オープニング
ねえ。
ねーえ。
起きてるんでしょ?
ふふっ。
ほら、身体がビクッてなったよ?
いきなりわたしの声がしてビックリしたんでしょ。
真っ暗だし手足も動かないし、
自分はどうなっちゃったのかって、
怖い思いをさせちゃったかなぁ?
だとしたら、ごめんなさい。
でもね、キミを怖がらせようとか意地悪しようとか、
そういうわけじゃないんだよ?
ただキミとふたりっきりになりたくて、
そのためだけにしたことなの。
だってほら、キミってすっごく恥ずかしがり屋さんだから。
わたしだって同じだけど、
そんなわたしが頑張って声をかけたり誘ったりしても
曖昧な返事ばっかりするキミのほうが、
わたしよりもずっとずっと恥ずかしがり屋さんだよね。
でも、知ってるんだぁ。
キミが、わたしに対してだけそうなんだってこと。
ほかの女の子たちには気軽に接してるのに、
わたしの前でだけは素っ気なくなったり、
目が合っても思わず逸らしたりしちゃうってこと。
だけどいいの。
だって、キミがそんなふうになっちゃうのって……
(恥ずかしそうに)そういうこと……だからなんでしょ?
(3秒空白)
……もうっ、ここまでわたしにバレてるのに、
それでもまだはっきり言ってくれないの?
だったら……わたしが言っちゃうよ?
キミがわたしにだけ冷たいワケ。
いいの?
【病】……ふーん、そうなんだ。
【病】バレバレなんだから言ってくれたっていいのに。
あっ、それとももしかして、
キミって自分からそういうことは言わない主義なの?
黙ってついてこいとか、そういう感じの、
なんていうのかな、昔の日本男児みたいな、
男としてのポリシー? とかがあったりするのかな?
そうだよね、うん。
【病】じゃなかったら、わたしがここまで言ってるのに
【病】黙ってるなんてこと、しないもんね。
へー、そっかぁ、そうなんだぁ。
ふふっ、またキミの新しい一面、知っちゃったなぁ。
このこと知ってるのって、きっとわたしだけだよね?
そういうことならはっきり言ってくれなくてもいっか♪
わたししか見られない特別なキミってことだもんね。
でもでも、そんなキミならなおさら、
やっぱりこうやってわたしのほうから積極的に
つかまえて、閉じ込めなきゃいけないよね。
くすくすっ……
キミのポリシー知る前からこんなふうに
わたしが行動起こせたのって、
キミとわたしの心がつながってたって証拠だよね?
何も言わなくても通じ合えちゃうなんて、
運命を約束された恋人同士じゃなきゃできないことだと思わない?
わたしたち、だからずっと一緒にいるべきだと思わない?
そうだよね?
ね?
ここで、ふたりきりで、死ぬまで一緒に過ごそうね?
【病】……どうしたの?
【病】嫌、なの?
【病】そんなことない……よね?
あっ、いきなりすぎてびっくりさせちゃったのかな。
そうだよね、うん。
わたし、ついつい焦っちゃって、
ちょっとだけ強引だったかもしれないね。
だってキミ、変な女たちにしょっちゅう色目使われて、
いっつも大変そうだったから、
早く助けてあげなくちゃって思って。
そのためには一刻も早く、
キミとわたしのふたりっきりにならなくちゃって、
それでキミを薬で眠らせて、縛って……
あ、でも安心してね?
足はヒモで縛っちゃってるけど、
手のほうはシュシュでまとめてあるだけだから。
だから簡単にはずれるけど、
【病】……はずしちゃダメだよ?
【病】わたしがいいって言うまでは、絶対に。
そのシュシュ、わたしのいちばんのお気に入りなの。
だからね、キミにずっとつけててもらいたいなって思って。
わたしと結ばれてるっていう証(あかし)として。
もし黙って取ったりしたら……
【病】それはわたしとのつながりを捨てるっていうことだからね?
【病】そのときはもう、一生離れずに済むように、
【病】わたしも別の方法を考えなくちゃいけなくなっちゃう。
【病】でもそれは、できればしたくないことなの。
【病】だってそれをしちゃうと、この世ではもうキミと……
(だんだん小さくなって聞き取りにくくなる)
とにかく、そのシュシュはいいって言うまではずしちゃダメってこと。
わかってくれた?
わかってくれたよね?
【病】ね?