Track 1

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第1話_後輩とデートカッコカリ

■トラック1 「後輩とデートカッコカリ」 えへへ、迎えに来ちゃいました。 もうホームルームは終わってます、よね? ええ、じゃあ早速参りましょう! 「どこに行くんだ」って、先輩何いってるんですか、来週は文化祭本番なんですよ? 部活で劇をやるから、今日はその準備のために一緒に買い出しに行くって、前から言ってたじゃないですか。 忘れっぽいんですから、先輩ったらぁ。 え、冗談? もー、人をおちょくるのやめてくださいよー ほら、クラスの人、こっち見てますよ? 「そういうのじゃないから」って、先輩ぃー? そういうこと、私の前ではあんまり言って欲しくないですよぅ… い、いえ!なんでもないです、何も言ってないです! さささ、早く行きましょう! お店、しまっちゃいますよー んふふー、先輩とデート、でーとぉ いえ、なんにも言って無いですよー空耳じゃないんですかぁ? 「いつにもまして楽しそう」? そりゃぁそうですよー先輩と一緒に、二人きりで歩けるんですから、楽しくないわけないじゃないですかぁ~ でもすみませんね、荷物いっぱい持ってもらって… はい、おかげさまでとっても楽です!ありがとうございます! あ、先輩! あれってこの前テレビでやってた移動販売のクレープ屋さんじゃないですか!? 先輩、ちょっと待っててください~ お待たせしました! とっても美味しそうじゃないですか?このクレープ。 黄金色の薄焼きの生地にホイップクリームとイチゴ、その上にキラリと輝くチョコレートシロップ…! ああ、なぜこんなシンプルな造形なのに、こんなにも美味しそうなんでしょうか! …おほん、ちょっと興奮しすぎました。 さ、先輩、あーんしてください。 さぁさ、遠慮なさらずにぃ。 両手いっぱいに荷物持ってくれてる先輩へのお礼ってことで、一口目を差し上げます。 それに、その手じゃ持てないでしょ? だから、私が食べさせてあげるんです。 ほらー、口を開けないと顔についちゃいますよ~? んふ、美味しいですか、先輩? 「甘過ぎなくてとっても美味しい」? そうですか、それはわざわざ買ってきた甲斐がありました! 「なんで一つしか買ってきてないんだ」って? えへへーかたじけない。 さっきのお買い物で持ってきたお金ほとんど使っちゃって、一つしか買えなかったんです。 でもいいんです、私も一緒に食べますから。 はむ。むぎゅむぎゅ。 うーん、本当だ! これはテレビで取り上げられるのも納得の美味しさです! 特にこの生地がいいですね! こんなに美味しいなら今度はちゃんとお金持ってこなきゃ… ん?先輩、どうしたんですか? 私の口元をじっと見つめて… へ、間接キス? …は、はぁ~~~!? せせせせ先輩何いってるんですか!? 「気づいてなかったのか」って… 分かってたなら何か言ってくださいよー、もー! あの…先輩、嫌でした? 嫌じゃない?本当ですか? はぁ~よかった… …でも、これじゃ不公平ですよね? だから先輩、もう一口食べてください! 私と間接キス、してください! 嫌ですか? 嫌じゃないってさっき言ってくれましたよね? はい、どうぞ。あーん。 ひゃうっ! あれ?おかしいな… なんだか急に心臓がすっごくドキドキしてるんですけど… ねえ、先輩?私どうしちゃったんでしょう…… はひ、深呼吸ですね…… すぅー はぁー すぅー はぁー …ちょっと落ち着いてきました。 お見苦しいところを見せてしまいましたね。 でも先輩が悪いんですよ? 「何が」って、うぅ… 私にもよくわからないんですよぅ 隠してたんですけど、本当は先輩と間接キスしちゃったのに気づいた時からすっごくドキドキしてて、それでちょっとよくわからなくなっちゃって… うーん、ちょっとまだ苦しいです… ※あの、私ちょっとお手洗いに行ってきますね? 先輩はそれ、私が見てないあいだに食べちゃってください。 私はもういらないです。 って言うか、多分今食べたら、またさっきみたいになっちゃうと思いますし。 ではでは。 ふぅ、ただいま戻りました。 「随分長かったな」って、先輩? 女の子にそういうこと言っちゃダメなんですよ~? まったく、デリカシーのない人です! え?心配してくれてたんですか!? えへ、えへへへ… えと、その、ありがとう、ございます… あ、ちょっと待ってください! ……… …えっとですね、私、考えてきたんです。 さっきのドキドキはなんだったのか。 どうしてあんな風になっちゃったのか。 今もこんなに胸が苦しいのはなぜなのか。 …驚かないで聞いてください。 私、先輩のことが好きみたいです。 はい、お友達として、じゃなくて、一人の異性として、先輩のことが好きなんです。 本当は、薄々気づいてたんです。 でも、これはきっと先輩に憧れてる後輩の感情なんだろうなって、自分に言い聞かせて、押さえ込んでました。 …それじゃもうダメなんです。 さっき、か、かか、間接キスって言われたとき、 ああ、これが本当のキスだったらどんなにいいんだろうか。 先輩と、本当のキスがしたい。 そんな思いで、胸が破裂しそうになって… はぁ、はぁ… せんぱぁい… 私とキス、しましょう? ※んー、ちゅ、ちゅぅ。 はぁ…はぁ…、抵抗しないってことは、先輩も私とキス、したかったですか? 「両手が塞がってる」… は、そういえばそうでしたね、えへへ… 「でも、嫌だったわけじゃない」? 本当ですか!? 本当の本当に!? うぐぅ、はぁ、はぁ。 また、ドキドキしてきちゃいました。 でも、もう理由は分かってますから。 これが、恋の痛みなんですよね? 胸を焦がすとは、まさにこういう… すぅー はぁー ん、あ、はい、落ち着きました。 先輩、ごめんなさい。 何度も何度もこんな感じで… あ、ええと、お返事は今じゃなくていいです。 ただ、言わなくちゃ、もう先輩のお顔もまともに見れないような気がしたんです。 ※気付いちゃうと、もう戻れませんので。 ということなので、先輩。 これからもよろしくお願いしますね? 気が向いたら、お返事下さい。 私はずっと、待っていますから。 さぁ、早く学校に戻りましょ? 部のみんなも、きっと私たちのこと待ってますよ! …先輩、お荷物、私も一つお持ちします。

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