Track5 ねんねしながらおままごと
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;Track5 ねんねしながらおままごと
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;SE 水道の水
;SE 蛇口閉じる
;SE 手ふく
;9 マイクに背中
「ふー、おしまい。
洗い物のお水も、もうしゃっこくて、しんどいなぁ」
;1
「せやさけ、な? あいやん、
おふとんで手ぇ、ぎゅーってしてな?
しゃっこくなった ひよのおててを、ぬくめてな?」
「……(呼吸音)――えへへっ、ありがと。
ほんなら、おふとん、もぐろなぁ」
;SE 布団にもぐりこむ
;3
「うううっ――お布団もしゃっこいなぁ。
あいやんに先にはいって、ぬくもっといてもろたら良かったなぁ」
「けぇど――えへへ~っ」
:3 (口寄せ囁き)
「こーしてぎゅーっとくっついとったら、
すぐにおふとんもぬくまるなぁ」
「(呼吸音)――(呼吸音)――な? あいやん」
「さっきの話の続きやけどな?
あんな? ひよな? あいやんと家族になれたら――
(呼吸音)――やっぱな? 赤ちゃんもほしいの――ひゃっ?」
;3
「ど、どげしたの? あいやん。
急にビクって、お湯かけられたエビみたいになって――え?」
「『それがどうしてかがわからないうちは、赤ちゃんは授かれない』――のし?
むぅ~そげなもんなん?」
「……(呼吸音)――うん――(呼吸音)――うん。
……んー……と、ちとかいまってな?」
「……(呼吸音)――(呼吸音)――
あいやんと一緒ねとったら――(呼吸音)――
ん。ドキドキは――ひよ、しとるのし。
なんでやろか? いつもよりもちとかいよーけにドキドキしてて――(呼吸音)――
で……(呼吸音)」
「……(呼吸音)――ん~~――
むずむず? いうんんは、よーわからんのし――(呼吸音)――
な? あいやん。 むずむずいうんは、細こーいうたら、どげな感じよし?」
「ん……(呼吸音)――うん……(呼吸音)――
『体全部がそわそわして』――うん」
「……(呼吸音)――
『切なくなって、さみしくなって、
相手にぎゅーっと抱きつかないと、たまらなくなる』……
(呼吸音)――それが、“むずむず”」
「ん~……(呼吸音)――ん~~(呼吸音)――
やっぱひよ、そんなら、“むすむず”はよーわかってないみたいやなぁ」
「あいやんのことぎゅーってするのは、大好きやけど、ここちええけど――(呼吸音)――
ぎゅーってせんでも、切ないやらたまらんやらは……(呼吸音)――よーせーへんみたいやのし」
「あ……<頭ぽんぽん>――(呼吸音)――
えへへ、どげしたの? あいやん。
ひよのおつむを、やさしうぽんぽんしてくれて」
「ん? ……(呼吸音)――うん――(呼吸音)――うん。
そーなん? そんなら、ひよ、いまのままでええんやなぁ。
『いつか自然とわかるようになる』――
そんときを、あせらんで待っとったらええよしなー」
「けどなぁ。ん……(呼吸音)――
ただ待ってるのも、つまらんなぁ――」
「あ、ほんならな、あいやん?
練習しいひん? 練習」
「おうたもな? 練習したら、はよおぼえるし、うまぁなるやろ?
せやさけ、赤ちゃんのおかはんになるのも、練習したら、きっとやりかたはよぉに覚えて、うまくなれるって思うさけ」
「え? 『練習の仕方』――それはな? んふふっ。
おちびはんたち見て、ひよ、覚えとるんよ。
『おままごと』いうてな?
おとはんおやらおかはんやらになったふりして、
赤ちゃんがおる練習、するんよ」
「? どげしたの、あいやん?
ほっとしたみたいな、残念そうなみたいな――
びみょーなお顔してはるよ?」
「『そんなことない?』
――んふふっ。そげなん?
あいやんも練習に乗り気なん、ひよ、うれしいのし」
「そしたらな? ひよがおかはんで、あいやんがおとはん。
で、んと――<枕を頭の下からぬいて、だっこ>――
この枕が、ひよとあいやんの赤ちゃんな?」
「ええと……あいやん?
赤ちゃん寝かしつけるときには、
ひよとあいやん、なにしたげればええのし?」
「あ――うん。わかった。
赤ちゃんのこと落とさんよーに、
そっと、そーっと、大事にしてな?」
「あ……(呼吸音)――んふふっ――
ええなぁ『たかいたかーい』って」
「まくらの赤ちゃん、はしゃいどったなぁ。
キャッキャキャッキャで笑とる声が、
ひよのおみみには聞こえてきたのし」
「ほんなら次は、なにすればええのし?
……(呼吸音)――うん……(呼吸音)――うん。
むかしばなし? って、どげなもんのし」
「んふふっ、おしえてもらえるならうれしいのし。
ほんならひよな? あいやんのまねっこ、そのままするのし」
「……(呼吸音)――
『むかしむかしあるところに、正直者のおじいさんとおばあさんとがおりました』」
「……(呼吸音)――
『ある朝、おじいさんはやまにしばかりに。おばあさんは川に洗濯にいきました』」
「……(呼吸音)――
『おばあさんが川で洗濯していると、びっくりするほど大きな桃が、どんぶらこ、どんぶらこと流れてきました』」
「わ――あいやん、ちとかいまってな?
『むかしばなし』やらいうの、たくさんあって、むつかしいなぁ」」
「え? ……(呼吸音)――あー――(呼吸音)――
毎日毎日、おんなじお話きかせてもろーて……
せやなぁ。そんならきっと、
ひよでもいつかは、自然、自然と覚えるなぁ」
「えへへ――なら、あせらんでもかまわんなぁ。
ちょ、これから毎晩毎晩、昔話を、あいやんに聞かせてもろーて」
「えへへっ、そんでな? そしたらいつかな?
ひよがおぼえた昔話。
ひよとあいやんの赤ちゃんに、上手にきかせてあげるのし」
「んふふ~、楽しみが増えたのし。
で、な? あいやん。
昔話をきかせたら――
そしたらこんどは赤ちゃんに、
あいやんとひよ、なにしてあげたらええのし?」
「うん……(呼吸音)――うん――(呼吸音)――
あ、それなら――えへへっ。
ひよのお得意、大得意やのし」
「あんな? ひよな?
お歌も一生懸命いに、たくさん練習してるさけ――
子守唄の新しいのな? こないだ、またひとつおぼえたのし」
「まだな、おちびはんたちにも聞かせたことが無い歌やけど――
えへへ、あいやんにだけ、特別にうとーて聞かせたげるな?」
「……すごくきれいな歌やさけ――
いつか、あいやんと一緒にな?
あいやんとひよの赤ちゃんに、一緒にうとーてあげたいさけ……」
「昔話のおかえしにな?
ひよが毎晩、毎晩毎晩、あいやんにうとーてあげるさけ。
きっと、あいやんも覚えてな?」
「ほんなら、うたうな?
とってもしずかな歌やさけ――
おめめつむって。ゆったり、ゆったり、聞いてやってな?」
「(すうっ)」
;https://www.youtube.com/watch?v=m-7fUQDeIYs
「♪ 揺籃(ゆりがご)のうたを カナリヤが歌うよ
ねんねこ ねんねこ ねんねこよ
揺籃のうえに 枇杷(びわ)の実が揺れるよ
ねんねこ ねんねこ ねんねこよ
揺籃のつなを 木ねずみが揺するよ
ねんねこ ねんねこ ねんねこよ
揺籃のゆめに 黄色い月がかかるよ
ねんねこ ねんねこ ねんねこよ」
「ん……(呼吸音)……」
「……な? きっとな。
いつかきっと。
あいやんとひよと、いっしょにな?
赤ちゃんに、うとーてあげよーな? ふぁっ」
「ん……(呼吸音)――
おなかいっぱいで、ぬくくって――
あいやんがとなりにおって――あいやんの匂いがして――」
「ひよ、安心で嬉しぅて――
えへへっ――もうすっかりな? おねむたさんや」
「うん。そぉしよな。ねむろーなぁ。
夢の中でも、ひよ、あいやんにあいたいなぁ」
「せやさけ、な? <布団の中で手、動く>――
えへへっ、こうして、おてて。
ふうわりつないで、ねむろーなー」
「おやすみ、あいやん。
明日もいっしょに、ひよといっしょに、すごそーなー」
「……(呼吸音)――
(ちゅっ)――
えへへっ――おやすみ」
「(寝息)」
「(寝息)」
「(寝息)」
「(寝息)」
;環境音F.O →無音
;おしまい