうじゃないって、じゃあどうなの?」 【瑠奈々】 「実はまだ信じられないってなにが?」 【瑠奈々】 「……私が彼女になったこと?」 【瑠奈々】 「……ええ、私は貴方の彼女よ?  貴方が拒まなければ、だけれど」 【瑠奈々】 「ふふっ、髪を撫でられるのほんといいわね。  なんか、いろんな気持ちが溢れちゃう」 【瑠奈々】 「今日の嫌な事なんか、全部吹き飛んだわ」 【瑠奈々】 「え? 財布の中身?」 【瑠奈々】 「それほどもっていなかったわ。  ちょうどコンビニで、携帯代を払ったあとだったから」 【瑠奈々】 「それよりも、バッグがお気に入りだったのよ。  限定品だったのに」 【瑠奈々】 「ま……仕事を頑張ってまた買うわ。  自分へのご褒美」 【瑠奈々】 「い、いいわよ、買ってくれなくても」 【瑠奈々】 「っていうかこの流れでそんなふうに言われたら、  まるで私がねだったみたいじゃない」 【瑠奈々】 「そういうのはいいの。  気持ちは嬉しいけれど」 【瑠奈々】 「もしも貴方が三畳一間のアパートで、  晩御飯が毎日カップ麺だったとしても……」 【瑠奈々】 「貴方がこうして腕枕してくれるなら、  私はそれで幸せだから」 【瑠奈々】 「……変な例えだったかしら」 【瑠奈々】 「ふふっ、けれど私の想いは伝わったでしょ?」 【瑠奈々】 「ふぁ……やっぱいいわね。  ……髪、撫で続けてくれる?」 【瑠奈々】 「私も撫でてあげたいけれど、  それは今度でもいいかしら」 【瑠奈々】 「ええ、耳掃除とか膝枕とか、お風呂で背中を流すとか」 【瑠奈々】 「少しずつだけれど、私がしてあげるわ」 【瑠奈々】 「してあげる、のほうがいいんでしょ? 貴方」 【瑠奈々】 「ええ、してあげたいの。  だから、期待して待っていてね」 【瑠奈々】 「……ふふっ、あったかい」 【瑠奈々】 「そうだ、さっきちょっと冷蔵庫を開けちゃったの」 【瑠奈々】 「卵とベーコンがあったわね」 【瑠奈々】 「コンロとフライパンはあったし、  包丁がなくてもベーコンエッグは作れるわね」 【瑠奈々】 「飲み物はそこにあったインスタントコーヒーでいいかしら」 【瑠奈々】 「えっ、冷凍庫に食パンがあるの?  じゃあそれも焼くわね」 【瑠奈々】 「なによ、料理くらいできるわよ?」 【瑠奈々】 「仕事も私生活も、だらしなくするのは嫌なの」 【瑠奈々】 「あら、貴方はだらしないの?」 【瑠奈々】 「ふふっ、じゃあオフでもその部分は厳しくいくわね」 【瑠奈々】 「……ねえ。  本当に、またここへ来てもいいの……?」 【瑠奈々】 「さっきの貴方とおなじ。  実は私もまだちょっと信じられないの」 【瑠奈々】 「あっ……ふふっ。  やっぱり髪を撫でられるのは好き」 【瑠奈々】 「とても心のこもった返事だわ」 【瑠奈々】 「ほんと、今日はいろいろあったわね……」 【瑠奈々】 「……ありがとう」 【瑠奈々】 「そして……これからよろしくお願いします」 【瑠奈々】 「ふふっ」 //トラック05 おわり

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