結末
さて……と。
そろそろ、魔界に還る時間かな。
楽しかったよ、おにいさん。
またボクを召喚してね……と、言いたいところだけど……。
同じ召喚の儀式でも、同じインキュバスが召喚されるとは限らないし……。
言ったとおり、ボクは召喚されるたびに記憶を失うんだよね。
うまくボクを呼び出せても、赤の他人から始まって、そして赤の他人に戻っちゃうわけ。
だから実質、おにいさんとはこれっきりかな。
ちょっと名残惜しいけどね。
(──間隔5秒)
……えっ?
記憶を失っててもいいから、また召喚するって?
アハッ、そう言ってくれるのはうれしいよ。
だけど、そんなことを繰り返しても不毛なだけ。
頑張って、人間の男の子の恋人を作ったほうが、いいんじゃないかな?
まあ、おにいさんのスペックだと、彼氏を作るのは難しそうだけど……。
でもボクは、おにいさんのこと、割と気に入ったかな……。
人良さそうだし、エッチ慣れしてなくて、反応可愛いし……さ。
(──間隔5秒)
えっと……実はさ……。
ボクがずっとおにいさんのそばにいられる方法、ひとつだけあるんだ。
それはね、その……。
おにいさんとボクとで、婚姻の契りを交わすの。
淫魔との婚姻は、命を代償に未曾有の快楽を得る契約。
通常は、淫魔に魅入られる形で契約させられて、日々精気を搾り取られて、あっけなく死んじゃうんだけど……。
もしおにいさんが、ボクと婚約を交わしてくれるのなら……。
手加減して、おにいさんの寿命が尽きるまで時間をかけて、精気を吸い取るよ。
ボクは淫魔だから、寿命は人間よりずっとずっと長くて、100年経ってもこの姿なんだ。
せいぜい髪が伸びたり、爪が伸びたりする程度かな。
うん。
きょうできなかったプレイも、たくさんたくさん相手してあげる。
今度はボクがフェラチオしてあげるし、アナルセックスだってOK。
おにいさんが望むのなら、道具を使ったプレイや、野外プレイだって大丈夫。
あ、女装もしてあげるよ!
ご希望なら髪も伸ばすし、女らしい振る舞いも学ぶよ。
彼女や奥さんとして、友達に紹介してもいいからね?
だから、その……。
おにいさんさえよければ、婚姻の契り……受けるよ?
(──間隔5秒)
……って、ないよね、うん。
こんな契約、ない。
魔族と一生ともに過ごすなんて選択、ありえないよね。
しかもオスの魔族だもんね。
アハハッ……ハハッ……。
きっとボク、これまでもこうして、
召喚してくれた人に無茶ぶりしてきたんだろうね。
そのたびに断られては、新しい召喚者に同じお願いをしてきたんだろうね。
ひょっとするとボク、婚姻の契りを断られる苦しみを消そうとして、
無意識のうちに、自分の記憶を消してきたのかもしれない……。
……あ、変な話してゴメン。
いまの忘れて。
じゃあ、ボクもう行くから。
元気でね、おにいさん。
(──間隔10秒)
……えっ、いいの?
ボクと婚姻の契りを……交わしてくれるの?
契りを交わしたら、ショタなインキュバスが一生そばに居座っちゃうよ?
ボク以外の子とエッチしたら、契約破棄とみなされて、その場で命を奪われちゃうよ?
もう一生、ボクのオチンチン以外とは、エッチできなくなっちゃうよ?
それでも……いいの?
(──間隔5秒)
アハッ……うれしいっ!
ボク、もう記憶を失わずにすむんだっ!
これからおにいさんと、いろんなエッチができるんだっ!
うれしいっ!
おにいさん大好きっ!
チュッ!
ずっとずっと、ずーっとユウと一緒だよ!