01.あら、お目覚め?
… あら、お目覚め?
もしかして私の事… 覚えてない?
… ん~、死んだ瞬間の前後の記憶が混濁しているのかしら…
うちの教会の司教様の依頼で、パーティを組んで、ドラゴン退治に行ったことは?
そこであなた… 私をかばってくれたのよ?
私が呪文の詠唱中、ドラゴンの炎から、あなたはその身を挺して…
そのせいで、あなたは死んでしまったの…
でも大丈夫… 私の蘇生術で、ちゃ~んと生き返らせたから… ♥
生き返ったばかりだから、しばらく体は動かないわよ?
そこで大人しくしてなさい
… ここは教会、私の部屋よ
誰も邪魔できない、二人だけの部屋… ♥
ねぇ… あまりこういうことは言いたくはないのだけど…
あなたを生き返らせるのに、私は残っていた魔力を全て使ってしまったのよ?
ドラゴン退治、そのまま教会へあなたを運び込んで、蘇生術を施して…
正直、あの場であなたにかばってもらわなくても、なんとでもなったのよ?
あの時の詠唱は、呪文の威力を更に上げるためのものでしかなかったし…
詠唱を途中破棄して、そのまま発動してしまえばよかっただけのこと…
ふふふ、残念だったわね♥あなたの死は、無駄だったというわけ♥
それに、あなたを蘇生した分の、寄付を貰わないといけないくらいなのよ?
あなたのレベルなら… だいたい4000万ほどかしらね
あら、払えないの?それは困ったわね…
私達を救ってくれたのに、借金なんて… ふふっ、かっこ悪いわね
で~も…
命がけで私を守ってくれたあなたの姿… かっこよかったわよ♥
久しぶりに、男に惚れちゃったわ♥
こんな気持ちになるのは… あの人と出逢った時以来… ♥
ええ、私には夫がいるわよ
シスターになる少し前に結婚して… もう10年以上になるかしら
結婚する前は、魔法の研究をしていたのよ、私
それから結婚して、研究はやめちゃったけど、修行を積んで、教会のシスターになって…
魔法の知識のこともあって、神父様から蘇生術の会得を勧められて…
で、今に至る… ってところかしら
私達、神に仕える者のみ使う事を許された蘇生術は、魔力の消費が激しいのよ…
使った分の魔力は、普段は夫とセックスをして回復しているのだけれど…
あの人ね、外に愛人がいるのよ
今は王城に出向いて、住み込みで医者をやっているのだけれど…
そこのお城の給仕の女だとか…
昔、一緒に魔法の修行をした知り合いが、そのお城で働いててね、聞いちゃったのよ…
一度、あの人を問い詰めた事があるの
それなのにあの人ってば、魔法の修行をした私に向かって、嘘をつくのよ?
魔法の修行をすれば、人の嘘くらい簡単に見抜けるようになるっていうのにね…
あんまり可笑しいから、つい騙されてたフリをしちゃって…
もう私達夫婦は、私の魔力回復のためにセックスをするだけの関係…
” 愛” なんてものは、とっくの昔に無くなってしまっているのよ
ドラゴンと戦う魔法も、人を蘇らせる蘇生術を手に入れても、一度愛した男の心を繋ぎ止めることすらできないなんて…
私も、まだまだ修行の足りない未熟者ね…
それにしても不思議ね… あなたを見ていると、あの人と出逢った時の事を思い出すみたい…
胸の奥がときめくような、そんな感覚…
あなた、一体何者なのかしら… ?
とても興味があるわ…
…へぇ~…じゃああなたが、天に選ばれし勇者なのね…
勇者の事は噂には聞いていたけど…まさかあなただったなんて…
…な~んて、実は最初から気が付いていたわよ
多分、私しか気が付いていないと思うけど…
あ、司教様はあなたが勇者なのではないかって、疑ってはいたわよ
とはいっても、まさかあなたみたいな子が本物の勇者だなんて、信じられていないって感じだったけど…
…ええ、私は信じるわよ、あなたが勇者だっていうこと…
だって現に…私をこんなに夢中にさせてくれているんだもの…♥
あなたが特別だっていう証拠よ…♥