トラック1:オープニング
;タイトルコール
/立ち位置:7 左側の耳元で囁く
【蘭】
「うぃすぷ」
/立ち位置:7
;和耳神社=なごみみじんじゃ
【蘭】
「秘境、和耳神社。ケモミミ巫女が、あまーく、とろけるように、あなたのお耳を癒します」
/立ち位置:3 右側の耳元で囁く
【榧】
「ふふふっ、エッチなご奉仕もちゃーんと用意してますので、心の準備をしてから聞いてくださいね」
;SE:森の音、風の音
/以下、蘭の立ち位置:1 正面で普通の会話
【蘭】
「……あれ? ふふっ、珍しいですね、こんな人里外れた場所に人が来るなんて。……参拝に来たんですか?」
【蘭】
「……え? そういうわけではない。ではどうしてこんな寂れた場所まで? ……気が付いたらここに来ていた?」
【蘭】
「あぁ……ふふっ、なるほど、そういうことですか。だからこんな場所まで来てしまったと。……ふふ、もしかしたら歩き疲れているのではありませんか?」
【蘭】
「もしよければ、社務所の方で休んでいかれませんか? 簡単ですが、お茶くらいならご馳走出来るかと……え?」
【蘭】
「いえいえ、参拝などしなくても大丈夫です。勿論賽銭もいりません。これは単なる、私からのご厚意と思ってください」
【蘭】
「ここの神社は、神は人のために在るべし、といった考えを持っています。こちらから何かを求めたりはしません」
【蘭】
「つまり……ふふっ、簡単に言ってしまえば、タダで休んでっていいですよ? ということです。どうします?」
【蘭】
「……はい、分かりました。それではこちらに。……どうぞ、心行くまでゆっくりしていってください」
;SE:ドアを開ける音
【蘭】
「かやー? あっ……もう、またこの子ったらお昼寝して……」
/以下、榧の立ち位置:1 正面で普通の会話
【榧】
「すぅー……んーむにゃむにゃ……。すぅ……ん、すぴー……すぅ、すぅぅ……」
【蘭】
「こら、起きなさい榧。お客様が来てるわよ。情けない顔見せないの」
【榧】
「ふにゃ……あれ? 先輩……ふわわ、すっ、すみません! ちょっと寝ちゃってました!」
【蘭】
「見れば分かるわよ、まったく。ちょっと目を離すといっつもこうなんだから……」
【榧】
「あ、あはは……やっぱり私、祝詞ってどうしても苦手みたいで……。文字を見てるだけで、いつの間にか頭の中がぐるぐる、ぐるぐるって……」
【蘭】
「はいはい、その言い訳はもう聞き飽きました。それよりもほら、お茶の用意をしてくれない? 3人分ね」
【榧】
「あ、はい……って3人? あれ? 先輩……そちらの方は……」
【蘭】
「お客さんよ。ふらふらって迷い込んできちゃったみたいなの。どうせだから休ませてあげたいなと思って連れてきちゃった」
【榧】
「なるほど! そういうことですか! へぇー、ふぅーん……これが噂の……話には聞いていましたけど、案外普通なんですね……」
【蘭】
「ほーら、そういうのはいいから。早く座布団とお茶を出す」
【榧】
「わっと、そうですね、失礼しました。すぐ用意しますから、少々お待ちください」
【蘭】
「まったく……ごめんなさいね、そそっかしい子で。優しいし、素質はあるんだけど、ちょっと間が抜けているというか……」
【蘭】
「……ま、そこに慣れてしまえば、可愛い子だから私は気にしないんですけどね、ふふっ」
【榧】
「はい、準備出来ましたー! さぁ、どうぞいっぱい休んじゃってください」
【蘭】
「ではどうぞ? ここは人も神様も、上座も下座もない、至って普通の空間です。遠慮なく休んでくださいね、お兄さん」
;SE:座る音
/以下、榧の立ち位置:15 右側で普通の会話
【榧】
「それにしても……本当に珍しいですねー。こんな寂れた場所まで参拝に来るなんて……。お兄さん、よほど信仰心が篤い人なんですね」
【榧】
「……ふふ、んふふふっ。ねぇねぇお兄さん、知ってます? ここのお守りって結構効果あるって評判なんですよ?」
【榧】
「無病息災に家内安全、合格祈願に商売繁盛! 種類もたくさん取り揃えております! ささ、どれを買います? 私的には全部買うのがオススメです!」
/以下、蘭の立ち位置:11 左側で普通の会話
【蘭】
「かーやー? そこであこぎにならないの。そもそもお兄さんは参拝客ではないの。言ったでしょ? ただ迷っちゃっただけだって」
【榧】
「あ……あはは、そうでしたね。かなり珍しかったのでつい……。ほら、これも巫女としてのクセみたいなものですね」
【蘭】
「まったく……どこでそんな評判を聞いたのよ。そもそも参拝客が滅多に来ないのに。嘘はいけませんよ嘘は」
【榧】
「あぅ……鋭いですね、先輩……。……けど、参拝しに来たんじゃないんですね。それこそ珍しいと思いますけど」
【榧】
「あ、あの、お兄さん? 失礼を承知で聞きますけど、どうしてこんなところを歩いていたんですか?」
【榧】
「……仕事で疲れたから、その気分転換? あー、なるほど。分かります分かります、その気持ち」
【榧】
「あれですか? やっぱりお兄さんにも、厳しい上司に悩まされたりしているんですか?」
【榧】
「暇なのにお昼寝も許してくれなかったりとか、その日のお掃除を忘れると烈火のごとく怒ったりとか、意外と雷とか苦手だったりする上司がいるんですか?」
【榧】
「……あ、そういうわけじゃないんですね。じゃあ……あぁ、日々のストレス的なものだと、なるほどなるほど……はっ!?」
【蘭】
「うふふふふ、榧ってばまーた可愛いところ見せてくれるじゃない。頭も緩ければ口も緩いのね、あなたって」
【榧】
「あ、いや、今のはあくまでたとえ話ですよ、たとえ話! そういう上司もいるんじゃないかなーってだけですから、あは、あはははっ」
【蘭】
「ま、榧を叱るのは後にして……気分転換に散歩してたらここに来たってことなんですね、お兄さんは」
【蘭】
「見た感じ、心も身体も疲れているんじゃないですか? 仕事のストレスを抱えて、それを消化できない内から、また仕事が始まって……」
【蘭】
「そんな毎日を送っていて……そろそろ我慢の限界を迎えそう。……そんな状態だと思うんですけど、いかがでしょうか?」
【蘭】
「……ふふ、正解って顔ですね。職業柄、こういうことには聡いんです。……ここは1つ、神様の力、とでも言っておきましょう」
【蘭】
「しかしそうなると……お茶をご馳走して、はいさようなら、と帰って頂くのはちょっと忍びないですね」
【蘭】
「お兄さんの心を知った今、もう少しおもてなしをしたいといいますか。榧としても……お兄さんの興味津々のようですし」
【榧】
「あ、流石先輩、ご名答です。一緒に休んでると、もうちょっとお話したいなって気持ちになってくるんです」
【榧】
「あと……このまま現実に返してしまうと、ちょっと可哀そうというか……。なんか見捨てた形になっちゃいそうで……」
【榧】
「折角なら、少しでもお兄さんの心を癒して、嬉しい気分になってから帰らせてあげたいなーって……こういうの、ダメですかね?」
【蘭】
「いいえ、とても正しい心がけだと思うわ。……私もあなたと同じことを考えていたくらいだし。だからここは……はい? どうしました?」
【蘭】
「……お茶をご馳走されただけで十分? いえいえ、そうはいきません。ここでお兄さんを見捨ててしまえば、神様の名折れですから」
【蘭】
「ふふっ、意味が分かりませんか? ……こういうことです、よっと」
【榧】
「わわ、ちょ、見せちゃっていいんですか、それ? 普段は隠しとけーってあんなに口酸っぱく言ってるのに」
【蘭】
「今日だけはいいの。他でもない私が許すわ。だから榧もいいわよ?」
【榧】
「せ、先輩がそういうなら……ほっ」
【蘭】
「……あ、ふふっ。この耳ですか? 勿論、仮装なんかじゃありません。本物の犬の耳です、なんなら触って確かめてみますか?」
【榧】
「先輩は、この神社の神主でもありますが……それと同時に、祀られている神様そのものなんです」
【蘭】
「犬神ってご存知ではありませんか? 私がそれなんです、えっへん。……あ、ちなみに榧は、見習い巫女であるのと同時に、見習い犬神です」
【榧】
「将来はそこそこ偉くなる予定です、えっへん。……今は全然ダメダメですけどね、えへへ……」
【蘭】
「この子が立派な犬神になるのは、数年後か、はたまた数百年後かはさておいて……。神様というのは、人々に安心を与える立場にあります」
【蘭】
「苦しんでいる人を少しでも支えたり、不安でいっぱいの人に優しさを与える。それがいわば私たちの仕事でもあり、生きがいなんです」
【蘭】
「そのためにも……今日こうしてお兄さんと話したのも、何かのご縁。どうか、神様からの施しを受けてみませんか?」
【蘭】
「疲れた体と、くたびれたその心を、私たちが癒して差し上げます。安心してください、後悔だけはさせません」
【榧】
「あ、先輩……それってもしかして……。うわぁ、どうしよう。私初めてだから、上手くできるから……」
【蘭】
「大丈夫よ蘭。やり方は知ってるでしょう? それに私がちゃんと傍で教えてあげるからあなたも安心して?」
【蘭】
「それに……一番大事なのは、技術ではなく思いやり、どれだけお兄さんのことを大切に想えるか。……あなたはそれを持ってるんだから大丈夫よ」
【榧】
「わ、分かりました……。それじゃあ準備の方してきますね。えーっと、どこにあったかな……」
【蘭】
「ふふふっ……それじゃあお兄さん、一服したところで、私の膝に頭を乗せて貰えますか? ……え? ふふ、何をするのか気になりますか?」
【蘭】
「ただの耳かきですよ。……くすぐったくて、温かくて、気持ちいいだけの、単純な耳かきです」
【蘭】
「辛いこと、苦しいこと、悲しいこと……全部忘れさせるくらいの、癒しのひと時を、今からお兄さんに差し上げます」
【蘭】
「だからほら、肩の力を抜いて……頭の中を空っぽにして、私たちに全てを預けてください……」