石狩鍋ほふほふ
;SE 冷蔵庫のドア閉まる バタン
;環境音 冷蔵庫内。モーター音+ファン音
;参考 https://www.youtube.com/watch?v=KMfhd8ENtME
;SE 雪を踏み分ける足音
;13
「んっ――ぷあっ――振り返らなくて、大丈夫。
そのまま――まっすぐ――まっすぐいって――(呼吸音)」
:SE 雪足音
「(呼吸音)――あ! 見えてきた――
あれさぁ。あのおうち――あそこにつけば――
ぷあっ――ぬくく、なる、から――(呼吸音)」
;SE 雪足音
「くあっ――ついたー! あ、ちょべっと待って」
;SE 鍵をかちゃかちゃ
:1 マイクと逆向き
「いま、戸――開けるから……ん――<SE 鍵なり>
――ああもう、ぼっこてぶくろだと、やりづらくって――
あ! <SE 鍵開き>」
えへへ~、開いたっ! <SE 戸開け>」
;1 通常
「したっけ入って、すぐに入って、お客さんっ!」
;SE 戸閉め
「ふわー、しばれたねー。
今日はずいぶんと温度が低くて、パロポロでもしんどかったさぁ」
「お客さんは、慣れてない分、なおさらこたえたべさ――
って、わ!?」
「わー! お客さん、ほっぺ真っ赤だぁ!!
あ!? っていうか! クリーム、
顔に塗るの忘れてたねー」
「ごめんごめん――ええと、まずは、ストーブ!
ストーブたくから、あたって、あたって」
;SE ストーブの点火装置(カチカチカチカチ)
;SE 着火 (ぼっ!)
;環境音 モーターvol↓
;環境音 石油ストーブ
「はーーーーーっ」
「んふー、一気にぬくまるでしょお。
ごめんねぇ、しばれさせちゃって」
「あ! ――お顔、クリーム塗り忘れてたっけね。
赤くなっちゃってる――ええと、ちょっとまって」
:1 顔寄せ
「(はーーーーっ)(はーーーーーっ)(はーーーっ)―
(ほーーーーーーーーっっ)――ん……」
「<SE 手でほっぺたをこする音>……ん――
<頬こする>――ん……」
「まだ冷えてるね。(はーーーっ)(はーーーーっ)
(ほーーーーーーーっ)(はーーーーーっ)」
「<SE 頬こする> あ――ぬくまってきた?
ん――<SE ほほこする>――
しあげに――(はーーーーーーーーっ)」
「んふふ! よかったぁ、ほっぺもぽーって、ぬくまったねぇ」
:1 通常
「もっとお部屋があったかくなって、湯気がたったら、
クリームぬってあげるから、もうちょべっとだけ、がまんしてね」
「そうした方が、お肌にいいから――
したっけ、今は、ね? 先に、おなかの中あっためよ?
さ、さ。座って座って」
;SE 毛皮の敷物の上に座る
;1 同じ高さ→高いところから(立ち上がる動作)
「したっけ――よいしょっ! と」
;16
「だいどこ仕事、パロポロこうみえて上手なのさぁ。
すぐに下ごしらえしちゃうから」
;SE まな板+包丁
:16(マイク逆向き)
「♪(鼻歌)~
いま、石狩鍋つくるからねー。
ちょべっとだけ待っとってねー」
「ん? ここ? ここは。おうち。
パロポロのおうちだよ?」
;SE まな板+包丁
「うん。そう。
さっき、お客さんが入ってきたとこは、『お店』。
だって、入り口が人間のサイズに出来てたでしょお」
;SE 切った具材を鍋にうつす
「パロポロには大きすぎるもん。
したっけ、お店の中に、もういっこ、
パロポロにぴったりのサイズのおうちがあるのさー」
;SE まな板+包丁
「へへへっ、そうだねー。
もっとちゃあんといったら、お店の中の、冷蔵庫の中のおうち」
「冷蔵庫、おっきくてびっくりしたでしょー。
ちゃんとした言い方だと……なんだっけ? ええと――
あ、それそれ! 冷蔵倉庫」
;SE まな板+包丁
「パロポロのお店のおとなり、アイスクリームパーラーしながら、ゆずシャーベットの……」
「えと、たくさんつくって、他のお店に――
あ、それ! 製造卸っていうのしてるのさ」
;SE 切った具材鍋うつし
「んで、それにつかってる冷蔵倉庫に、
パロポロのお店くっつけてつくってもらったの。
パロポロのお店から倉庫に入れる、パロポロ用のちっちゃな扉、あれ、特別あつらえしてもらったんだよー」
「それで、冷蔵倉庫のすみっこに、特別に、このお家を建てさせてもらったんだー。
だから、へっへー。
茂伸にいながら、北海道の冬をいつでも楽しめるんだよ――っと!」
;16
「はぁい、おまたせ。石狩鍋。
っていっても、まだつくりかけだからー」
「ね? お客さん、つかってごめんねー。
テーブルの上、そこのコンロおいて、火、つけて?」
;SE 卓上コンロに火をつける
;環境音 ストーブ vol ↓
「えへへっ、ありがと。
したっけ――よい、しょっ!」
;SE 鍋運ぶ
「んっ!」
;SE 鍋をコンロにおく
;環境音 鍋グツグツF.I,
;15
「へへへっ、したっけ、お隣、すわるね?」
「……ストーブの火と、コンロの火って、また違うよねー。
……(呼吸音)……
コンロの火、へへっ、
パロポロとお客さんだけの火って感じ、するべさ」
「ん――煮えてきた煮えてきた。
したっけ、食卓の上で、コンロの火で。
しあげしながら、ふたりで一緒に食べようねぇ。ふふっ」
「あ、お客さんはは石狩鍋、味噌入れる方?
いまはこれ、お出汁と塩と酒粕だけなんだけど……」
「え? 『パロポロの好みで』? へへへっ、
パロポロ、どっちも好きだけど――
そうだね、それなら今日は、お味噌、溶き入れよう?」
「あんね。お隣のアイスクリームパーラーね
<お鍋の具材を箸で寄せる>――ん……
熊本出身のあやかしがやってるのさー」
「でね――この味噌――クマ味噌っていうんだって、
あまぁい味噌。これをね? パロポロの北海道味噌とばくってくれるの」
「え? あ――そっか、ばくるって北海道弁か。
ええとね――交換、取りかえっこのこと」
「ばくったら、あわせ味噌つくれるでしょお?
これがね、甘くて濃くて――へへへっ、おいしいんだぁ」
「いまね? 溶き入れるから。
口に運ぶまえに、匂いからさ、
たっぷりじっくり、味わってねぇ」
「ん――<お味噌を鍋に溶き入れる>――ふふっ――
(大きく匂いを嗅ぐ)――ん~っ、いいにおい」
「お味噌、においだけであったまるねぇ――それに――」
;SE お鍋ぐつぐつ
「ふふふっ、お鍋さんもぐつぐついってきたねぇ。
したっけ、食べよ? お客さん、鍋奉行する?
それとも、パロポロがとりわけよっか?」
「……ん。わかったー。
じゃ、パロポロがとったげるね。
へへっ、お客さん、あまえっこだぁ」
「ん、と――鮭でしょ、お豆腐でしょお、白菜に、おねぎに、にんじん、しいたけ! ――あ、ちっこい鮭もはっけーん、これも――<SE ぼちゃ>――ありゃ、お箸から逃げ出しちゃった」
「したっけ、逃さないよ~――
えへへっ、はい、つかまえた~。
へへ、このおちびさんも、お客さんにあげるねぇ」
「そしたら、おつゆを――
<SE 木の椀に鍋のつゆをすくってそそぐ>
――ありゃ、ちょっとたっぷりいれすぎた?」
「したっけ、食べて。
あったかいうち、さめないうちに――って、あー」
「お客さん、甘えっ子だもんねぇ。
もしかして、パロポロがあーんってしてあげたほうが、
いいぃ?」
「うんうん、そなんだー。
いいよ、そしたら、あーんしてあげるさぁ」
「まず何いく? 白菜? ふふ、味しみてるといいねぇ。
<箸で取る>」
;8 顔寄せ
「はぁい、『あーーーん』――わっ!?」
;7
「ごめんごめん、あっちかった!?
お水、これ、はい――どうぞ!」
「ん……(呼吸音)――どう?
お口、やけどしなかった?」
「見せて見せて? あーんってして、ベロだして?
はい、あーーーん……あー、あかくなってる……
けど、ただれてとかは、いないみたい……よかったぁ」
「痛くない? あ……『大丈夫』。そ?
ならよかったけど――
ごめんねぇ。次からは、ふーふーってもするね?」
「あー、安心したら、パロポロもおなかすいちゃった~
<箸>(ぱくっっ)――!!」
「あふっ! ほふっ! あひっ! あっひゅぅい!!」
;ほひふおみず
「ん~ん~ん~ ほひふ! ほひふ!!」
「(ごくっ! ごくっ! ごくっ! ごくっ!)
――ぷあああっ――あっちかったね~――
パロポロ、安心してうっかりして
ふーふー忘れてたべちっったよぉ」
「下ごしらえのとき、お客さんと話してたから……
おもったより時間たってて、火も味もしみてたんだねぇ」
「したっけ、今度はあっちすぎないようにしないとねぇ。
ええと――ちっちゃいしゃけ! <箸>
はい――(ふーっ、ふーっ、ふーっ)――」
;8 顔寄せ
「あーん」
;7
「――(呼吸音)――
えへへっ、今度はおいしそうな顔!
そしたら、パロポロもしゃけ! <箸>――
(ふーっ、ふーっ)――(ぱくっ)
――(もぐもぐ)――(ごくん)――ぷあー!
おいしい!!!」
「あ……あっちいの、しゃけ、
いまのどを落ちてるのがわかる~
……(呼吸音)――
んふー、これ、しあわせだねぇ」
「次はおとうふ食べようか。
食べる? えへへっ、
(ふーっ)(ふーっ)(ふーっ)
はぁい、さましたけど、まだあっつあつかも――」
;8 顔寄せ
「あーーーん――うんっ――(呼吸音)――どぉお?」
;7
「あ、おいしいならよかったぁ。
えへへっ、そしたらパロポロも――え?」
「わ! あーんしてくれるの? おかえし?
わぁい、お客さん、やっぱりいい人間だねー」
「え? 『断られるかとおもった』って、なして?
ふんふん……『なれなれしいかと思って』って――ふぅん?」
「うん……ふん……へぇえ、なるほどぉ。
人間って、ややこしいこと考えるんだねぇ。
男性と女性? って、めんどおくさいんだねぇ」
「したっけ、パロポロまだ100歳だもんさ。
人間でいったら、10歳とかそんなだもん。
男性も女性もないよー、ちびすけちびすけ」
「だからね? ――えへへっ。
やさしくしてもらえるのは、うれしいんだぁ。
したっけ、ね? はやくぅ。あーんして、あーん」
;8
「わぁい、えへへっ――あーーーーん――(はむっ)――
(はむっ――こくっ)――ん~~っ!」
;7
「ん……(呼吸音)」
「ふぁ……あっついの、おとうふ、
またのどを落ちてくのがわかった~
んふー、これ、しあわせだねぇ」
「したっけしたっけ――次はこれ!」
;8 顔寄せ
「はい、あ~~んっ!」
;環境音 鍋グツグツF.O.
;環境音 ストーブ Vol↑
;7
「ふぅう。おいしかったねー。
パロポロ、おなかぽんぽんさぁ」
「え? 『たくさんたべてた』って?
そりゃあそうさぁ。パロポロ、名前からして
『パロポロ』――『おっきなおくち』って意味だもん」
「え? 『どっちかっていうとちいさくてかわいい口?』――かなぁ?
えへへっ、ありがとお」
「けどね、ほんとのおくちのおっきさは関係ないべさ。
コロポックルはね、悪いあやかとかカムイとかに、
かわいいあかちゃんつれていかれないように、わざとかわいくないお名前つけるの」
「お客さんだったら……ん……(呼吸音)――
ポロフレシサム! ――『赤すぎるお顔』とか――
って、ああああ」
「ごめんねぇ。お顔のクリーム、まだぬってなかっったねぇ。
ね、こっち、こっちむいて? いますぐ塗るから」
;1 顔寄せ
「ん――<クリーム手に取る>――<塗り伸ばす>――
……右、ちょっと向いて?」
;2 顔寄せ
「(呼吸音)――ん……しょ……<塗り伸ばす>――
今度は逆側、左、ちょっとむいて?」
:8 顔寄せ
「<塗り伸ばす>――ん……と――(呼吸音)――。
よしよし、そしたら、まっすぐに向きなおって?」
;1
「えへへっ、これ。
リップクリームっていうんだよ。
さくらの匂いがするんだよ。
お隣の、アイスクリームパーラーの、ゆきねーさんにもらったの」
;1 顔寄せ
「唇、ぬってあげるねー……って、え?
ちょっと待つの? いいけど――なんで?」
;1 通常
「うん……うん――間接キッス?
あはは、そんなの気にしないよ~」
;1 顔寄せ
「はぁい? だから、ね?
いいこにしててねー。
ん……<リップ塗り>――(呼吸音)――
はぁい、ぬれたー」
;1 通常
「ほんのり桜のにおいするでしょー。
えへへっ、パロポロのお気にいりなの。宝物なの」
「だから、ね?」
;8 顔寄せ、囁き
「パロポロに特別やさしくしてくれた、
ふーふーしてあーんしてくれた、
お客さんにだけ、特別につかわせてあげたべさ」
「……したっけ、気にしないのさ。
間接キッス。平気なの」
;1 通常
「えへっ、えへへっ! 特別ってうれしいよねぇ。
あれ? お客さん、お耳までまっかだぁ」
「あ、そうだ! お耳。お耳にもクリーム塗らないと。
それと一緒に、お耳掃除もしてあげるねぇ」
「(膝叩く、ぽんぽん)――
はい。ここ。頭乗せて? ひざまくら。
えへへ~っ。
パロポロ、いっかい、耳掃除ってしてみたかったんだぁ」
;環境音 ストーブ F.O