右耳を綿棒でお掃除
;3
「ん……(呼吸音)」
;環境音 ストーブ F.I
「まずは、クリームぬるね? <指ですくう>――
ん……耳の外側から……<塗伸>――耳たぶ――<塗伸>……耳の内側の、まわりのところ……(呼吸音)」
「えへへっ、これ? 緊張するね?
はじめてだから綿棒使うし、いたくしないよう気をつけるけど――
もし、痛かったら、すぐいってね?」
「したっけ、はじめるよ~……ん……<耳かき音>――
最初は、浅いとこ……<耳かき音>――ん……
(呼吸音)」
「あ、これ、結構くっついてとれるねぇ。
えへへ、うれし――
ん……<耳かき音>――ふ、ぁ……<耳かき音>」
「も少し、奥に――<耳かき音>――
そうっと――そおっと――<耳かき音>――」
「え? 『上手』?
えへへ、うれしいなぁ、ありがとねぇ」
「パロポロ――<耳かき音>――
耳かきってしてみたかったけど――<耳かき音>――
ん……(呼吸音)――
したことなくて――はじめて――<耳かき音>――だから」
「あ――うん。いるよ?
ミチもハポ――両親、お父さんもおかあさんも――
<耳かき音>……いる、けど――(呼吸音)
コロポックルだから、長くは一緒にくらしてないの」
「パロポロが……六十歳になって――<耳かき音>、
一人でだいたい、なんでもできるようになったら……
<耳かき音>――ん――(呼吸音)」
「コロポックルだから、さぁ――<耳かき音>
ふたりとも、船に乗って、海の向こうに――
<耳かき音>、旅立ってっいっちゃったべさ」
「『どこに』って……ん……(呼吸音)――
それは、パロポロも知らないの――<耳かき音>――
パロポロが大人のコロポックルになって……(呼吸音)
お婿さん、もらったら、わかるようになるって――
聞いてる――けど――<耳かき音>」
「したっけ、そんなのきっとずうっと先のことだし――
<耳かき音>――
パロポロ、いまよりもっとちっちゃなころは……(呼吸音)……
耳かきなんて、知らなかったから……<耳かき音>」
「だからパロポロ、これが――へへっ――<耳かき音>
はじめての耳かきなんだよー……<耳かき音>。
どう、かな? 上手に、いたくなくできてる――かなぁ――(呼吸音)――」
「そっか、ならよかったべさ。
えへへへへ、ありがとお」
「え? あ、うん。そう……<耳かき音>
コロポックルに、みみかきって習慣、ないんだー。
だから、パロポロ、しらなくて――<耳かき音>」
「けど、茂伸にきてから……ん――<耳かき音>――
お隣で、テレビ? っていうの、見せてもらって――
(呼吸音)――
それで、耳かきって、知って――<耳かき音>――
――楽しそうだな、してみたいなぁって……<耳かき音>」
「え? 『じっさいやってみて』?。
うん……にへへっ――
たのしい、かな? ――<耳かき音>――こういうの」
「したっけ、ね? なんでかな。
ちょっとだけ、なんか――(呼吸音)――
くすぐったいみたいなきもち、する――<耳かき音>
おかしいよね、みみかきしてるの――パロポロなのに」
「ん……<耳かき音>……ふ……(呼吸音)――
ね? お客さんは、どう?
パロポロの耳かき――<耳かき音>――
耳だけじゃなく――こころも――(呼吸音)……
くすぐったいかんじ、する?」
「……あ……えへへっ――ならよかったぁ。
おんなじだねぇ。
そっか、パロポロの耳かきもおはなしも、
お客さんのお耳に、あずましいんだねぇ」
「あーよかったー……((呼吸音)――
なんでかな。パロポロ、とってもうれしいよぉ」
「あ、したっけ。したっけ、ね?」
;3 顔寄せ囁き
「よかったら、お客さんのお話も、きかせてくれる?
どんな旅をして、ここにきたのかのお話を――」
;3
「えへへっ、ありがと。
で? ――<耳かき音>――
うん……うん――<耳かき音>――
へぇ――そうなんだぁ――<耳かき音>」
「それでそれで? ……うん――(呼吸音)――
わ……そんなの――そんなのって――え?」
「あ――そうなんだ――<耳かき音>――
それでそれで? へぇ――わぁっ――
あ、ならよかったねぇ――<耳かき音>――
パロポロも、うふふっ――(呼吸音)――
あのね? すっごくほっとした」
「あ。ちょうどいいかな? ちょっとまってね?」
;3 顔寄せ
「(ふーーーーっっ)」
;3
「ん……うん。えへへ、上出来。
とっても綺麗になったべさ。
したっけ、次は反対側だね? ごろーんてして??」