添い寝は添い寝
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05.添い寝は添い寝
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//【7】横に寝ています。腕枕。
//ムードある静かな会話です。
【瑠奈々】
「ワイシャツのまま寝ちゃって、良かったの?」
【瑠奈々】
「えっとね……実は知ってるのよ。
女性が男物のワイシャツを着ているのが好きな人がいるって」
【瑠奈々】
「さりげなくそういう流れにするから、
それなりにチャンスはあるのかな、なんて……」
【瑠奈々】
「……そんなふうに思ったの」
【瑠奈々】
「ふふっ、図星」
【瑠奈々】
「おんぶされて、腕枕されて、お泊りして……」
【瑠奈々】
「なんか、私でもまだいけるって思えてくる」
【瑠奈々】
「全然いける? 本当に?」
【瑠奈々】
「嬉しいこと言ってくれるのね」
【瑠奈々】
「素直に言ったの?
じゃあ、私も……」
【瑠奈々】
「……好きよ」
【瑠奈々】
「ふふっ、ニヤニヤしてる。
そういう顔、見たことないから新鮮」
【瑠奈々】
「そのまま返すって、当たり前でしょう?」
【瑠奈々】
「冷静に考えてみて欲しいわ。
私が会社でこんな姿見せると思う?」
【瑠奈々】
「……貴方だけよ。
こんな私でいられるの」
【瑠奈々】
「……なんか、おかしいわね」
【瑠奈々】
「だって、数時間前までは、
ただの上司と部下よ?」
【瑠奈々】
「それがこうやって、添い寝してる」
【瑠奈々】
「あらためて、不思議に感じてるの」
【瑠奈々】
「そして、幸せに感じてるの……」
【瑠奈々】
「……それにしても貴方、
手、出さないのね」
【瑠奈々】
「下心なしで助けに来てくれたのよね。
ええ、わかってる」
【瑠奈々】
「私も正直、それはさすがに怖いところがあるの」
【瑠奈々】
「あー……安心して?」
【瑠奈々】
「ま・だ・よ?
私」
【瑠奈々】
「恋は始まったばかりなの。
焦ることはないでしょ?」
【瑠奈々】
「いっぺんにこなしたら、もったいないの」
【瑠奈々】
「ね、わかるでしょ?」
【瑠奈々】
「それとも、こうしているだけじゃ物足りない?」
【瑠奈々】
「ふふっ、満足させられているのね、私」
【瑠奈々】
「静かなのね、ここ」
【瑠奈々】
「ええ、貴方の鼓動が聞こえるくらい」
【瑠奈々】
「けれど……あまりドキドキしてないのね」
【瑠奈々】
「どっちかっていうとまったり?
そうね。穏やかな時間だわ」
【瑠奈々】
「……ねぇ」
【瑠奈々】
「瑠奈々って呼んでみて」
【瑠奈々】
「なんでって、呼んで欲しいからよ」
【瑠奈々】
「それとも呼びづらい?
地味にキラキラネームよね、私の名前」
【瑠奈々】
「るな、でも、なな、でもいいのに」
【瑠奈々】
「ほら、呼んでみて」
【瑠奈々】
「ふふっ。
な・あ・に?」
【瑠奈々】
「うそうそ。
呼んでっていったの、私よね」
【瑠奈々】
「えっ、今のよかったの?
……じゃあ今日はもう言わないでおくわ」
【瑠奈々】
「だって、何回もすると飽きられるもの」
【瑠奈々】
「あ……それは嫌。
腕枕はお泊りのたびにしてもらいたいわ」
【瑠奈々】
「飽きるわけないでしょ?
こんな素敵なこと」
【瑠奈々】
「映画とか観ているとね、
そんなにいいもの~? とか思ってたの」
【瑠奈々】
「くすっ、私が間違っていたわ。
ああ、世間知らずだった、のほうが正しいかしら」
【瑠奈々】
「だって、こんなに心が満たされるんだもの」
【瑠奈々】
「なんか素っ気ないわね。
腕枕するのは嫌なの?」
【瑠奈々】
「そうじゃないって、じゃあどうなの?」
【瑠奈々】
「実はまだ信じられないってなにが?」
【瑠奈々】
「……私が彼女になったこと?」
【瑠奈々】
「……ええ、私は貴方の彼女よ?
貴方が拒まなければ、だけれど」
【瑠奈々】
「ふふっ、髪を撫でられるのほんといいわね。
なんか、いろんな気持ちが溢れちゃう」
【瑠奈々】
「今日の嫌な事なんか、全部吹き飛んだわ」
【瑠奈々】
「え? 財布の中身?」
【瑠奈々】
「それほどもっていなかったわ。
ちょうどコンビニで、携帯代を払ったあとだったから」
【瑠奈々】
「それよりも、バッグがお気に入りだったのよ。
限定品だったのに」
【瑠奈々】
「ま……仕事を頑張ってまた買うわ。
自分へのご褒美」
【瑠奈々】
「い、いいわよ、買ってくれなくても」
【瑠奈々】
「っていうかこの流れでそんなふうに言われたら、
まるで私がねだったみたいじゃない」
【瑠奈々】
「そういうのはいいの。
気持ちは嬉しいけれど」
【瑠奈々】
「もしも貴方が三畳一間のアパートで、
晩御飯が毎日カップ麺だったとしても……」
【瑠奈々】
「貴方がこうして腕枕してくれるなら、
私はそれで幸せだから」
【瑠奈々】
「……変な例えだったかしら」
【瑠奈々】
「ふふっ、けれど私の想いは伝わったでしょ?」
【瑠奈々】
「ふぁ……やっぱいいわね。
……髪、撫で続けてくれる?」
【瑠奈々】
「私も撫でてあげたいけれど、
それは今度でもいいかしら」
【瑠奈々】
「ええ、耳掃除とか膝枕とか、お風呂で背中を流すとか」
【瑠奈々】
「少しずつだけれど、私がしてあげるわ」
【瑠奈々】
「してあげる、のほうがいいんでしょ? 貴方」
【瑠奈々】
「ええ、してあげたいの。
だから、期待して待っていてね」
【瑠奈々】
「……ふふっ、あったかい」
【瑠奈々】
「そうだ、さっきちょっと冷蔵庫を開けちゃったの」
【瑠奈々】
「卵とベーコンがあったわね」
【瑠奈々】
「コンロとフライパンはあったし、
包丁がなくてもベーコンエッグは作れるわね」
【瑠奈々】
「飲み物はそこにあったインスタントコーヒーでいいかしら」
【瑠奈々】
「えっ、冷凍庫に食パンがあるの?
じゃあそれも焼くわね」
【瑠奈々】
「なによ、料理くらいできるわよ?」
【瑠奈々】
「仕事も私生活も、だらしなくするのは嫌なの」
【瑠奈々】
「あら、貴方はだらしないの?」
【瑠奈々】
「ふふっ、じゃあオフでもその部分は厳しくいくわね」
【瑠奈々】
「……ねえ。
本当に、またここへ来てもいいの……?」
【瑠奈々】
「さっきの貴方とおなじ。
実は私もまだちょっと信じられないの」
【瑠奈々】
「あっ……ふふっ。
やっぱり髪を撫でられるのは好き」
【瑠奈々】
「とても心のこもった返事だわ」
【瑠奈々】
「ほんと、今日はいろいろあったわね……」
【瑠奈々】
「……ありがとう」
【瑠奈々】
「そして……これからよろしくお願いします」
【瑠奈々】
「ふふっ」
//トラック05 おわり