Track 5

左耳を綿棒でお掃除

;7 「え? 『逆に』って―― お客さん、もう逆になってるべさ」 ;7(顔寄せささやき) 「んふふっ――(ふーーーーっ)―― ほぉら、ね?」 ;7 「ん? 『じゃなくて』? あー。あーあー! なるほどねー。そういう、逆に、かぁ」 「いいよ。したっけ今度はパロポロがお話ししてあげる。 パロポロが、この茂伸にきた理由―― もちろん、へへっ――(指でマイクをかるぅくつっつく)」 「お耳掃除をしながらだけど――それでいい? へへっ――そっか。まら、また始めるべさ。 まずは、クリームぬりから、ね?」 「ん……<クリーム指ですくう>―― 最初は耳の外側と――<塗り伸>―― それから、耳たぶ――<塗り伸>」 「で……耳の内側の浅いとこ――(呼吸音)…… んっ――<塗り伸>――っと。 したっけ、へへへっ、綿棒ちゃんの出番だね~」 「ん……<耳かき音>――あ、こっちでもおんなじだねぇ。 ちゃあんととれる」 「(ふーーーーっ)――ん――<耳かき音>―― で、ええと――<耳かき音>―― パロポロはね? お友達にさそわれて――ん ……<耳かき音>――茂伸に、こしてきたの」 「……(呼吸音)――津軽……青森の津軽のね?―― たぬき――<耳かき音>――すなまきだぬきっていうこに、さそわれて――<耳かき音>」 「んと、ね――(呼吸音)――あやかしってさ――<耳かき音>―― あやかし同士で、しりあっててもダメなのよ―― ん……<耳かき音>――人間、がね? ――(呼吸音)」 「人間が、ん……<耳かき音>――あやかしのこと、忘れちゃったら――あやかし、ぽこん、って消えちゃうの。 そしたらもうね――(呼吸音)――どうしたって、もとに戻せなくなっちゃうの」 「すなまきだぬき、ね?……<耳かき音>――津軽で、ほとんど、そういうあやかし――(呼吸音)…… 忘れ去られかけたあやかしに――<耳かき音>―― あ、ちょべっとまって――これ、なまらおっきいの」 「ん……(呼吸音)――ふっ――ん――<耳かき音>―― んんっ――<耳かき音>――あ、うん。くっついた―― (呼吸音)――そうっと、そうっと――あ」 「んん~……おちついて、もっかいやるべさ――(呼吸音)――あせらず、いそがず、おちついて~――<耳かき音>――よ――<耳かき音>――ん――<耳かき音>――あと、すこ……しっ――<耳かき音>―― うん! えへへ~、とーれた、っと」 「あ、それでね? <耳かき音>――すなまきだぬき―― 忘れされてたら消えちゃうから……<耳かき音> もんじゃぶね? っていうお船……(呼吸音)――」 「船の、あやかしに、乗せてもらってさ――<耳かき音>―― どんぶらこって――<耳かき音>――わたってきたの。 北海道に――<耳かき音>」 「したっけ、ねぇ……(呼吸音)――コロポックルのことだって、昔ほどには北海道でも、人間が語らなくなってきてるもの――<耳かき音>――ん……」 「ぽっとわたってきたすなまきだぬきが――<耳かき音> どれだけ砂を撒いたたって、話題にもしてもらえないべさ――<耳かき音>―― けど、それでもさ――<耳かき音>―― あやかしの間でだったら、ちょべっと話題になったから――(呼吸音)」 「パロポロ、さみしかったから――<耳かき音>―― すなまきだぬきも、きっとさみしがってるべさって思って――(呼吸音)―― それで、会いに行って、ともだちになったの――<耳かき音>」 「ん……そしたら、ね? ――<耳かき音>―― 茂伸のこと、すまきだぬきが教えてくれたのさ――<耳かき音>」 「遠く四国に、人とあやかしがともにくらせる土地がある、って――<耳かき音>―― そこでなら、人があやかしを知って、覚えてくれるから――(呼吸音)―― きっとこの先も――<耳かき音>――ずっと、消えないでいられる、って」 「それで、パロポロ。船ののってどこかにいった、ミチとハポ――<耳かき音>――お父さんとおかあさんも…… (呼吸音)――もしかして、ものべのにいるのかもって、思ったのさ――<耳かき音>」 「すなまきだぬきも、いっぴきじゃ四国までとてもたどりつけないけど――ん……<耳かき音>―― 一緒だったら――きっといけるって――(呼吸音)―― さそって、くれて」 「そうして、パロポロは茂伸にきたの――(呼吸音)―― したっけ――来てみたら、さ――<耳かき音>―― ミチとハポは、みつからないし……(呼吸音)―― すなまきだぬきはすぐに狸の仲間みつけて――<耳かき音>――そっちの群れにいっちゃったから――」 「だから、パロポロ、来る前より――<耳かき音>―― ちょべっとだけ、ね? ちょべっとの間だけ、なまら寂しくなっちゃったのさ――<耳かき音>――。 したっけ、ね?――<耳かき音>」 「そのあとすぐに、パロポロ――<耳かき音>―― ん……この、お店、つくってもらえて―― すなまきだぬきもなんだかんだで――<耳かき音>――けっこー遊びにきてくれるし……(呼吸音)――」 「おとなりにも、さ――<耳かき音>―― ゆきさん、いるべさ?――<耳かき音>。 したっけパロポロ、すぐにちょべっともさみしくなくなって――ひゃっ!?」 ;1 密着 「ど、どうしたべさ、お客さん。 急に――(呼吸音)――急に、おきあがって、 ぎゅーってしたり、して」 「え? いや――じゃ、ない……べさ。 いやじゃない、けど……あったかいけど……(呼吸音)――」 「だけど……ちょっべっと……(呼吸音)―― ちょべっと、びっくりして――ドキドキ、して――て――(呼吸音)」 「あ……(呼吸音)――『さみしかったら、甘えていい』……って―― したっけ、お客さんは、お客さん、だし……(呼吸音)――」 「パロポロ、は……いやしどころの、あるじ、だし――(呼吸音)――え?」 「あ……うん。――うん。 うん。あるじとお客さんであるよりまえに―― うん――(呼吸音)――」 「うん――。だねぇ。 パロポロ、まだまだちびっこいもんね。 甘やかしてくれる人がいたら―― えへへ……甘えちゃったって……(呼吸音)――悪く、ない――よね?」 ;ピリカ・オッカイ=「良い若者」 「えへっ――えへへへっ―― ありがと、おきゃくさ――ううんっ、ピリカ・オッカイ」 「え? 意味? 意味はね、えへへ―― ナイショだよ~――へへっ」 「ね? オッカイ。したっけ、ね? パロポロ、もーちょっと甘えてもいーい? 耳かきのほかにね? ずっとずうっと、 してみたかったこと、ひとつあるの」 「いーい? わぁい! そしたら、ちょべっとだけまっててね!」 ;SE 石油ストーブ消す(バチョンっ)