耳マッサージ開始
はい、じゃあはじめるから、そのままベッドへ横になってくれる?
うん、最初は仰向け。
大丈夫、天井のシミでも数えてる間に終わるから、怖くない怖くない!
ん?
どうして心が弱ってるか聞かないのかって…そうね。
君が話したいなら、私は全霊をもって、夜が更け月が笑うまで、星が眠る東雲(しののめ)を迎えるまで、いくらでも聞くわ。
けどね…話すことさえ辛いことだってあるでしょう。
話すためには、組み立てなきゃならない。
それは思い出すってことでしょう。
どんな事であれ、そんな君になってしまった一因を、また追体験させる事を、私からはしたくないわ。
お腹が減って死にそうな人に、パンのおいしさをいくら言って説いても自己満足。
お腹を満たすのは、ひときれのパンだけでしょ。
そう、あなたに必要なのは、何事もない癒しなのよ。
だから、今はただ私に集中して欲しい。
ほら、少しだけ目を閉じてみて。
こちこち、時計の秒針。
聞こえるかわからない、恥ずかしそうな小鳥の鳴き声。
風が木の葉を撫でる…そんなものたちよりも、今近くにあるのは、私の声。
ね、私の吐息まで聞こえた?
そう、じゃあ、今の君は私でいっぱいよね♪
ふふっ、ではでは、はじめるわ!
んしょっと…あ、これ?
これは、耳をきれいにするものよ。
注射の前にするでしょ、あれと同じだと思ってくれて構わないわ。
パフにとって…っと、じゃあちょっとひやっと、すぅ~っとするけど、我慢よ。
目は開けててもいいし、つむっていてもいいわ。
もちろん、じっと私を見ててくれたって構わない。
ただ、私がここにいることだけは感じてて。
じゃあ、こっちからね…
ん
ふぅ
んんっ
耳のでこぼこに沿って丁寧に…
ん、んしょ
ん、ふぅ…
はい、じゃあもう片方。
んんっ
ふぅ
んしょっと
ここはしっかり拭いて、と…
んんっ
ふぅ
んしょっと…さて綺麗になった。
じゃあ一緒にリンパマッサージもするわ。
両手で両側いっぺんにするから、ちょっと覆い被さるみたいになるけど、我慢して。
って、鼻をくんくんさせて…呼吸はゆっくりしててよね。
ん
ふぅふ
んしょ
ここに、老廃物がたまると、よくないの。
こうして、流れにそって…指をはわせて…
んっ
ふぅ
んしょ
んっ
んんっ
うん、いいみたいね。
あまりやると揉み返しで痛くなるからね。
これでおしまいよ。
じゃあ次に行くわよ♪