Track 1

Next Track Back

①一日目 ~出勤~

【理紗】 「おはようございまーす♪」 薄暗くなった外を煌々と照らす店内へと足を踏み入れ、 すれ違う夕勤の人と挨拶を交わす ここは、私が初めてアルバイトを経験することになった近所のコンビニ… 時々買い物に来ていて、なんとなくお店の雰囲気がいいなと思っていて… お店のドアに貼り付けてあった求人に目を奪われて、 初めて応募の電話をして、初めて履歴書を書いた… 電話も履歴書もすごく緊張して、噛んじゃったり、何度も書き間違えちゃったり… 四苦八苦しながら、やっとのことで店長さんに面接してもらえたけど… 面接はもっと緊張しちゃって噛みかみで…店長さんに笑われて、恥ずかしかった… 肩の力を抜いてリラックスするよう言われて、深呼吸して… ようやく事情を話せた結果、夜勤として雇ってもらうことになった 本当は夕勤希望のはずだったんだけど… 今はあまり空きがないから稼げないと言われてしまって断念した お母さんが病気で亡くなってから、共働きでなんとか持っていたうちの家計は火の車らしく… お父さんはよく頭を悩ませていて、そんな姿を見るたびに、胸がズキリと痛んだ… 必死に転職先を探しているみたいだけど、年齢のせいか、今より稼げるところは簡単には見つからない… だから私が働いて、少しでも多く家計の足しにできればと思ってたから… 迷った末に、夜勤をこちらからもお願いしていた 深夜手当てというものがついて時給が他より良かったし、 店長さんが必ず一緒にいてくれるというのも心強かった そうして、初めてのアルバイトで悪戦苦闘しながらも、 なんとか一ヶ月間、無事にやってこれてる… バイトの人達はみんな親切だし、店長さんも親身になってくれて優しいし… わからないことだらけの私を、なんとか一人前にしようとしてくれている… シフトもこちらの都合に合わせてくれて… 金曜日と土曜日の週2日でとりあえず入れてもらった 日曜日も時々入って、月曜日はフラフラしながら登校したりするけれど… 自分の置かれている状況を思うと、泣き言は言ってられない 何よりも、今の自分でも親や人の役に少しでも立てるという事実が、私の大きな原動力となっていた 【理紗】 「おはようございます店長♪  今日もよろしくお願いします!」 バックヤードで机に向かってパソコンと睨めっこしていた店長に明るく声をかけ、 自分のロッカーから制服を取り出して袖を通す… 持参したバッグをロッカーの中に置いて閉め、 店長からパソコンのマウスを拝借し、出勤処理をして… 『よしっ、今日も一日ガンバルぞ!』と心の中で気合を入れてから、 レジカウンター内へと足を踏み入れる… 【理紗】 「いらっしゃいませ~!」 来店されたお客様に声が届くように張り上げながら、今まで教えてもらった知識を頭の中で反芻して… 今日こそは些細なミスがありませんようにと、心の中で密かに願掛けしていた…

Next Track Back