おやすみなさい、おともだち
;環境音 冷蔵庫モーター+ファン
;7
「えへへへっ。ストーブけしてもぬくまるねぇ。
ふたりでおふとん、あったかいねぇ」
「んー……(呼吸音)――えへへへへ。
ひとりじゃないって、いいことだねぇ」
「オッカイはどう? ぬくい? ぬくまる?
しばれるようなら、パロポロのこと、
ぎゅーってだっこしてもいいよ?」
;7 顔寄せ
「……別にしばれなくても――(呼吸音)――
ぎゅーってしても、いいよ?――ひゃっ」
「~~~~っ」
「むぎゅう――ぎゅーってしすぎだっよぉ。
したっけ――えへへ――あったかいねぇ、うれしいねぇ」
;7 通常
「ふぁ――ん……むにゃ――
あったかくって、しあわせで、
パロポロ、ねむくなってきちゃった――」
「え? あ、うん。だねぇ。
このままのんびり、おはなししようねぇ。
おはなししてて、ねむくなったら、ねちゃおうねぇ」
「ん――(あくび)――って、いっても――
なにを話せばいいのかなぁ――
ね? オッカイは、なにかききたいことあるかなぁ」
「うん……うん……このお店のこと?
いいよ? はなして、おしえてあげる」
「このお店はね、パロポロが茂伸にきて……
一緒にすなまきだぬきは、たぬきの仲間たちとくらすようになっちゃって――パロポロ、ひとりぼっちになって――(呼吸音)――」
「それでさみしくなってさぁ……
蕗(ふき)の葉の下で……(呼吸音)――
なまらあっつくって、ねぐるしかったけど――
ひとりで、ねむって……(呼吸音)――」
「そしたらね? この土地の……茂伸のピリカカムイ――
良いカミ様が――夢に出来てくれたの」
「『ここに向かえば、冷蔵倉庫っていうものがある』って。
『その傍らに小さな家をたてておくから、うまくつかって癒やしどころをやればいい』って」
「姿はまぶしてみえなくて――小さな女の子みたいな声で――それでね、そのとき、まぶしくって見えなくっても、わかったの」
「茂伸のピリカカムイね? わらったの。
にこって笑って、こういったの。
『大丈夫。すぐに全部がよくなるッスよ』って」
「それで、夢でみたここに来て。
そうしたら、ゆきさんがいてさ。
『ゴカイソサマのいってたこね?』って、
パロポロのことむかえてくれて」
;↓以降、だんだん眠さが強まっていく
「……うん――ふぁっ――ん……うん?
あ……うん。パロポロもそれっきりあってないから、
わからないけど……(呼吸音)――」
「それが……ゴカイソっていうのが……ふぁっ――
茂伸のカムイ――ピリカカムイの、きっと、お名前なんだべさ」
「え? あ……ん――(小あくび)――うん。
『どうしてお店をくれたのか』……は……ん~――(呼吸音)――
パロポロも、なんどもなんども考えたけど――
うあっぱり、よくはわからないさ」
「したっけ、ね? ゴカイソカムイ――
あやかしたちに、とってもやさしいんだと……
パロポロね? そういうふうに、思うんだ」
「だって、お店、やらせてくれたら――ん……
ふぁ――あ――お店で、人間と、ふれあった、なら――」
「オッカイとパロポロみたいに……ん――
なかよしに、なったら――パロポロのこと――
覚えてて、くれるように、なったら――」
「あ……」
;7 密着
「へへっ――えへへ――うれしいなぁ。
だよね。覚えててもらえたら――
ずっと、消えないでいられるから――」
「ゴカイソカムイ……消えちゃうあやかしがもうこれ以上ふえないように――人間に、かたりついでもらえるように――(あくび)――ん……茂伸を、こういう、土地にして――」
「それで……それで――あやかしに、お店、を――ふぁ――(大あくび)」
「……うん。おきてたいけど――おはなし、ずっと、したいけど――(あくび)――パロポロ、もう、ねないとダメみたい――ふぁ」
「……そうだね。もう、寝る。
お口もおめめもとじて、寝る。
あ、だけどね? オッカイ――パロポロの、はじめての人間のおともだち――」
「あのね? 明日の朝がきて、術をほどいて――
オッカイがまた旅にでて――(呼吸音)――」
「それでもいつか、またいつか……(呼吸音)――
パロポロのところに、きて――くれる?」
「今日はね? ひんやりぽかぽかのおもてなしだけだったけど、他のおもてなしもあるの。
したっけ――あ――」
「うん……うん。
えへへ――ありがと――うれしいなぁ……(呼吸音)――
パロポロ、ぽかぽか、ぬくまるなぁ」
「ふぁ――あ――(大あくび)――安心したら、
もうだめ、ねむい――まぶたもおくちも――ふぁ――
あけて……られない――んっ――」
「いっしょにねようねい、おともだち。
ピリカ・オッカイ――ぱろぽろの、はじめての――
ふぁ……んっ――」
「……おやすみなさぁい――ふぁ……ん――(寝息)」
「(寝息)」
「(寝息)」
「(寝息)」
「(寝息)」
;環境音F.O →無音に
;おしまい