オープニング~こういうところは初めてですか?
/SE:森の中の音
/以下、立ち位置:1 正面で普通に会話
【楸】
「あれ? あれれ? あはっ、珍しい気配がすると思えば……お兄さん、こんな山の深いところまでどうかしたんですか? お散歩?」
【楸】
「この辺は危険な動物が出るから、あんまり近寄らない方がいいですよ? ほら、凶暴な猿とか、血気盛んな狼とかに襲われたくないですよね?」
【楸】
「ここに来るまでに看板が立ってませんでした。猛獣出没により、立ち入り厳禁って。ふふ、それを無視してここに来るなんて、お兄さん結構度胸あるんですねー」
【楸】
「大人でも1人で立ち入ってくることは滅多にないのに。あるとしたら……山菜の季節に来るくらいですかね。それも最低でも2人以上。勿論腰には武器をぶら下げて」
【楸】
「ってことで、戻ってくれると嬉しいなー。こうして顔を合わせちゃった手前、万が一お兄さんが襲われたりでもしたら、私も胸が痛くなっちゃうんですよ」
【楸】
「……というかお兄さん、もしかして都会の人ですか? この辺じゃ見かけない顔だし、山に入るにしては、服装もかなり軽めだし」
【楸】
「あ……ってことは、もしかしてアレですか? 都会の暮らしに疲れて、人里離れた場所で森林浴、的なノリで来たんですか?」
【楸】
「あ、ふふ、図星って顔してる。そっかそっかー、それでかー。道理でここの森のルールとか知らないんだ」
【楸】
「森林浴は結構だけど、この辺はやめといた方がいいですよ? さっきも言ったように、とーっても危険な場所なので」
【楸】
「猛獣は出るし、道も迷いやすいし。それに電波はからっきし。時間もそろそろ夕方ですし? 悪いことは言わないから、戻った方がいいですよ」
【楸】
「来た道をまっすぐ戻れば、夜には街の方に……わ、わわ、そんな泣きそうな顔しないでください。私だって悪いと思ってるんですよ?」
【楸】
「危険なのは本当だし、その格好からすると、野宿ってわけでもないんですよね? だったら戻るなら今しかないし……」
【楸】
「わ、だからそんな顔しないでってば、もう。困ったなぁ……。この辺に山小屋なんてないし……集落から人を呼ぶのも面倒だし……」
【楸】
「ん~~~……分かりました。お兄さんが言うこと聞かないっていうなら、こちらも実力行使に出るしかありません。つまり……私の家に案内します!」
【楸】
「ふふっ、森から帰らないって言うなら、もうこうするしかありませんよね? だってお兄さんにとって一番安全な方法がこれなんですから」
【楸】
「……あは、そんな驚かないでくださいよ。別に取って食べたりはしませんって。勿論、後日常識外れの宿代を請求したりもしません」
【楸】
「これは純粋に私の善意ですよ。……まぁ、打算的な考えがないこともないんですけどね。その……色んな教育を手伝って貰おう的なこととか……」
/「ってことで」から、立ち位置:3 右側で会話
【楸】
「あはは、なんでもありません。これは追々話します。……ってことで、1名様ご案内しまーす。ふふ、ちょっと歩くので、私についてきてください」
【楸】
「そんなに遠くは無いんですけど、山道だから一度見失うと面倒なんです。……あれ、なんですかその顔? 腑に落ちないって感じですけど……」
【楸】
「あ……やっぱり怪しんでますか? 初対面なのに優しすぎるって。ふふっ、理由はさっき話した通りなんですけど……」
【楸】
「お兄さんが帰りたがらない、もう少しこの先に行きたいっていうのは、それだけこの山に魅力があるからってことですよね?」
【楸】
「そう思って貰えるっていうのは……私、嬉しいんです。だから……お兄さんには少しでも喜んでから帰って貰いたいなーって、えへへへっ」
/SE:山小屋の玄関を開ける音
【楸】
「ただいまー。一葉戻ってるー? 飛び込みのお客さんを連れてきたから、お茶の用意してくれないー?」
/立ち位置:1 正面で普通に会話
【一葉】
「もー、お姉ちゃん、連れてくるなら前もって一言お願いって言ってるでしょー。こっちも色んな準備があるんだから」
【一葉】
「それで、お客さんって誰? 麓の天狗さん? それとも洞窟の……え? え? あの……そ、その人って……」
【楸】
「ふふっ、今日のお客さんは、天狗のおじいさんでも、ヒグマのにいちゃんでもなくて……普通の人のお兄さんだよー。ふふ、驚いたー?」
【一葉】
「お、驚いたって……そんな話じゃないよ。だって……初めて見たんだもん。しかも……わぁ、男の人……本物だぁ、ふわぁ……」
【楸】
「ふふふっ、予想通りの反応ありがと。今日はこの人をうちに泊めるから、お風呂とお布団の用意、よろしくお願いね?」
【一葉】
「え、ええっ!? と、泊めちゃって……い、家に? 今日? いきなり? そ、そんなの……えぇぇぇぇ~~~……」
【楸】
「しょうがないでしょー、お兄さんってば強情で、追い返せなかったんだから。っていうか、本人の前でそんなに嫌がらないの、失礼でしょー?」
【一葉】
「い、嫌がってるわけじゃないよ……。ただ……お姉ちゃんがいきなり連れてきたから、なんて言えばいいのか分からなくて……」
【楸】
「それはごめんねー。ただ……無理に追い返すことが出来なかったのも事実かなー。お兄さんってば、心にちょーっと危ないもの持ってるみたいだし」
【楸】
「どうせなら、うちの温泉で癒されてった方が、今後の為になるかと思ってね。今日のお湯はどんな感じ?」
【一葉】
「今日の? うーん……普通、かな。特に変わったところはないから、普通に入れると思うけど……あ、で、でもお兄さんにはちょっと……」
【楸】
「平気平気、昔迷った人がそのまま入ったけど、ちょっと活力が出ちゃったくらいで、特に危ないことは起こらなかったって聞いてるし」
【一葉】
「そ、その話本当なの? どうなっても私知らないからね……? 今までだって人が入ったことないのに……」
/「ってことで、」から離れていく
【楸】
「責任は私が持つから大丈夫。ってことで、お風呂の用意してくるから、ちょっとお兄さんの相手して待っててねー?」
【一葉】
「えっ、ちょ、ちょっとお姉ちゃん! あっ……もう、相変わらず勝手なんだから、はぁ……。……あ、え、えっと……」
/立ち位置:1 正面に近づいて会話
;織女一葉=しょくじょひとは
【一葉】
「あの、その……こんにちは。私は……お姉ちゃんの妹で、しゅ、織女一葉っていいます……」
【一葉】
「……今日はどうぞゆっくり休んでってくださいね。……あ、ご、ご飯とかはちゃんとあるんで安心してください」
【一葉】
「ご馳走……とまではいきませんけど、ちゃんとおかずもありますので……。それで……うぅ、えーっと……んっと……」
【一葉】
「……ご、ごめんなさい。私、こうやって人と話すの初めてなんです……。だからどんなこと話せばいいのか分からなくて……」
【一葉】
「えっと……お姉ちゃんから聞いてると思いますけど、私も一応、この山の神様的な立場なんです。……って言っても、全然見習いなんですけど」
【一葉】
「……え? あの……もしかして、聞いてないんですか? あ、嘘、じゃあ……ああもう、お姉ちゃんってば……! いっつもいい加減なんだからぁ……」
【一葉】
「う……そ、そういう目はやめてください、冗談を言ってるわけではないんです……。それに、神様といっても、特別な力とか使えるわけじゃなくて……」
【一葉】
「なんと言いますか……人の世界と、森の世界……その境界を守っている、中立の立場って言った方がいいんでしょうか……」
【一葉】
「森っていうのはとても危なくて……人の常識じゃ計れないことがたくさんあるんです。お兄さんの世界でいうところの、都市伝説……とでも言うんでしょうか……」
【一葉】
「そういう世界に、人が立ち入らないようにするために。そして森の生き物が、むやみに人の世界へ侵入したりしないようにするために……」
【一葉】
「私とお姉ちゃんの仕事は、そんな感じなんです。だから……神様といっても、あまり難しいことはしていません」
;半人半狼=はんじんはんろう
【一葉】
「……あ、ちなみに、こんな見た目ではあるんですけど……一応、狼なんです、私。半人半狼とでも言いますか……」
【一葉】
「ほら、これ見てください。この耳。……あ、牙とか爪は、普段は隠しています。物とか傷つけちゃうといけないので」
【一葉】
「なので、姿は人で、中身は狼、仕事は神様って感じです。……と言っても、信じてくれませんよね? こういうの、人間の世界ではありえませんし……」
【一葉】
「……え? う、うそ、信じてくれるんですか? 私……結構突拍子もないこと言ってると思うんですけど……」
【一葉】
「え、えっと……あ、ありがとうございます……? まさかすんなり信じてくれるとは思いませんでした……」
【一葉】
「……お兄さん、結構いい人なんですね。私、人間ってもう少し疑り深い人ばかりだと思ってました」
【一葉】
「山の常識なんかこれっぽっちも通用しなくて……断りもなく森に侵入して、勝手に自然を破壊していって……」
【一葉】
「……あ、いえ、別にこれはお兄さんのことを言ってるわけじゃないんです。ただ……そういう人が多いっていうのを、色んな方から聞いていたので……」
【一葉】
「……でも、お兄さんはそういう人間とは違うみたいですね。ふふ、ふふふっ、ちょっと安心しました」
【一葉】
「分かりました、最初はどう接すればいいのか……すごーく悩みましたけど……私なりに、お兄さんのことをもてなします」
【一葉】
「温泉くらいしかない宿ですけど、どうかゆっくりしてってください。……お兄さん、色々と疲れているみたいですし、少しは助けられるんじゃないかと思います」
【一葉】
「私、そういうの分かるんです。人の気持ちというか……隠している本音みたいなものが。ふふっ、普段はあまり役には立たない力なんですけど……」
【一葉】
「今日くらいは、もしかしたらお兄さんの為になるかと思います。……あ、ちなみにこれ、お姉ちゃんも使えるんです」
【一葉】
「私よりずーっと協力です。手に取るように分かるっていうのは、まさしくあのことを言うんだと思います。なので……隠し事は無駄ですよ? ふふっ」
/立ち位置:1 正面で少し離れて会話
【楸】
「……あれ? ふふっ、もしかしてもう打ち解けちゃった? 案外やりますね、お兄さん。人嫌いの一葉をあっという間に仲良くなれるなんて」
【一葉】
「お、お姉ちゃん……別に私は人嫌いってわけじゃ……っていうか、私たちが神様だってこと、お兄さんに話してなかったの?」
【楸】
「え? だって話さなくても問題ないかなって。そもそもお兄さん、私のこと全然怪しいと思ってなかったんだもん」
【一葉】
「もう……そういうところだけいい加減なんだから。最初から説明するの大変だったんだよ?」
【楸】
「ふふ、いいじゃないそれくらい。会話のいいきっかけになったみたいだし。……それよりも、一葉? 温泉のお湯、全然溜まってなかったんだけど」
【一葉】
「あ、ごめんなさい……さっきお湯を抜いて掃除したところだったから……。さっき伝えるの忘れてた……」
【楸】
「知ってる知ってる。お兄さんのことで緊張してたみたいだもんね。……ま、もう少し時間経てば大丈夫でしょ」
【楸】
「ってことでお兄さん、自慢の温泉はもう少しだけ我慢しててください。ふふっ、その代わり、別のおもてなしをしてあげますので」
【一葉】
「べ、別のって……あ、もしかしてご飯? まだ準備すらしてないんだけど……先にお酒とおつまみ持ってきた方がいい?」
【楸】
「あぁ、平気平気。ご飯はまだ大丈夫、お兄さんもそんなにお腹減ってないみたいだし」
【一葉】
「え、じゃあおもてなしって……何をするの? 温泉以外に出来ることなんて、全然ないのに……」
【楸】
「温泉以外何も無いけど、温泉以外にお兄さんにしてあげられることはたくさんあるの。ってことで一葉、耳かきってどこにあったっけ?」
【一葉】
「え、耳かき? 耳かきなら引き出しの中だけど……お姉ちゃん、何をするつもりなの?」
;和耳荘=なごみみそう
【楸】
「ふふっ、耳かきの使い方なんて、1つしかないでしょ? ってことでお兄さん? 私たちの温泉宿、和耳荘へようこそいらっしゃいました」
【楸】
「温泉の準備が整うまで、もう少々お待ちください。それまでに……私と一葉が、精いっぱいお兄さんに尽くします」
【楸】
「ふふっ……ではまずは、私の膝の上に頭を乗せてください。……手始めに、お兄さんのお耳から、癒してあげますね?」