トラック1 診療開始
(扉越し)(くぐもった声で)
……では、次の患者さん、どうぞ。
(入室)
【接近・正面】
(優しげに)どうも。私は泌尿器科医の神楽坂結。今日は一体どうされましたか?
特別診療を受けに?……確かにここには、普通の泌尿器科の診療とは異なる、ある特別な……男性器に関する診療コースがあります。
本当にそちらをお受けになるのですか?……そうですか。わかりました。では……。
(ここからS風)
では、キミはどこを診察してもらいたいのかな?
さっさと答えろ。私は多忙なんだ、貴重な時間がもったいない。
……何? 雰囲気が変わった?
本来はこちらが素の性格だ。特別診療を受けたいという者には、遠慮はしないようにしているのでね。
それで? キミはどこが悪いのかな? 頭以外の部位なら診察してやろう。
……ふむ、なるほど。最近、男性器の機能が低下している気がする、と。
どういう症状が出ている?……行為の最中に、突然男性器が萎えることがある、と。勃起不全か。中年の男性によくある症状だが、キミのような年齢では珍しいな。
頻度はどの程度?……時々? たまに、思ったように男性器が反応してくれないことがある、か。ふむ……。
なるほど、確かにそれは深刻だな。若い男性にとっての性機能は、アイデンティティと直結している部分がある。
ED……勃起不全になると、同時に鬱の症状を訴えるものもいるぐらいだ。
そうでなくとも、性機能は人体において最重要とも言える部分だ。放っておけば、日々の生活だけでなく、将来の人生にも大きな影響を与えるだろう。
生殖活動が出来なければ、人は子孫を残せなくなる。そうすれば、自然と人類は滅びてしまう。……ふふ、少々大げさだがね。
さて、それでは診察を始めよう。本当に性機能が低下しているか、確かめさせてもらう。覚悟は、できているな? ふふふ……。