File1-1・新たな被験体の追加
■01
[放課後の部室]
(主人公の提出したレポートをチェックする望愛)
【望愛】ふむふむ、なるほど……
【望愛】ふふ、そんなに良かったのかい?全く君は……
(レポートを閉じる)
【望愛】ふぅ……しかし君のレポート、最近では一体どういうことを書いてくるのか、何となく分かるようになった気がするよ。
【望愛】君の好きな事、君の好きな僕の事、少しずつ理解が進んでいるという証だね。
【望愛】恋人同士というのは、こういうものなのかな。
【望愛】でも、いいレポートだ。受け取っておくよ。
【望愛】しかし、こうやって君と活動するようになって、もう結構になるね。
【望愛】そろそろ、頃合いだと思うんだ。
(主「頃合いというと?」)
【望愛】ああ。一つ、僕は君に伝えなければならないことがあるんだ。
【望愛】それはね……(今後の恋研のことや引き継ぎに関することを告げようとする望愛)
(望愛の言葉を遮るように、扉が開く音がする)
(扉を開け、望愛を指差す七希)
【七希】あ、いた!やっと見つけましたよ、部長さん!
【望愛】……ん、なんだい、お客さんかい?
【七希】はい、私、東雲七希、1年です!
【望愛】七希君……だね。えっと、君とはどこかで会ったことがあったかな。
【七希】あ、いえ。自分は部長さんに一目惚れして会える機会を伺ってただけなので、部長さんは知らなくても当然です。
【望愛】一目惚れ……なるほど。これはまた面白いことになりそうだね。
【望愛】そんなところではなんだし、こちらのソファに座るといい。お茶でも飲むかい?今日のお茶菓子は一口モナカだよ
【七希】はい、ありがとうございます!
(促されてソファに座る七希)
【望愛】それで、ここまで来たってことは、君は入部希望者なのかな。
【七希】そう……ですね。はい。入部希望です。
【望愛】なるほど……だけど、今の恋研には僕と彼の二人だけ。
【望愛】三人だとバランスが……いや、でもこれはこれで新たな可能性が……(独り言っぽく)
【七希】部長さん、どうしたんですか?
【望愛】ああ、いや、なんでもないよ。
【望愛】ただ、もう一人部員がいると、カップルがもうひと組作れてちょうどいいかなと思ったのさ。
【七希】それって、私と誰かってことですか?
【望愛】ああ、そのつもりだけど。
【七希】それは遠慮しておきます。私は部長さんが好きなので、部長さんと一緒がいいです!
【望愛】おやおや。こんなに熱いラブコールを送られるなんてね。
【望愛】そもそも、君はどうしてこの恋研に興味を持ったんだい?部員募集のチラシは期限が切れてたから片付けたはずだけど……
【七希】……実はこの前、私、たまたまこの部室の外を通りかかったんです。
【七希】その時、部屋の中に誰かがいるようだったので、そこのカーテンの隙間からこっそり覗かせてもらったんですけど……
【七希】この先輩が部長さんの耳元で何かをしてるのを目撃してしまったんです。
【七希】その時の部長の表情がホントに可愛くて……私、その場で恋に落ちてしまいました。
【望愛】それはまた……恥ずかしい場面を見られてしまっていたようだね……
【望愛】きっとそれは、彼に耳を舐められてた時かな。
【七希】耳を……ですか?
【望愛】ああ、恋研では、恋人たちが互いに愛を深め合う方法や、それに際しての感じ方、心の変化なんかの研究をしているんだよ。
【望愛】もちろん、不純異性交遊に当たらない範囲で、だけどね。
【七希】ということは、部長さんとこの先輩は恋人同士、なんですか?(少し残念そうに)
【望愛】そうだね……一応は、だけど。
【七希】一応?
【望愛】ああ、これは活動の、研究のための仮の関係なんだよ。
【望愛】さっきも言ったように現在の恋研の部員は僕ら二人だから、擬似的なカップルを組んで色々とシミュレーションを行なって、それをレポートにまとめているんだ。
【望愛】だから「恋人同士か」という質問への答えはイエスでもあり、ノーでもあるということさ。
【七希】ふーむ……わかったようなわからないような……
※【七希】でも、それなら部長さん。私も部員になったら、部長さんとそういう事、できるってことですよね?
【望愛】ん、まあ……否定はしないよ。君にその気があるんだったら、僕は受け入れたいと思う。
【七希】じゃあ、私にも部長さんのお耳、舐めさせて欲しいです!
【望愛】……ふふっ。大胆な告白は女の子の特権だね。
【望愛】だけど、僕の耳は、その……デリケートなんでね。君にはまだ扱いが難しいと思うんだ。
【七希】いや、そんなことないです!私、ちゃんと部長さんを気持ちよくさせてあげるので、是非……!
【望愛】まあまあ、少し待ってくれないか?
【望愛】別に拒否をしてるわけじゃないんだ。ただ、僕にも少し心の準備をする時間をくれないかい?
【七希】んむぅ……
【望愛】ここは折衷案と、その練習ということで……この助手くんのお耳で試して見ないかい?
【七希】え~?この先輩のお耳を、ですか……?
【望愛】……まあ、嫌なら無理にとは言わないよ。
【望愛】恋愛というものに無理強いはあってはならないものだからね。
【七希】いえ、これも部長さんの恋人になるための試練、なんですよね!
【望愛】試練……か。君は本当に愉快だね。
【望愛】というわけなんだが、助手くん。少々実験台になってもらえるかい?
(主「喜んで」)
【望愛】ふふ、そういえば君は耳をされるが好きだったね。
【望愛】それでは、君はソファの真ん中に座ってくれるかい?
【望愛】七希君はその横に。
【七希】はい、わかりました!
【望愛】では、本日の実験を開始しよう。