Track 6

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ひよのこもりうた

;9 「♪ 新町通りの おみかん屋    おみかん一貫 いくらです 五百です    まあちょっと まからんか さがらんか ホイ    あなたのことなら まけてやる    ひい ふう みい よお    いつ むう たた やあ ここ とお ――わ」 ;1 「できた。あいやん、おてだまうたのおわりまで、 おてだま、続けられたなぁ―― すごい、すごいな。さすがあいやん、すごいなぁ」 「えへへー……うれしい。うれしいなぁ。 ひよな? なんだかえらい安心できたのし。 えへへ、お手玉、あいやん覚えてくれたなぁ」 「あいやんこれから、おみかんみると、 おみかんお手玉、おもいだすやろ? ほいたらきっと、ひよのおうたも、お手玉うたも、 一緒におもいだしてくれるやろ?」 「そいがな? えへへ―― ひよには、えらいうれしいことやのし」 「え? 『どうしてそこまで』……って―― ん……(呼吸音)――うまいことことばにできるかわかれへんけど―― あんな? あいやん」 「ひよな? ひよが生きとったってうとーてたこと。 消えてしもたら、だーれも覚えててくれんのは…… それはやっぱり、さみしいなって――え?」 「『ひよちゃんは消えない』って―― いや、ひよな? 送り雀で、送り狼から人間を逃したげるためのあやかしやのし。 せやさけ、送り狼が消えてしもたいま、だぁれもひよのことなんて――え?」 「あ……(呼吸音)…… あ……(呼吸音)―― ほんま、やなぁ。 あいやんが、人間が、ひよのこと、 ‘送り雀”いうあやかしのこと―― いま、知って、覚えて、思ってくれとるんやもんなぁ」 「ほんなら、えへへっ、ひよ、消えんなぁ。 あいやんが生きとって、ひよのこと忘れんかぎり―― このまま、うとーて、わらって、おみかんたべて、 くらせるなぁ――あ」 :環境音 家の外で雨 F.I 「雨音……ああ、結構つよぉに降っちょるのし。 これ、あいやん、外にでるの――んっ」 「ほんならな? 外も暗ぉになってきとるしな? あいやん、とまっていえばええのし」 「お客さんのおふとんないけど、ひよな? こげにちんまいさけ。 あいやんが寝取るふとんの隅っこで、 一緒にはいって、ちとかいも邪魔にならんと思うのし」 「ん。えへへ~っ。うれしいなぁ。 ひよ、あいやんと、もっとたくさんおはなしできるなぁ」 「ほんなら、な――おふとん。あ」 ;2 「えへへ、あいやん。一緒にしいてくれるんやなぁ。 ほんなら、一緒に――んしょ――よいしょ」 < SE 布団敷く > ;1 「しけたー! ほんなら、あいやん? ごろんして、おふとんもぐって? あいやんが寝たら、そのおとなりに――」 ;SE 布団もぐる ;3 「えへへー。ぬくいなー。 あいやん、体ぽかぽかやのし…… えへへ、ここちええなぁ。安心やなぁ」 「ん――(呼吸音)――ふふっ。 ぬくくて安心したらもう、 だんだんねむぅくなってくるなぁ」 「……(呼吸音)――雨の音も、な? ひたひたしずかで、ここちええなぁ。 ものべのぜぇんぶ、お水の底にざぶんてつかって。 お布団の船で、あいやんとひよとふたりだけ、 ぷかぷかういとるこころもちやのし」 「え? ……(呼吸音)――うん――(呼吸音)―― うん。 あー、ほんま、あいやんのいうとおりやなー。 他の人間ともたくさんあえば、それだけたくさん、 ひよのことしって、覚えてもらえて―― 消えるの、とおざけられることになるなぁ」 「……けどな? あいやん。 あいやんは、ひよのお歌を聞きに来てくれた物好きやけど――え?」 「あ――(呼吸音)――ん――(呼吸音)――うん。 いわれてみたら、そげかもしれん。 ちいさいこなら、ひよのおうたも、おてだまも、 よろこんで覚えてくれるかもしれんなぁ」 「うん……ふん……『たくじしょ』いうて?―― ちいさいこどもをあずかって―― わ。ほんでおちんぎんまでもらえる、そげなお仕事が……あ――」 「お仕事……ん……(呼吸音)…… お仕事、なんて……ひよ、お仕事、とか……できるんかなぁ?」 「ひよ、うたといことちとかいもすかんし。 頭もかしこいことないし――え?」 「うん?……(呼吸音)――うん――(呼吸音)――あ。 ほんまやなぁ。えへへっ――ひよ、 ‘送り狼から人間を逃がす”大事なお仕事。 80年。ずっと、ちゃあんとできとったんやなぁ」 「ほんならひよにも―― たくじしょ? のお仕事……できるかなぁ」 「うん……うん……(呼吸音)――うん」 「……あんな? ありがとおな? あいやん。 ひよ、初めてあえた人間が、あいやんでほんま、よかったなぁ」 「けど……な? あんな? あいやんが、ひよをえらいことたすけてくれるさけ―― その……ひよ、わからないことがでてきたら、 きっとぜったい、あいやんに頼りたくなってしもうて――あ」 「……いつでも連絡してええのん? えへへ、うれしい。なんや、とくべつな感じがするなぁ。 うれしいなぁ」 「あ――(呼吸音)――そっか。 うん。これが、『おともだち』いうもんなんやなぁ。 あんな? ひよな? あいやんとおともだちになれて―― えへへへっ――えらいうれしうて、ふわふわ浮いてしまそうやのし」 「うふふっ、わかっとるよぉ。 うくのは、一人でもできるもんなぁ。 いまはあいやんと、ひとつおふとんでぬくぬくと、 おねんねをする時間やもんなぁ――あ」 「えへへっ、あいやん、あくびした~。 もう眠たいん? えへへっ――ほんならな? ひよな?」 「和歌山のうた。ねむいたいときにうたううた。 あいやんに――ひよのはじめてのおともだちに―― こころをこめて、うたうのし」 「あいやん? ね? めぇつむってな? 聞いとくれのし――(すうっ)」 ;参)https://www.youtube.com/watch?v=eDp9ldwm8d0 ;歌詞は下記でお願いします 「♪ねんねんころりよ おころりよ   ぼうやはよいこだ ねんねしな   ねんねのおもりは どこへいた   あのやまこえて さとへいた   さとのみやげに なにもろた   でんでんだいこに しょうのふえ   なるかならぬか 吹いてみよ   これをくわえて ねんねしな」 「……(呼吸音)――あいやん? んふふ? ねんねしたん?」 「(リップ音)――おやすみ、あいやん。 ひよもねるなぁ? ほんでな、あしたも――あいやんが旅に出てまうまでは」 「いっしょに、たくさん、おしゃべりしよな? あそぼーなぁ」 「ふぁ……ん――」 ;口寄せささやき 「おやすみ、あいやん。ひよの、はじめてのおともだち」 「(寝息)」 「(寝息)」 「(寝息)」 「(寝息)」 ;環境音F.O →無音に ;おしまい

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