Track 7

第7話「りべんじまっち」

■7「りべんじまっち」 あ、お兄ちゃん! もー、遅いよー! ううん、梨花もいま来たところだから大丈夫だよ! ……えへ。 なんだかこれ、お決まりの文句って感じ。 恋人同士って感じする!デートって感じ、するね! その……今日はありがと。 お兄ちゃん忙しいのに付き合ってもらっちゃって。 土曜日まで学校だなんて、お兄ちゃんの学校は大変だねぇ~ 「梨花の頼みだから」?えへへ…… うん、それじゃいこっか。 今日はこの前のデートのリベンジ戦なんだから! この前はね……梨花ばっかりはしゃいで迷惑かけたり、恥ずかしいとこ見せちゃったりしたから…… 今日は、今日こそはちゃんとした恋人同士のデート、しようね? ……ねぇ、お兄ちゃん…… 手、繋ご? うん、ありがと! うーん……どれにするか悩むなぁ…… だってだって、パフェだけでこんなに種類があるんだもん! これも美味しそうだし……こっちも食べてみたいし…… うう……乙女心くすぐられまくりだよぉ…… え?梨花が好きなのを2つ選んでいいの? 「それを半分こに」……なるほど。 ありがと、おにいちゃん! じゃあね~ うーん……どうしよ…… これもいいし……これも美味しそうだし…… むむむ………… 2つ選ぶのも簡単じゃないよぉ~ ……よし!決まった! すみませーん! この、クッキークランチチョコバニラパフェと、カフェモカパフェのフォンダンショコラ乗せをください! にひひー、本当に梨花の食べたい奴だけ選んでみましたー! ※お兄ちゃんはどっちも食べられる……よね? うん、良かったぁ。 ……でもなんだか、あれだね。 こんなお洒落なカフェで、二人がけのちっちゃなテーブルに通されて…… やっぱり梨花たち、ちゃんとしたカップルに見えるのかな?かな? もーお兄ちゃん、照れないの! むふふ~ でも、照れてるってことは、お兄ちゃんもそういう風に思ってくれてるってことなんだよね。 だったら梨花、とっても嬉しいよ。 ……恋人なんだよ、梨花たち。 兄妹なのに、恋人同士。 なんだか不思議……だね。 でも、好きって気持ちがいっぱいあったら、どんな人だって恋人になっていいと、梨花は思うんだ。 だから梨花とお兄ちゃんとの関係は、なんの問題もないことなの。 とーっても自然で、必然的なことだと思ってるんだよ。 梨花、間違ってないよね? んもう、頭撫でてごまかさないでよぉ…… 「これは肯定のサイン」……? そっか…… お兄ちゃん、大好き。 ちょっと手、貸して ……ちゅ。 んふふ……手の甲にキスしちゃった。 これはね、敬愛のキスなんだ。 大切なお兄ちゃんに、大好きなお兄ちゃんに、 ありがとうございますって意味を込めた、キスなの。 お兄ちゃん。 梨花の恋人になってくれて、ありがとう。 梨花もお兄ちゃんの恋人として、精一杯頑張るから…… だから……これからもずっと、大切にしてね? 「急に改まってどうしたんだ」? ……えっとね、なんだか今、改めて実感しちゃってるっていうか…… 本当にお兄ちゃんと恋人同士なんだなぁって思ったら、ドキドキしちゃって…… 最初はね、こんなふうになるとは思ってなかったんだよ? お兄ちゃんが傷ついて、落ち込んでるのに浸けこんで、自分勝手な理想を押し付けちゃって…… でも、それでお兄ちゃんが喜んでくれてるのなら結果オーライなのかなぁって、思うん……だけど…… ね、お兄ちゃん。 お兄ちゃんは……良かったって思ってる? 梨花と恋人同士になって……良かった? ……もう、だから頭なでてごまかさないでっていってるじゃん…… そっか、これは肯定ってこと、だったっけ。 ……ありがと。 梨花も、幸せ。 幸せすぎて、夢を見てるみたいな気分になっちゃうよ…… お兄ちゃん……ちゅ、ちゅぷ…… えへへ、キス……しちゃった。 「場所をわきまえろ」? ……そんなニヤけた顔しながら言っても説得力ないよ、お兄ちゃん…… ……えへへ。 あ、パフェ来たっぽいね! はい、ありがとうございます。 じゃあ、こっちのカフェモカなんとかはお兄ちゃんのでー こっちが梨花の! んー!おいしそー! お兄ちゃん、それで大丈夫だったよね? あ、その上に乗ってるフォンダンショコラは梨花が食べるから、お兄ちゃん勝手に食べちゃダメだよ? では、いただきます! ぱく、はむはむ…… おいしいね、お兄ちゃん! そっちも美味しそうだね~ 美味しい?よかった! はい、じゃあお兄ちゃん、あーんして? あーーん…… みゅふふー、カフェでパフェの食べさせ合いっこなんて、まるで絵に描いたみたいなカップルだよねー! お兄ちゃん、梨花にもちょーだい? あーん…… あむ……んむんむ…… ふわぁ……こっちはほろ苦系なんだね~ これはこれでおいしい! それに、間接キッスでお兄ちゃんの味もちょっとした気がするし…… 「そんなことわかるのか」? わかるよ、だって大好きなお兄ちゃんの味なんだもん! お兄ちゃんも、梨花の味、感じてくれた? 「よくわからなかった」?ふーん。 じゃあもう一口あげる… はい、あーん…… どう?梨花の味……した? 「やっぱりわからない」…… ふむ…… じゃあ、これでどう……かな? ん……ちゅ、ちゅる、んぷ、ちゅむ…… これで梨花の味、分かったでしょ? うん、お兄ちゃんの味もちゃんとしたよ。 梨花の甘いパフェの味と、お兄ちゃんのちょっと苦いパフェの味と…… それになにより、お兄ちゃんの味も。 ……おいしいよ。 じゃあお兄ちゃん、そろそろ交換しよっか。 えへへ、フォンダンショコラ、気になってたんだよね~ はむ、むぐむぐ…… うん、チョコが暖かくてとろとろで、パフェの冷たさとの矛盾がいい感じ~ ほら、お兄ちゃ……んちゅ…… チョコ味……だよ~……ちゅぷ、ちゅる、んぷ、ちゅ…… おいしい……ね……ちゅぷ、ん、ぷはぁ…… え?見られてる? あ、違うんだ……よかった…… ……そうだね、見られちゃうと恥ずかしいし、続きはまたあとで……だね。 じゃ、普通に食べよっか。 ふぇ?口元にチョコがついてる? あ…… ……もう、せっかく我慢しようって思ったのに、そういうことしないでよぉ……