01 プロローグ~自己暗示~夢幻への誘い
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だ、誰?
ああ、何だ君か。同じクラスの…
えっ、私?
そうよ。ひとり。
何でこんな所でって…
どこでお弁当食べようと私の勝手でしょ?
えっ、隣?
別に構わないよ。座って。
このソファー、日が当たって気持ち良いから…
それにこんな所はお互い様だし。
君こそ、どうして今日に限ってここでお昼にしようと思ったの?
うん…ご両親が旅行中でお弁当作ってくれる人がいない…
で、お昼はその食パンだけ?
それを皆に見られるのが恥ずかしくてここまで…
ぷっ! くすくす…
だったら、前もってコンビニのお弁当でも用意しとけばいいのに…
えっ、急だったからとりあえず家にある物持ってきた? くすくす…
ん? 私が笑ってる所、初めて見た?
そ、そうだったかな…
私そんなにいつもムスッとしてる?
そうか…
やっぱりそんな風に見られてるんだ、私…
でも、お昼が食パンだけじゃ味気ないね…
はい、おかず分けてあげる。
パンに挟めば少しはマシになるでしょ?
あっ、ほらほら、野菜もちゃんと食べないとダメ…
ん…お昼休み終わっちゃうね。
たくさん話したからかな? 時間経つの早く感じる…
ふふっ、大きなあくび…
このソファー、薄汚れてるけど座り心地良いでしょ?
眠くなっちゃうのも解る。
どこかで使わなくなったのを物置代わりのこの部屋に
とりあえず置いてるだけみたいだけど…
これがあるからついここに来ちゃうの。
ふわ…あふ…
ふふっ。君のあくび、うつっちゃった。
午後の授業出るの、憂鬱…
どうしよう、今日はこのまま…
ここでさぼっちゃおうか?
私からこんな提案するなんて、らしくない?
ううん、それは偏見。
私…本当は真面目でも何でもない。
周りの皆が勝手に決め付けてるだけ。
昔からいつもそう。私の事なんか何も知らないくせに…
見た目だけで…優等生だの、委員長だの…
私…周囲からそう思われる自分が嫌い。
変わりたい…変えたい…変わら、なきゃ…
ひょっとして…君もそう思ってるの?
私の言った事、信じられない?
真面目じゃないって信じられない?
本当?
だったらもう少し…ここにいようよ。
ね、いいでしょ?
どうせ教室に戻ったって…いつもと同じ退屈な時が過ぎるだけ…
退屈は人を殺すとも言うわ…
学ぶ事が私達学生の本分とは言え、
死をもたらす退屈さから逃れる権利くらいあるはず…
そうは…思わない?
ふふ…やっぱりこんなの私らしくない?
言ったでしょ。真面目じゃないって…
詭弁で言いくるめてでも…君をこっちの世界へ招待するんだから…
あ~あ、予鈴鳴っちゃった…
ふふ、そわそわしちゃって…授業さぼるの、そんなに不安?
君、意外と真面目なんだね?
私とは逆…ちょっと可笑しい。
どうする? やっぱり…教室戻っちゃう?
退屈を承知で学生らしく勉学に勤しんじゃう?
だね。戻る必要無し。
少しくらいさぼったからって気に病む事はない…
もう優等生でも何でもないんだから…
そうでしょ?
それに今更急いだって遅刻に変わりはないんだし…
いつ戻っても先生に叱られるのは一緒。
だったら、このままここで過ごそ…ね?
ふふっ、良かった。
君が不真面目な人で…
でも、なるべく声は小さくね?
授業中の校舎って驚くくらい静かだから…
話し声漏れちゃうと誰かに見つかっちゃうかも。
解った? ちゃんと聞いてる?
あっ、またあくび…
さぼるって決めたら緊張感無くなっちゃったかな?
何だか顔が緩んできたよ? ふふ…