7.【おまけ2】事務的メイドさんとの出会い
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…………。
……あなたは、どなたですか?
……この辺りの、近所に住んでいるお方なのですか。
……いえ。わたくしは……ここでただ、雨宿りをしているだけです。
……はい。確かに、今は深夜ですが……わたくしには、帰るところが、ありませんから。
……いえ。どこにも、ありません。
……わたくしには、何もないのです。家も……家族も。
なくなってしまったのです。
……わたくしは、このような、性格ですから。
何も感じず、何も考えていないと、周囲から見られていたようで……
……気付けば忘れられて、捨て去られてしまいました。
……あなたにもきっと、あまり伝わっていないと思いますが。
…………。
……あの?
その手は……なんなのでしょうか。
……あなたの、家に? わたくしが?
……それは、わたくしを、誘拐するということでしょうか。
……そうではなく?
メイドとして、雇っていただけるのですか?
…………。
……はい。分かりました。
どのみち、わたくしには、行くところがありませんから。
あなたが悪い人だった場合は、わたくしに運がなかっただけのお話です。
……はい。よろしくお願いします。
あなたが、いい人であることを祈っています。
……はい。なんでしょうか?
わたくしの名前、ですか?
…………。
楓(かえで)、と。
お呼びください。
――ご主人様。