見知った天井と熱を持つ体と
《ぎし……がばっ》
(貴方が意識をとりもして、身を起こす音)
フィー
「あぁ、ようやく目覚めたのかい?おはよう、体の調子は大丈夫かな?
……なんて、2回目だね。この会話も」
“貴方”が軋む体の痛みに目を覚ますと、そこは見知らぬ……いや、見覚えのある空間であった。
以前、フィーと共に肌を重ね、それ故に彼女を忘れられなくなった、あの洋室である。
フィー
「……まったく、ボクは君にもう来ないようにって言ったと思ったのにな。
どうして来ちゃったんだろうねぇ、君は?
ハンターは軽症で帰れたからいいものの。
君はまたそんな、いや……前回の殴られた時なんかよりももっと酷い怪我をしてしまうし……まったく、まったくだよ。
少しは反省した方がいいと思うんだけどね、ボクは」
《さらり……》
(フィーが貴方の髪をなでる音)
ただこの間と違うのは、フィーは寄り添うように貴方の眠っているベットに腰掛け、手にはあの時のワインのグラスなどもなく、
悲しむべきか喜ぶべきか迷うような複雑な顔で、ゆっくりと慈しむ様に貴方の頭を撫でている点であろう。
フィー
「……前に言っただろう?ボクと……吸血鬼といると面倒な事になるかもしれないって。
まぁ、今回はその中でも特別面倒な出来事だったのは間違いないのだけれどね?
静かに暮らしたいと思っていても、どうしてもたまにこういう事が起きるものなんだよ……人じゃない生き物の生活っていう奴はさ。
だから、本当に……吸血鬼なんかの近くに人はいない方がいいんだよ、よく……分かったろう?」
《さらり……さらり……》
(撫で続ける音)
フィーは何度も何度も優しく貴方の頭を撫で続けながら、悪戯をしでかした子供を諭すかのように、貴方に寂しげな笑みを浮かべ言い聞かせる。
それは愛らしい少女の姿が表す態度としては、余りに多くの意味を含んでいるような……何処か長い時を生きたモノの持つ重みを感じさせる言葉であった。
フィー
「まぁ、とはいえ……今回はボクも君の力を借りて窮地を抜け出させて貰った訳だからね。
こんな年寄り染みた説教をした所で全く説得力がないんだけれどね。
まったくダメだね!吸血鬼も平和ボケをするみたいだよ。
ふふ、これだけ生きてまだ学ぶ事があるなんてね、なんだか複雑な気分さ……はは♪」
《さら……しゅる》
(フィーがベットの上を動き貴方に近づく音)
フィー
「体に違和感はないかい?ちょっと血を吸いすぎてしまったからね。
……ギリギリにしたから大丈夫とは思うけれど、少しでも違和感があれば言っておくれよ?
吸血鬼になったりはしないだろうけど、ボクの血が大分入ったはずだからね……意識が戻ったのなら、多分治癒と一緒にそろそろアッチの効果も出てくると思うんだけど……」
申し訳なさそうに瞳を伏せたフィーが、ベッドの這うように貴方に一歩近づく。
金色の髪がさらりと貴方の頬に触れ、心配そうに見つめる彼女の赤い瞳の中に貴方の顔が薄っすらと映った。
――体は確かに全体的にダルいけれど、痛みとかはないから大丈夫ですよ。
あまりに心配する彼女に、貴方は安心させようと笑みを作ろうとして頬を持ち上げようとした……その瞬間。
《どくんっ……!》
心臓が早鐘のように……いや、以前のあった時の比ではない程に激しくまるで大砲の弾が止め処なく発射され続けているかのように大きく脈打った。
どくんどくんどくんと、今にも胸を突き破って外に飛び出しそうな鼓動に合わせ全身の血が燃えるように熱く、急速に体を駆け巡り、肺がただ呼吸しているだけでは足りないと、呼吸を起こさんばかりに荒く空気を求めてくる。
――が、ぅ………こ、……れ……っ!?
フィー
「あぁ、やっぱりか……この間みたいにちょっと吸っただけじゃなかったからね。
多分……こうなるんじゃないかと思ってたんだよ。
ようはこの間の出来事と同じで、君の中に入ったボクの血が君を治すのと同時に……色々と影響を与えているってことなんだけど。
命に関わりはないはずだけど、大丈夫……ではないよね、やっぱり」
心配するフィーに貴方は何か言葉を返そうとするが、体に起こり続ける変化の衝撃に、意味のある言葉を返す事も出来ずただ荒い息を繰り返す。
体の至る所に刺激があるものの、特に体の一部……以前も激しく反応してしまっていた貴方の下半身は、ぎちりと血が巡りそれだけで弾けそうな程に痛みすら感じる程硬く反応してしまっていた。
フィー
「……前の時は、君の心遣いへのお礼って意味もあったけど。
今回は前回以上に君は大変な事になってるし、ボクも……本当に助けて貰って、すごく恩を感じているんだよ?
……だから、今日はね。ボク、君の苦しみの責任をちゃんと取ってあげたいな。
お礼とか、ボクの楽しみとか……そういうのは関係なく、君が落ち着いてスッキリするまで何度でも、何回だって……ね?」
《しゅるり……》
(フィーが服を脱ぐ音)
フィーが言いながら、彼女のドレスの胸元に手を伸ばした。
ぱちりと、胸元の止め具を外すとそれだけで彼女が纏っていた薄くも柔らかそうな布地が白い肌の上を滑り落ちていく。
フィー
「……苦しいだろう?ボクから見て、君は優しく……うん、優し過ぎるくらいに見えるからね。
だから、変な遠慮とかしないで貰えるように最初に言っておくけど。
君の体の苦しさが、熱が……全部無くなるまでボクを貪る事を止めないで欲しいんだ」
フィー
「ボクなら大丈夫、前の時で分かったろう?吸血鬼の体は、人間の君が考えるよりとっても丈夫なんだ……どれだけ激しくしてくれたって、全然構わないし……気持ちよくなれるから、ね?」
貴方の胸の上でまたがるようにしながら、生まれたままの滑らかな白磁の肌と、その上の可愛い小さな胸を見せつけるようにして、フィーは甘く……蕩けるような艶やかな笑みを浮かべて、貴方を優しく見下した。
フィー
「ボクから、君への感謝とお礼だ。
吸血鬼であるボクを、人間である君が……容赦なく、強引に、欲情の限りを尽くして……貪(むさぼ)って、おくれ?」